女性が輝く社会を目指したものづくり 骨盤臓器脱手術用メッシュ「ORIHIME」ブランド立ち上げストーリー

2024.03.08 10:00
株式会社河野製作所は1970年設立の医療機器メーカーです。針付き縫合糸をはじめとした手術関連製品の開発・製造を行い、「クラウンジュン」ブランドとして展開しています。河野製作所が追及しているのは「世界オンリーワン・ナンバーワン」の製品づくり。常に新しい技術を開発し、これまでにない価値を提供することで市場を創造しています。
河野製作所が展開している製品のひとつに、「ORIHIME(オリヒメ)」というメッシュ状の医療機器があります。ORIHIMEは「骨盤臓器脱」という女性泌尿器科の病気に対する治療に用いられ、その市場におけるシェアナンバーワンを獲得している、メッシュを用いる骨盤臓器脱治療を代表する製品です。
骨盤臓器脱は女性特有の病気です。命には関わらないものの、QOLを著しく低下させる場合もあり、辛い思いをしている女性も少なくありません。


今回は骨盤臓器脱という病気のこと、そしてなぜ河野製作所がORIHIMEブランド立ち上げに取り組んだのかをご紹介します。国際女性デーという今日の日に、今も人知れず悩んでいる女性の気づきのきっかけとなることを願っています。
骨盤臓器脱とは
骨盤臓器脱とは膣から膀胱や子宮、腸などの骨盤内の臓器が出てくる状態のことです。症状が進むと排尿・排便障害や歩行障害、臓器が下着に擦れることによる出血等が起こり、日常生活に著しく悪影響を及ぼします。


骨盤臓器脱は女性なら誰しもが罹りうる病気で、特に60代以上によく見られます。原因は出産、加齢、慢性的に腹圧をかける行為等、多くの女性に当てはまるものがあり、決して他人事ではありません。実際に症状の悩みを抱えている方は多いと言われていますが、恥ずかしさからなかなか周りに打ち明けられなかったり、社会活動を諦め寝たきりになってしまう方もいらっしゃいます。
女性が安心して輝ける社会を目指して
従来、骨盤臓器脱手術用のメッシュとして使われていたのは海外製のものでした。しかし、欧米において、メッシュを用いる骨盤臓器脱手術の1つであるTVM手術に対する規制の動きが年々活発化しており、メッシュ供給の不安定化が危惧されていました。そのため、安定供給が見込めてかつ安全な国産メッシュの必要性が高まっていたのです。日本国内においては問題無い手術とされているにもかかわらず、海外の製品に頼り切っているために今後TVM手術ができなくなる恐れがあった当時の状況に、私たちも危機感を覚えていました。そういった中で、以前より当社が得意としていたPTFE製品が解決策になるのでは、と考えたことがORIHIMEブランド立ち上げのきっかけとなりました。
ORIHIME製造責任者
開発ものづくり技術部 執行役員 岩立力


TVM手術を含む、メッシュを用いる骨盤臓器脱手術の実施件数は年間約7,000例(2021年時点)であり、市場としては決して大きなものではありませんでした。しかしながら、当社の理念は「医師や患者の皆さまのニーズに徹底的に寄り添うことで、今までになかった製品を開発し、市場を創造していくこと」です。人知れず困っている女性がいて、間違いなくニーズがある。その事実がある以上、チャレンジするのはとても自然なことでした。
患者様に寄り添った素材選び
ORIHIMEの特徴は素材とその加工方法です。従来、メッシュを用いる骨盤臓器脱手術ではPP(ポリプロピレン)が使用されていましたが、その特性上術後に痛みを感じる場合があり、患者様の生活の負担になってしまっていました。術後の生活まで考えた時に、柔らかく不活性のPTFE素材は患者様のQOL向上に貢献しうると考えました。


また、患者様の負担軽減のため、編み目と強度のバランスにもこだわっています。編み目が細かすぎると感染の原因になるため、ある程度の粗さを保ちつつ、しっかりとした強度を出さなければなりません。この部分をクリアできたのは、元々河野製作所が持っていたPTFE製品製造の技術があったからこそだと考えています。河野製作所の使命は「常に新しい技術を開発し、これまでにない価値を提供することで市場を創造していくこと」です。会社設立時から常に新技術開発に打ち込んできた当社だからこそ持っていた技術が、ORIHIMEという製品で形になったことはとても感慨深かったです。
ORIHIMEの拡大写真
医師とともに発展させていくORIHIME
元々ニーズの高い製品ではあったとはいえシェアナンバーワンを獲るに至ったのには、先生方が持っている危機感を見逃さずにキャッチし、その需要に応えるため取り組み続けた結果だと考えています。TVM手術を存続させるために立ち上げたORIHIMEブランドには、発売後全国からたくさんのお問合せが集まりました。しかしその状況に甘んじることなく、全てのお問合せに対して実際に病院まで足を運び、先生と直接お話することに徹しました。そうしたことで製品について詳しくお伝えできただけでなく、製品と私たち河野製作所という企業への信頼が構築でき、学会で発表いただける機会の創出に繋げることができました。


現在ではORIHIMEは全国の先生方にご使用いただいていております。さらに、TVM手術の権威である医療法人東和会 第一東和会病院 ウロギネコロジーセンター長 竹山政美先生を始めとする多くの先生方により、ORIHIMEのより良い使い方について研究が重ねられています。骨盤臓器脱手術を実施している多くの先生方の「TVM手術を守らねばならない」という動きにより、結果的にORIHIMEの存在が広まることに繋がっています。まさに、先生方と一丸となってORIHIMEを発展させていける状況を実現できているのです。
竹山先生(中央左)とORIHIMEブランド立ち上げメンバーにて


ORIHIMEは医師の皆様だけでなく、骨盤臓器脱患者の皆様からも評価を頂いております。これまで河野製作所の製品が担ってきた“術野でのサポート役”の枠を飛び越え、患者様の“人生のサポート役”を担う製品となったORIHIMEの誕生は、多くの女性にとっても、河野製作所にとっても、大きな躍進をもたらすものとなりました。

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