オランダ人アーティストが東京の路上ギャラリー “Jinny Street Gallery”で写真展“Without Us”(人々の残像)を開催

2024.04.02 08:50
Jinny Street Gallery Project
2024年4月12日から5月12日まで、オランダ人写真家マーン・リンブルフによる展示を実施。日本各地の空き家や廃墟となった建造物を巡って撮影した作品を東京にて初の展示。
都市部に住む多くの人にとって、日本は高層ビルが立ち並び、忙しい生活が特徴で、郊外エリアにはあまり注目しない国だと思われがちです。しかし、オランダ人アーティスト、Maan Limburg(以下リンブルフ)の目には、郊外と田舎の美しい、のどかな景色や空き家は日本の特徴的な要素として映ったのです。 リンブルフは2018年から2019年に渡って、日本を旅行しているときに郊外を巡りながら撮影の旅をしていた折、置き去りにされた廃墟の工場、ホテルや旅館、レストランなどを数多く見つけ、その建物たちが昔の人々の思い出で満ち溢れているように感じました。帰国後「The Lost World(失われた世界)」と名付けた展示で、まずはオランダにて写真を展示しました。そして今回は「Without Us(人々の残像)」というタイトルで2024年4月12日から5月12日まで、東京のJinny Street Galleryにて開催されます。

国内・海外の若手アーティストの活動を支えることで知られているJinny Street Gallery は、東京で最もオープンなロケーションです。Jinny Street Galleryは、渋谷区神宮前二丁目商和会のまさにストリート、路上に位置するギャラリーで、訪れる人々は一日中アートに触れ合うことができるスペースになっています。このギャラリーは、2人のアーティストが、この地域に42個の置き去れた展示ケースがあることに気づき、空き箱のままにしておくのはもったいないと考えたことから設立されました。いわば廃墟のように置き去られていたケースの集合体だったJinny Street Galleryも今ではその存在を広く知られるようになっており、この成り立ちもリンブルフの心を惹きつけた要因のひとつで、「Without Us(人々の残像)」という展示にとって最適なロケーションであることを裏付けています。
■ “この建物は実際には誰の物でもない”
「ちょうど屋上にいたんです。そこには自転車があったし、ゴルフバッグも。そして、今私が座っているこの部屋はバーだったと思います。ベルベットの椅子もあって、飲み物のボトルまであります」。リンブルフはその時、東京都内のラグジュアリーエリアに現在でも聳え立つ10階建てのビルの中を探索していました。そのビルは、東京市の一番高級ブティックやヒップなカクテルバー、寿司バーである地域にあります。「建物の下層階には2つのバーだけがまだ営業していますが、他の階は何年も空き家です。都市伝説によると、所有者は借金を抱えたビジネスマンだったが逃げ出してしまったという噂もあります。だから、今ではこの建物は実際に誰のものでもないのでは?東京のような人気の都市でも、こうした建物の一部が長い間空き家として残ってしまうことがあるなんて信じられません」。

オランダでは30万戸もの住宅が不足しているため、東京の人気エリアでこんなにも多くの空きスペースが残っているという事実は、リンブルフにとって本当に驚くべきことでした。以降、彼女はこれら日本の廃墟の雰囲気に魅了され、空き家を見かけるたびに車を停めて写真を撮っています。リンブルフの情熱と旅から生まれた美しい写真集とその展示会には、空き家についての彼女の個人的な感情や好奇心がたくさん詰まっているのです。

日本での撮影によるこの企画「The Lost World」は、CNN Travelの記事に取り上げられ、ヨーロッパとアメリカで大きな称賛を受けました。撮影場所でもある日本におけるこのトピックへの関心を知りたいと思ったことが、今回「The Lost World」の続編を日本で初めて展示することになったきっかけです。作家は日本における空き家と郊外の過疎化の事情について4月12日にトーク(英語のみ)を予定しております。詳細は下記にてご確認ください。
■ “日本政府の調査によると、空き家は849万軒もある”
2018年に実施された日本政府の調査によると、高齢化、都市への移住、そして例えとして東日本大震災のような災害の影響もあり、空き家は849万軒もあり、さらに増加傾向にあります。東京でも、10 軒に1 軒が廃墟となっているという統計があり、野村総合研究所の調査によれば、2030 年までに3 軒に1 軒が空き家や廃墟になると予測されています。リンブルフの本「The Lost World」の論文では、日本研究者のジョセフィネ・スミットがこの空き家問題の背景にある理由の一つについて次のように述べています。「もちろん、すべてを都市化や人口の減少のせいにするわけにはいかない。日本の政策や法制度がこの空き家の現状を作り出してきたとも言えます」。
■ “土地の寂しさと人々の温かさとの大きなギャップに驚いた”
リンブルフは2018年に東京から北海道、そして2019年には広島へと旅をしていました。道中、様々な地を訪れ、さらに多くの空き家を見つけ、ますますその魅力にとりつかれていきました。リンブルフにとってはこれらの建物はある種のドリームワールドであり、彼女はその中で日中を過ごし、夜になると人々が住む現実の世界に戻ることもしばしばありました。荒廃の他に、彼女は地元の人々の親しみやすさにも気付きました。「どこへ行っても、人々は私たちが彼らの小さな集落にやって来るのを喜んで、最寄りの観光名所を案内しようとしてくれました。地元の銘菓や特産品などを分けてくれることもよくありました。例えば、車の中で猫と暮らす人から鮮やかで美味しそうなリンゴをいただいたり、私たちがシャワーを浴びたプール施設のオーナーからアイスクリームをもらったりしました。土地の寂しさと人々の温かさとの大きなギャップに驚かされました。」

今回の「Without Us(人々の残像)」の写真にはほとんど人が写っていません。しかし、かつてそこに住んでいた人々の思い出や記憶はまだそこに息づいていて、見る人の感情に訴える写真の展示や書籍となっています。日本の空き家そのものや普段は触れない現実に興味を持つ方に是非見ていただきたい貴重な展示です。
■写真展のオープニング・ナイトにご参加ください
4月12日、19:00からの「Without Us (人々の残像)」特別オープニング・ナイトにぜひご参加ください。一般公開に先駆けて「Without Us」の写真展をいち早く鑑賞し、作品の背景にあるストーリーを解説しながら、リンブルフの写真の美しさを間近で是非ご覧ください。あるいは、なぜ空き家がこれほど多いのか、田舎の再生の選択肢は何かについて、専門家のパネルディスカッションを聞きに来るのはいかがでしょうか。カフェ「二二二」での一夜限りのアート展、他のアーティストとの話、そしてちょい飲みを楽しめましょう。リンブルフが目指したのは、東京の人々に彼らのすぐ身近にある現実と状況について考えてもらい、話し合いのきっかけを提供することです。

■展示の詳細
タイトル:「Without Us(人々の残像)」by Maan Limburg
展示期間:4月12日~5月12日
展示場所:神宮前2丁目商和会に位置する路上ギャラリー”Jinny Street Gallery”(東京都渋谷区神宮前2-31-5)

オープニング・ナイト:
パネルディスカッション(英語)
4月12日、19時~20時、
カフェ「二二二」(東京都渋谷区神宮前2-3-23)にて開催

アーティスト・ウオーク(Maan Limburgと一緒に路上ギャラリーを歩き回る)
4月12日、20時~21時、
集合場所は20時にカフェ「二二二」(東京都渋谷区神宮前2-3-23)


Jinny Street Gallery の公式ウエブページ:
Jinny Street Gallery の公式SNS:
マーン・リンブルグの公式ウエブページ:
マーン・リンブルグの公式SNS:

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