「排気音を変える」だけが目的じゃない! 最近のスポーツモデルがマフラー出口部に「蓋」を付けるワケ

2024.02.27 11:40
この記事をまとめると
■最近新車で販売されているスポーツモデルのマフラーにはバルブが備わっていることが多い
■モードを切り替えて開け閉めすることで排気音のボリュームを調整することができる
■パフォーマンスを追求する上では常に全開がいいと思われがちだが、必ずしもそうではない
スポーツカーの純正マフラーにつくバルブの役割
  世界の自動車は電動化に進んでいるといっても、「やっぱりエンジンが好き」という人は多い。その理由として、エンジンの鼓動を感じることも挙げられるが、やはりエンジンサウンドが魅力の中心。そして、その主役といえばエキゾーストノート(排気音)だろう。アバルトやBMWなどは、電気自動車にもかかわらず疑似エンジンサウンドをスピーカーから流していたりするほどだ。
  一方で、エンジン車については騒音規制が厳しくなるトレンドが続いていることから、いつでも存分にエキゾーストノートを楽しむわけにはいかない状況になっていたりもする。そこで、昨今のスポーツカーでは、「排気系に可変バルブを設ける」という対応策が取られていることが増えている。
  たとえば、2016年に発売開始となったホンダのスーパーカー「NSX」には、「アクティブ・エキゾーストバルブシステム」が採用されていた。その制御は以下のようなイメージだった。
●QUIETモード
 実質的なEV走行モード。アクティブ・エキゾーストバルブを閉じることで排気をサイレンサーに誘導、音量を抑えた排気音を実現
●SPORTモード
 アクティブ・エキゾーストバルブを閉じた状態で発進し加速に応じて開きます。サイレンサーを回避する排気流量を徐々に増やすことで、リニアな排気音を演出
●SPORT+/TRACKモード
 アクティブ・エキゾーストバルブを開き、計4本のエキゾーストパイプすべてを用いて最大流量を排気します。エンジン性能を引き出し、スポーティな走行にふさわしいサウンドを奏でる
  同様のシステムは、現行のホンダ・ラインアップにおけるスポーツフラッグシップ「シビックタイプR」にも採用されている。こちらは、排気をストレートに抜くメインパイプにバルブが設けられ、全閉・中間・全開と3ステップで切り替えることで、ジェントルな排気音と、サーキット走行などで求められる排気流量を両立するシステムとなっている。
  ホンダといえばバイクも製造しているメーカーだが、同等のシステムはスーパースポーツと呼ばれる高性能モーターサイクルにも採用される。
  バイクのスポーツフラッグシップである「CBR1000RR-R FIREBLADE」では、通常はバルブを全閉することで膨張式構造のサイレンサー側に排気を導きつつ、速度やエンジン回転などの条件を満たした際にバルブを開くことでストレート構造のサイレンサーをメインで使うようになる。
※右の太いパイプがパフォーマンスを出す側の排気系
  ご存じのようにストレート構造のほうが排気の流れがスムースで、なおかつパイプを太くして流量を稼いでいるので、エンジン性能を引き出すのに向いているというわけだ。
マフラーのバルブが担う仕事は音量調整だけじゃない
  マフラーに可変バルブを仕込み、排気の通り道を変えるということは、「メインで使うサイレンサーを変える」ことと「排気流量を変える(増やす)」というふたつの効果を狙うことができる。
  前者は排気音のコントロールに利用でき、後者はパフォーマンスの変化につながる。ここで注意してほしいのは、排気流量を上げるほうにバルブを切り替えると、全域でパフォーマンスアップするわけではない……ということだ。
  一般に、排気系を絞って流量を減らすと低回転域でのトルクが稼ぎやすくなる。具体的には、マニュアルトランスミッションの場合は発進時のクラッチ操作が容易になる。「排気バルブを全開状態で固定したほうが高性能になる」と思って、そうした加工をすると発進しづらくなったり、街乗りでギクシャクしたりすることもある。
  いずれにしても、現在の規制においてスーパースポーツと呼ばれるクルマが騒音とハイパフォーマンスを両立するには、排気バルブの切り替え機能は必須といえる。
  排気バルブを閉じるという制御は、騒音を低減するだけでなく、低速トルクを増す効果もある。エキゾーストノートを楽しみたいばかりに全開状態で固定したいオーナー心理もわかるが、全域で性能を楽しみたいのであれば、純正の制御を活かしておくのが賢明だ。

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