【試乗】ハイブリッドなのにエンジンの主張がハンパない! 新型アコードってこんなに楽しいクルマだったの?

2024.03.27 07:00
この記事をまとめると
■レーシングドライバーの木下隆之さんがホンダ・アコードに試乗した
■アコードはe:HEVであるが積極的にエンジンを使用するセッティングがなされていた
■2040年までは精一杯、内燃機関を楽しもうじゃないかというホンダの意志を感じた
新型アコードはEV時代までの繋ぎなんかじゃない
  誤解を恐れずにいうなれば、新型アコードにはそれほどの期待を持てずにいた。
  理由はふたつある。2040年にハイブリッドからの決別を宣言したホンダが、EVではないアコードにリソースを注ぐとは思えなかったこと。SUVが国民の足になりつつる日本で、4ドアセダンの可能性が広がると思えないこと。
  実際に新型アコードの日本投入はe:HEVのみとなる。ささやかな意匠変更でお茶を濁すに違いないと、気乗りしないまま試乗会場に向かった。
  ただし、待ち受けていたアコードは、バイアスのかかった目を覚まさせるように、印象的な施策の数々で僕を刺激したのだ。
  搭載するパワーユニットは、直列4気筒2リッターと電気モーターを組み合わせている。e:HEVである。印象的なのは、ハイブリッドであるのにエンジン支配率を高めたことだ。
  クルージングからの加速では、迷うことなくエンジンが始動する。これまでのように電気モーターに頼りすぎない。加速遅れが少ない。
  高速巡航時にはエンジンと駆動輪を直結させるのがホンダe:HEVの武器のひとつだったが、その領域を格段に広げている。軽はずみにモータークルーズすることなく、安定してエンジンを始動させ続けている。
  アクセルペダルを強く踏み込むような加速では、多段化ミッションのように擬似的なステップを踏む。速度の上昇に比例して、階段を登るようにして回転計の針が跳ね上がる。そのシステムを伝えずに走らせれば、2ペダルMTと勘違いするかもしれない躍動感だ。
2040年まで内燃機関をしゃぶり尽くしたくなる
  しかも、ドライブモードを「スポーツ」にセットすれば、電子的サウンドが増幅される。4気筒のチープな感覚はなく、その音階が野山に響くかのようなスポーティ感覚が得られる。内燃機関であるかのような高揚感なのだ。
  これまで4段だった減速モードの擬似的変速も6段に増やされた。減速モードの左パドルを引けば、それこそ2ペダルMTに似た感覚で弾ける。
  いやはや、ことほどさように、これはもう内燃機関への回帰を狙っているとしか思えないセッティングである。とてもエンジンに引導を叩きつけたホンダのクルマとは思えない。いや、ハイブリッドさえも否定するかのように、改めて内燃機関の魅力を再確認し、いかにも内燃機関らしいフィーリングを盛り込んでいる。
  エンジンを捨てようとしているホンダ経営陣へのエンジン屋の謀反であるかのような完成度の高さなのだ。 そんな走りの爽快感を味わってから改めてデザインを観察すると、新型アコードがキラキラと輝いて見える。
  これまでのホンダが好んできたガンダム的なデザインは影を潜めている。前後に長いボディは伸びやかであり素直にスタイリッシュだ。曲げたり捻ったり尖ったり凹ませたりといった線と曲線の他用から決別している。過去のアコードを否定するかのようにスッキリとまとまっている。
  インテリアも同様で、直線基調の造形美が感じられる。ダッシュボードとコンソールボックスの位置関係は正しくT字型であり、ドアサイドのベルトラインと道幅のラインは一点のベクトルで結ばれている。
  試乗前にはアコードに対してかなり否定的だったものの、その走り味を楽しんでいるうちに考えが改められていった。ホンダは内燃機関の魅力に取り憑かれた開発陣が多く残っているに違いない。2040年までいまから16年もある。それまでは精一杯、内燃機関を楽しもうじゃないか。新型アコードがそう語っているような気がした。
  ちなみにアコードのグローバル販売の主戦場はアメリカであり、米国工場で生産される。中国仕様は中国製。この二カ国がメインであり、わずかな数字にとどまる日本市場向けはタイ製となっている。

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