ソアラの消滅はフルモデルチェンジに失敗したから……は間違い!? 代を追うごとに人気を失った本当のモデルとは

2024.02.19 13:00
この記事をまとめると
■初代モデルと比較して人気がなくなり終売となった車種が存在する
■トヨタ・ソアラは3代目からコンセプトの変更で人気がなくなってしまった
■ソアラ以外にも日産マーチや三菱ミラージュなどもモデルチェンジで不人気となった
クルマのモデルチェンジは諸刃の剣
  俳優の伊藤かずえさんが1990年式の日産シーマにいまなお乗り続けていることからもわかるとおり、「ユーザーとしてクルマを走らせる」という部分だけでいうなら、フルモデルチェンジというのは必ずしも絶対に必要なイベントではない。3年前のクルマでも30年前のクルマでも、しかるべき整備さえ施せば、クルマというのはフツーに大過なく使えるものだからである。
  しかし、自動車ビジネスの観点から見るなら、一部の機能を大幅にアップデートさせたうえで装いも新たにすることで、人々に「……そろそろ新しいやつに買い替えなきゃヤバいかも!」という脅迫観念を抱かせるフルモデルチェンジは、非常に有効な手法である。
  そして、フルモデルチェンジというのは(主には)ユーザーにクルマを買い替えさせるための方策であるため、物事の道理としては「フルモデルチェンジを経るごとにクルマとしての魅力が増していく」という結果にならねばならない。そうでないと、人は新しいやつに買い替えてくれないからである。
  しかし、かつては大人気だったはずなのに、フルモデルチェンジを重ねることで逆に商品力を落としていき、結果として廃番になってしまったという悲しいモデルもある。
  代表的なところでは、たとえばトヨタ・ソアラだろうか。
  1981年に発売された初代ソアラは、ご承知のとおり「未体験ゾーン」「SUPER GRAN TURISMO」といった、当時としてはかなりグッとくるキャッチコピーを伴って登場した高級パーソナルクーペ。
  ソアラ用に新開発された2.8リッターDOHCの5M-GEUエンジンは、最高出力170馬力(JISグロス値)と、いまとなっては可愛らしい出力でしかなかったが、当時は──クルマ全体のデザインやコンセプトを含めて──確かに「未体験ゾーン!」としかいいようのない驚愕モノだったのだ。
  そんな初代ソアラは8万台ほどが売れ、続いて1986年におおむねキープコンセプトのフルモデルチェンジを受けて登場した2代目ソアラは、新開発された7M-GTEUエンジンが当時の国産車としては最高の230馬力をマークし、そして日本国全体がバブル景気の圧倒的な追い風を受けたということもあって、約30万台が売れる大ヒット作となった。
  と、ここまでは良かったのだが、1991年に発売された3代目は北米のレクサスブランド向けに開発されたため、どことなくアメリカ~ンなデザインテイストに変身。
  最高出力280馬力の1JZ-GTE直6DOHC2.5リッターエンジンなど、なかなかの各種機構を採用したにもかかわらず、販売はやや低迷。バブル崩壊の影響もあったはずだが、約5万台を販売するにとどまった。
  そのため、次の4代目ソアラはどのようなモノに変わって登場するかが注目されたが、2001年に発売された4代目は、やはり北米レクサスを本籍地とするゆえのアメリカ~ンなデザインテイストがより強調されたものだった(デザインそのものはフランスのスタジオで、ギリシャ人デザイナーによって行われたそうだが)。
  さらには、カリフォルニアの青い空がよく似合いそうな「電動格納式ハードトップを備えたクーペ」にも変身していた。
  結局、4代目ソアラはソアラとしての販売台数は1万台にも届かず、2005年に日本でもレクサス車の販売が始まったことで「レクサスSC」へと改名および転籍。そして、そのレクサスSCの販売も低空飛行が続き、ソアラ系の歴史は2010年末に幕を閉じることになった。
ソアラの系譜はすでに2代目で終わっていた!?
  ソアラのフルモデルチェンジが失敗に終わった理由は、表層的に見るのであれば「日本ではアメリカンテイストのクルマは一部の人にしかウケないのに、アメリカンテイストを採用したから」ということになるのだろう。
  ファッションの世界では「アメリカンカジュアル」は永遠の人気定番カテゴリーであり、飲食においても「アメリカンダイナーっぽい感じのお店」の人気は高い。しかし、なぜかは知らないが「アメリカンテイストなクルマ」だけは、1980年代以降の日本では一般ウケしにくいのだ。3代目以降のソアラしかり、日産レパードJフェリーしかりである。
  だが、これはあくまでも表層的な見方でしかない。より本質的には「ソアラの系譜は、じつは2代目ですでに終わっていた」と見るほうが正しいはずだ。
  つまり、トヨタ・ソアラというジャパニーズ・ハイエンドクーペの歴史は2代目でバシッと完結しており、3代目と4代目のソアラは世を忍ぶ仮の姿というか、あくまでも「レクサスSC」でしかなかった。が、それにたまたまというか何というか、ソアラという名前を無理やり付けて、日本市場でも無理やり売ることになった──というのが実態であったように思う。
  それが証拠に、4代目ソアラの日本における月販目標台数はわずか100台でしかなかったのだ。
  となると、トヨタ・ソアラは冒頭付近で申し上げた「結果として廃番になってしまった悲しいモデル」であることは間違いないが、「フルモデルチェンジを重ねることで逆に商品力を落としていったモデル」とは少し違うのかもしれない。
  3代目、4代目へのフルモデルチェンジ時にソアラが商品力を落としたのは確かにそうかもしれないが、それは「多くの日本人から見た場合の話」でしかない。なるべく客観的に、世界市民的に見た場合のソアラの商品力は、「むしろ代を追うごとに上がっている」ということもできるはず。つまり、ソアラはフルモデルチェンジによって商品力が落ちたというよりは、「フルモデルチェンジ時に、いつの間にか中身が別物へとすり替わっていた」というべきクルマなのだ。
  本稿のタイトルである「かつては人気だったけど最終モデルはダメだった! 代を追うごとに人気がなくなって消滅してしまった過去の名車」とは、歴代のトヨタ・ソアラではなく、たとえば日産マーチと三菱ミラージュにこそ当てはまるのだろう。
  とくにマーチは3代目のK12型がウルトラスーパー素晴らしかっただけに、最終世代となったK13型へのフルモデルチェンジは「なんとも悲しいモデルチェンジ」であったように思う。

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