下着メーカー大手のワコールが仕掛けた国産スーパーカー計画! 多くの人が夢を見た「ジオット・キャスピタ」の残念すぎる結末

2024.03.09 17:30
この記事をまとめると
■日本発のスーパーカーとして計画されていた「ジオット・キャスピタ」
■1号車にはスバルとモトーリ・モデルニによる水平対向12気筒を、2号車にはジャッドのV10を搭載
■2号車の公開時にジオット・キャスピタが市販されないことも発表された
まだ誰もなし得てなかったカーボンモノコックフレームを採用
「F1 on the Road」あるいは「オンロード最速のスポーツカー」と、さまざまな耳に心地よいコンセプトを掲げ、この日本から一台のスーパーカーが誕生しようとしていた。1980年代から1990年代にかけて日本を中心に開発が進められたジオット・キャスピタがそれである。
  イタリアのルネサンス期に活躍した天才画家であり、また建築家でもあった、ジオット・ディ・ボンドーネからその社名をとったジオット社は、服飾メーカーのワコール社によって1988年に設立されたメーカーで、その新型車の開発と製造は、WASCAP(ワーコール・スポーツカー・プロジェクト)委員会の決定によるものとされた。主宰者はもちろんワコール社長の塚本能交氏、さらに童夢の林みのる氏やデザイナーの伊藤邦久氏、レーシングドライバーの松本恵二氏などが、このWASCAPには名を連ねていた。
  キャスピタは、当時のスーパーツとしては何もかもが斬新なメカニズムを採用したスーパースポーツだった。まず、その基本構造体たるカーボンモノコックシャシーの採用。あのフェラーリでさえ、1987年発表のF40には鉄管スペースフレームをカーボンパネル等々で補強したシャシーを与えていた時代、あのブガッティでさえEB110でカーボンモノコックを実現したのは1991年の話なのだ。
  このカーボンモノコックの開発とともに、シャシーやエンジンの仕様も次々に決定されていった。カーボンモノコックは正確には、アルミハニカムをサンドイッチした構造のカーボンコンポジットによるもので、単体重量はわずかに85kg。
  サスペンションは前後ともプッシュロッド式のダブルウイッシュボーンで、インボードコイルを持つ。ダンパーにはSHOWA製の減衰力可変式が用いられた。ブレーキはブレンボ製のツインディスクでローター径は332mm。これは当時のグループCカーと同様のスペックだ。
  ミッドに搭載されるエンジンはスバルと、イタリアのモトーリ・モデルニが1990年からF1のコローニに供給する予定だった、3497ccの水平対向12気筒DOHC5バルブ。
  最高出力はF1用では600馬力を発揮するとされていたが、キャスピタにはそのデチューン版の450馬力仕様が搭載される予定であることが、WASCAPの設立発表より、やや早い段階で決定していた。
日本の景気低迷で少量生産の高級スポーツカーは成り立たず
  ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインを卒業し、その後GMやオペルなどで数々の作品を残した伊藤邦久氏をチームリーダーとして進められたデザインは、まさにグループCマシンがそのままロード用に進化したかのような魅力を持つものだった。
  左右のドアはガルウイング式で、初の一般公開となった1989年の第28回東京モーターショーでは、新たな国産スーパーカーの誕生に、多くのゲストが大きな夢を抱いたはずである。
  しかし、1990年代に入ると、キャスピタのプロジェクトは暗礁に乗り上げてしまう。F1での失敗を理由に、モトーリ・モデルニとスバルの関係には終止符が打たれ、ジオットはキャスピタのために新たなエンジンを探す必要に迫られたのだ。
  搭載エンジンとそれに伴う設計変更には約1年半という時間が費やされ、キャスピタの2号車は1992年についに完成。注目のエンジンは1991年から、F1チームのスクーデリア・イタリアに供給されていた、ジャッド製の3497ccV型10気筒DOHC5バルブで、最高出力はロードモデル用とはいえ585馬力を発揮していた。
  ボディデザインを、オンロードでの扱いやすさを中心に一部見直したり、モノコック後端の形状やリヤサスペンションの取り付け位置を変更したりと、1号車からのリファインには1年以上の時間を必要としたが、1993年7月、再びそれが披露された舞台において、童夢からはこのキャスピタの市販は行われないことが表明された。
  それは高級スポーツカーの少量生産というビジネスモデルが、日本の景気低迷のなかでもはや成立しないことが理由だった。
  あるいはキャスピタの誕生は、少し時代の先を行き過ぎたといえたのかもしれない。たとえばヤマハのOX99-11などとともに、いまこの瞬間にその正常進化型を見ることができたらと思うのが正直な気持ちだ。

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