世界へ羽ばたく若手オペラ歌手を育成する、サントリーホール オペラ・アカデミー。30周年を迎えても変わらない世界基準へのこだわりと、次の挑戦。

2024.03.18 14:14
東京都港区赤坂アークヒルズにある「サントリーホール」。世界一美しい響きをめざして設計されたこのコンサート専用ホールに「アカデミー」があることをご存じだろうか。オペラと室内楽の2つの「アカデミー」には音楽大学に在学・卒業したての20~30代の若き音楽家が所属している。「サントリーホール アカデミー」は、プロの音楽家として国内外で活躍できるよう第一線の音楽家から学ぶ場と、人前で演奏する場を無償で提供している。オペラ・アカデミーは、1993年の設立以来、30年にわたって声楽界の人材育成に尽力してきた。この3月21、22日に30周年を記念した公演を2夜にわたって開催する。
公演ニュースリリース
同アカデミーのスタッフを務める長谷川亜樹(サントリーホール企画制作部副部長)がアカデミーの理念や目指すことを語ってくれた。本ストーリーでは、その詳細をお伝えします。
世界で通用する音楽家の育成を目指して
長谷川は、「サントリーホール アカデミー」発足についてこのように振り返る。
「サントリーホール開館時、“よきホールは、そこに、よき音楽を育て、よき音楽家たちを育て、そして、そのまわりに、よき聴衆を育てる”という言葉を作曲家の芥川也寸志先生が残してくださいました。この言葉を胸に、サントリーホールは現在『
』という活動を展開しています。3つの柱のうち、1つは次世代の聴衆を育成する子ども向けの事業、2つ目がアカデミーを中心とした人材育成事業、3つ目がより社会に開かれたホールを目指す普及事業です。」


サントリーホール アカデミーは、世界で通用するプロフェッショナルを育成するという理念を、設立当初から大切にしてきた。サントリーホールから世界へと羽ばたいたアーティストが、大きく成長し、サントリーホールの主催公演に出演してほしいという願いが込められている。育成するだけにとどまらない、いわば循環型のプロジェクトとして長年取り組んできた。
互いが切磋琢磨するオペラ・アカデミーの想いと設立背景
サントリーホールはオペラ専用劇場ではなくコンサートホールだ。コンサートホールで聴くオペラを作ることを目指し1993年から『ホール・オペラ®』公演を開始した。その際、サントリーホール エグゼクティブ・プロデューサー眞鍋圭子の「世界から一流のプロフェッショナルが集結してオペラの舞台を一から作り上げる現場があるのだから、日本の若い歌手たちが一緒に勉強してもらえる機会を作ろう」という提案がきっかけとなり、サントリーホール オペラ・アカデミーが設立された。
サントリーホール35周年に上演したホール・オペラ®ヴェルディ:ラ・トラヴィアータ(椿姫)通常の舞台とは異なり、オーケストラ後方に設置されたエリアで歌う歌手たち。アカデミー修了生も出演した。


最初はホール・オペラ®公演のために来日した指揮者や歌手が、若いアーティストにレッスンをするという形ではじまり、その後、ホール・オペラ® が2010年で一旦休止したのを機に2011年にジュゼッペ・サッバティーニをエグゼクティブ・ファカルティに迎え、今のスタイルになった。
長谷川が現在までを振り返り、語ってくれた


「オペラ・アカデミーには、基礎的なテクニックの習得を目指す「プリマヴェーラ・コース」と、同コース修了生がさらに深い音楽表現を磨くための「アドバンスト・コース」の2コースがあります。若いうちからプロとして切磋琢磨することが求められますが、アカデミー生同士が「互いの耳」となり、歌を聴いて意見を述べることでお互いを高め合うことがこのアカデミーの特徴です」このように長谷川は語った。


