2023年10月にスバル・ソルテラが改良された!
昨年10月末に改良されたスバルのEVであるソルテラ。今回の主な改良はEVの根幹といえる急速充電性能の向上に着手したというから興味深い。
エンジンルーム中央手前には、エアコンシステムと連携をする「水-水熱交換器」が追加されている。これにより電池の温度を以前よりも引き上げることが可能になり、外気温が10℃以下で90kWの急速充電を30分行った場合、最大で約16%も多く充電できるようになったという。
ならばその進化を試そうと、改良前と改良後のソルテラ2台を寒冷地に連れ出して徹底比較してみることに。目指すは雪深い志賀高原。そこならスバル自慢の四駆性能も体感できるに違いない。伴走車にガソリン車のアウトバックを従えることで、EVの雪道の走りはどんなものなのかも見てみたいところだ。
今回はこの3台の電費や燃費ができるだけ均一になるよう、休憩時にドライバーをシャッフル。運転の仕方でデータにバラツキが生じないように心がけた。エアコンの設定温度は全車25℃とし、シートヒーターやステアリングヒーターもあえてオンにしておいた。
ハッキリいえばイジワルテストである。EVはエアコンをできるだけ使わないようにシートヒーターやステアリングヒーターを充実させているというのにこの仕打ちなのだから。おかげで車内は常にポカポカだ。
そんな環境でまずはソルテラ改良前モデルを走らせてみると、SOC(バッテリー残量)のパーセンテージが表示されていないことに気づく。充電器側でそれをチェックすることができる場所ではそれを示しているが、そうでないところではわからない。示した表にも一部不明となっているところは悪しからず。
興味深かったのは、ドライバーをシャッフルしようが、いくら電費の良い走りを狙おうが、どうにも電費が伸びないことだった。
そもそもの話では、充電時の性能が向上しただけのようなアピールがスバルから行われていたのだが、走っているときでもバッテリーの効率が落ちていることは明らか。身近なところでは、携帯電話なんかでもある話で、寒いところに行くとバッテリーの持ちが悪くなる。その現象が起きていると思って間違いはないようだ。
改良モデルのソルテラに乗り換えると、先ほどのように走りに気を使わずして電費データがよくなるから気分的にラクだ。
エアコンをはじめ電気は使い放題だし、山へ向けて登り勾配が多く、さらにはスタッドレスタイヤを履いているのだから電費の数値は悪い。けれども、改良前モデルに比べたらかなりの余裕で、たとえばもうひとつ先の充電スポットに入ろうかと思っていたら、改良前モデルに乗るドライバーから「ここで充電させてください!」と泣きが入るほど。ロングドライブではこれが心の余裕に繋がり、休憩ポイントの幅ができるところが嬉しいように思えた。
また、充電すれば低温になろうともきっちりと入ってくれるイメージ。もちろん、温かい環境のようにはいかないのだろうが、実際に使って困るようなことがなくなったのは嬉しい。
こうした土台があった上でさらに改良を行ったところはさすが。ステアリングはオーバル形状になり、ようやくメーターまわりがきちんと見えるようになった。
このステアリングはどんな操作感なのかと身構えたが、慣れの問題で切り込むときに感じた違和感は次第になくなっていった。交差点ではやや持ち替えが必要だが、対してロングドライブではほぼ持ち帰ることなく、自然なハンドリングを産むギヤ比をキープしたところが好感触だ。SOC残量もきちんと表示されるようになり、状況が把握しやすくなったところは有難い。
ステアリング系でいえば、渋滞時にハンズオフが可能になったところもうれしい。この機能は、事実上の兄弟車であるトヨタbZ4Xにはない、ソルテラ改良モデルだけのもの。
今回は一部区間で渋滞に遭遇したのだが、時速40km以下なら両手放しで走行が可能になり、いやな渋滞が一気にリラックス空間に変化するのだから好感触。なんなら、しばらく渋滞していて欲しいくらいの感覚になるのだから面白い。
EVならではの緻密な4輪制御でお行儀のいいソルテラ
こうして一般的な使い方を行ったあとに、いよいよ雪道に足を踏み入れる。そこで感じることは、やはりスバルのクルマなのだなということだった。トヨタbZ4Xとは足まわりのセッティングを変更し、安定方向に振られたことで、とにかくリヤを破綻させない感覚で駆け抜けて行く。
走り出しからジワリジワリとトラクションを重ねて行くマナーのよさは、緻密な制御を行うEVらしさが光っている。瞬間的にスリップするような恐怖感はなく、ほぼスリップなしといった感覚。きっちりと調教し、リニアにトルクを生み出せている。そこにEVならではの低重心、そして前後重量配分のよさなどが相まって、まさに地を這うかの如く雪面を行くのだ。
下り坂に入ればパドルシフトによって回生力を選択できることも有難い。ブレーキペダルを踏めばあっという間にABSが作動するような状況でも、4輪に回生ブレーキがうまく働くことで、不安感なく坂道を下ることができた。
アウトバックを引き合いに出すのも気が引けるが、ガソリン車の場合はこうはいかない。トルクの盛り上がりにはどうしてもムラがあり、駆動の抜けやすさや制御の荒さが雪道では見えてくる。スリップしてスタビリティコントロールが働き、またスリップしてスタビリティコントロールが働く……。そんな繰り返しをしながら、極端にいえばギクシャクしながら走って行くのだ。
また、重心も高く切り返しなどではそれを利用して一気に向きを変えているようなところもある。振り子のように左右に積極的に荷重を移動させ、コーナーをクリアできる人なら面白いかもしれない。ただ、やはりそれではマニアックすぎるし、スムースにコーナーリングしていくのが理想だろう。もちろんそれらはEVと比べたらという話であり、ガソリン車でしかもシンメトリカルAWDが備わるのだからどちらかといえばスムース。
けれども、ソルテラ改良モデルと比べてしまうと、はやりギクシャク感は否めない。それだけソルテラ改良モデルのスムースさやマナーの良さが光っているのだろう。
こうしていま着実に進化を果たしたソルテラ改良モデルは、明らかに従来よりも普通に使えるようになったことは明らかだ。スバルの、それも四輪駆動ともなれば、寒冷地での性能がきっちり出ていなければと改良を行ったことは、いまきちんとした成果を見せてくれた。これならスキーだって積極的に行けるだろう。
もちろん、充電インフラなど課題はまだまだ山積しているが、まずは第一関門をクリアしたということは紛れもない事実のようだ。