当時、絶大な人気を誇るテノール歌手として初回のホール・オペラ®から出演を重ねたサッバティーニは、アカデミー設立にも関わった。現在も指揮者・指導者として活躍しているサッバティーニに認められるということは世界標準に達したということを示すといっても過言ではない。また、日本人のコーチ陣も海外経験が豊富な方ばかりということもあり、まさに国内に居ながらにして海外留学に匹敵する環境で学んでいると言えるのではないだろうか。
オペラ・アカデミーで指導するジュゼッペ・サッバティーニ
オペラの音楽を作り上げる壮絶な学びの過程。世界へ羽ばたくアカデミーで大切にしてきた教え。
発声の技術や外国語の習得、異文化や歴史の理解、オペラの学びはそれだけにとどまらない。オペラは、主に人間の様々な感情やドラマを音楽と言葉で表現していくもの。若い歌手たちはこれまでの人生経験と日々の学びの中で精一杯表現していくが、それでもまだ足りない。指導陣に指摘されたことをすぐに表現することができず葛藤し、涙を流すこともある。時間をかけて試行錯誤を繰り返し、徐々にオペラが自分のものとなっていく。その積み重ねがあってこそ、公演当日の成功、万雷の拍手につながる。修了生が口々にするのは「サントリーホール オペラ・アカデミーでの学びは世界で通用する」ということ。それほど、アカデミーでの基礎徹底、オペラとの向き合い方は、真摯なものであるという証である。オペラ・アカデミー在籍中に、何度も挫折しかけた修了生の中には、アカデミーでの学びを糧に、修了後に海外留学を経て更に磨かれ、本場欧州の音楽祭に出演するなどオペラ・デビューを果たす人、日本のオペラ団体に所属し、主役を歌う人も出始めた。海外で活躍する修了生は、日本滞在時にアカデミーに顔を出し、近況を報告したり、声を聞かせたりすることもある。
一流から学び、世界へ舞台を移した修了生が戻ってくる。3月21・21日に開催する30周年記念公演への挑戦。
そんな強固な絆で今も結ばれている修了生が出演する、サントリーホール オペラ・アカデミー30周年記念公演 オペラ・ガラ・コンサート。「30周年という節目なので、多くの修了生の歌声を届けたい」という思いから2夜連続公演の構成となった。
左から土屋優子、迫田美帆


3月21日の第1夜は、2024年に没後100年を迎えるイタリアのオペラ作曲家、プッチーニの作品を取り上げる。前半は『トゥーランドット』の名アリアを、後半は主要キャスト4役だけで送る『蝶々夫人』の語りつきハイライト(演奏会形式)で、アカデミーにゆかりの深い演出家・田口道子が構成し自ら語りを務める。
『トゥーランドット』を歌うのは、イタリアのプッチーニ音楽祭や東京二期会で同オペラの題名役を務めた土屋優子(2015年プリマヴェーラ・コース修了)。そして『蝶々夫人』を歌うのは、2019年に同オペラの題名役で藤原歌劇団にデビューし、昨夏には米国の音楽祭でも同役で絶賛された迫田美帆(2017年アドバンスト・コース修了)。東京二期会と藤原歌劇団、日本を代表するオペラ団体のプリマドンナとして海外に拠点を置く2人が、実はこのアカデミーでは同期として共に切磋琢磨していた。
『蝶々夫人』組は田口道子によるディクション稽古(役柄の理解を深めるための事前の本読み稽古)を重ねた。たとえ演技がなくても、演じる役柄の気持ちになったらどのように音楽的に語られるべきなのか、全員で徹底的に表現を深堀りしている。
オペラ・アカデミー修了コンサートよりアンコール風景


3月22日の第2夜は、海外でオペラ・デビューを果たした修了生歌手によるドニゼッティやヴェルディのアリア・ガラに加え、後半では、ヴェルディの最後のオペラ『ファルスタッフ』の終幕部となる第3幕第2場を演奏会形式でお届けする。『ファルスタッフ』はこのアカデミーの大事なレパートリーの一つとしてこれまでも何度か取り上げており、とりわけ最後のフーガは、サッバティーニ体制になってからのアカデミー修了コンサートでアンコールの定番となっていた。今回は、サッバティーニが5年ぶりに特別に題名役で歌唱を務め、国内外で活躍する歴代の修了生をキャストに、現役生も合唱で参加し、まさにアカデミーが誇るオールスターキャストで30周年記念公演のフィナーレを華やかにしめくくる。このアカデミーで学んだ人たちならではの粒立ちの良いイタリア語の言葉さばきや、同じメソッドに基づいた緻密なアンサンブルをお楽しみいただける。


両日とも、オペラに造詣深くアカデミー公演を長年支えてきたコンサート・ソムリエの朝岡聡が軽妙かつ的確にナビゲート。オペラ初心者の方も心配ご無用だ。サントリーホール ブルーローズ(小ホール)の親密な空間で、歌手との距離も近く、一般的なオペラ公演より安価にオペラの世界に触れられるのも魅力だ。


歌手の成長を追っていくのもオペラの楽しみのひとつ。これを機に、応援したくなる歌手を見つけてみては。

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