猫と暮らす人の「もしも」に応えて。

2024.01.30 12:37
『もしも今日、私になにか起きて帰られなくなったら、家で待つ猫はどうなっちゃうんだろう───』


飼い主である自分が、外出時に事故や災害に巻き込まれて命を落としてしまったら。或いは、急病で数日意識を失い入院していたら。
家で待つ猫たちは、一体どうなってしまうのだろう。


そんな不安から生まれたのが、猫の母子手帳「ねこヘルプ手帳」。
表紙には『家で大切な猫が待っています。私になにかあったらこの手帳を開いてください』というメッセージが刻まれています。
猫と暮らす人にとって命綱にもなるこの手帳には、猫を大切に想う猫飼いの想いが詰まっています。
本ストーリーでは、株式会社nancoco(所在地:岐阜県岐阜市)代表のオキ エイコがねこヘルプ手帳を考えついたきっかけと、それを支えたSNS上のたくさんの猫飼い達の軌跡をお伝えします。
オキ エイコ
イラストレーター。株式会社nancoco 代表取締役
3人の子供を育てながら、2匹の猫と暮らす。「猫を残して死ねない問題」をライフワークとし、ヘルプ手帳やどうぶつヘルプカードなどを製作。著書に、保護猫エッセイ「ねこ活はじめました(KADOKAWA)」等がある。
きっかけは一人暮らしの友人の相談
2020年。当時私は保護猫についての書籍を書き上げたすぐ後で、猫と暮らす友人知人と話す機会がたくさんありました。その中でも印象的だったのは、古くからの友人の一言。


「事故で自分が死んでしまうのは仕方がないと思えても、そのせいで猫を亡くしてしまうと思うと耐えられない」
一人暮らしで猫を育てるその友人にとって、その不安は深刻なものでした。


そんな不安が少しでも解消できたら、と友人のために作ったのが「スマホの待受画像」でした。友人宅の猫に合わせてハチワレ柄の猫と一緒に「おうちに大切な猫がいます。私になにかあったら気にかけてもらえると幸いです」の文字をデザインしました。
と、想像以上にたくさんの方が反応、拡散していただきました。4万超えのいいねと、2万リツイート。
たくさんの方のお役に立てたことを喜ぶと同時に、これだけたくさんの方が同じ様な不安を持っているということに気づくきっかけとなりました。


これが、後のねこヘルプ手帳誕生に続いていきます。
我が子同然だからこそ、猫にも母子手帳を
翌年2021年。私にとって第二子・第三子となる子供達を妊娠しました。
双子の出産はハイリスク。当時私はフリーランスのイラストレーターとして働いていましたが、1年間は新規依頼は受けずに出産育児に専念しようと考えていました。


役所で母子手帳をいただくと、私の中で一つの想いが湧き出ました。
「猫達だって我が子同然だから、母子手帳があってもいいのに」


災害時にお薬手帳や母子手帳などの紙ベースの記録が大変役に立ったと言う話も良く耳にしますし、動物達にもあればきっと救うきっかけになってくれるはず。
いつも持ち歩く手帳だったら、以前に作った待ち受け同様に猫の存在を周囲に存在を知ってもらうきっかけになるかもしれない。


考えれば考えるほど、動物達の母子手帳が無いこと自体が不自然に思えてきました。
無いなら作ろう、作るなら今しかない。
幸い体調の経過も良く、外部からの仕事を抑えていた妊娠期間だったからこそ時間はたっぷりありました。それから毎日、私は大きなお腹を抱えてパソコンに向かいました。
本当に必要な手帳にしたいから
無事出産を終えた2022年。SNSでこの手帳を作っていることを伝えました。
するとたくさんの方に「そんな手帳が欲しかった」「こんなことも書ける様にしてほしい」など、応援の声や意見・要望をいただきました。


特に項目への要望は有意義な意見ばかりでした。例えば「猫のご飯は、種類だけではなくてあげる時間も書ける欄が欲しい」や、「ペット保険の加入有無の欄が欲しい」「ワクチンの接種状況をもっとわかりやすい表にしてほしい」など、実際に猫と暮らす人だから気づく、正直な意見。


一見細かすぎるように見えても、猫を考えれば必要だと思える項目は積極的に採用しました。
例えば「トイレの砂やケースの種類も書ける欄が欲しい」といった意見には「自分の猫はトイレが変わると便秘になってしまう。もしも私が死んで新しい家に行くことになってしまっても、その事は伝えたい」という飼い主さんの想いがありました。


度重なるアンケートには何千人もの猫飼いさんが応えてくださり、充実した内容となりました。子猫から老猫、キャリア持ちの猫、その家庭によって必要な項目は様々です。どんな猫の手元に届いても良いように、最大限項目を詰め込みました。
予想を超える注文、予約で初版完売
こうして出来上がったねこヘルプ手帳。広告などは一切打たず、自分で作った小さなECショップで販売を開始しました。
完全なる個人販売だったので、製作も自分ひとり、配送も自分ひとり。混乱しないように余裕を持って1週間の予約期間を設けたのですが、まさかのその1週間で初版として用意した1000部が完売してしまいました。


これには私も驚きを隠せず、鳴り止まない購入通知を聞きながらひたすら注文通りに詰めていく、怒涛の1週間を過ごしました。1000件という数はとても一人で捌ける数ではなく、それまでノータッチだった夫や両親と手分けして梱包作業。
こうして家族総出で初版分の販売を乗り切りました。たくさん注文いただいたという喜びよりも、こんなにたくさんの方にちゃんと商品としてお届けできるかというプレッシャーの方が大きかったことを覚えています。
個人事業主から株式会社へ
広告やPRなどは一切行わなかったにもかかわらず、使ってくださった方がSNS知人の猫飼いさんに紹介し、声が声を呼んでたくさんの方から注文が絶えず続いていました。
その中で「犬バージョンも作ってほしい」「鳥も作ってほしい」など、猫以外の動物用ヘルプ手帳を求める声もありました。また、必要なページが増やせるようにバインダー式にしてほしい…など、様々な声が届き、この手帳はたくさんの方から「本当に必要とされる手帳なのだ」と再確認しました。


今後は猫以外の動物も視野に入れながら「もしもヘルプ手帳シリーズ」として継続的に製作・販売をしていくため、それまで個人で行っていた事業を法人として立ち上げました。
社員は一人。そして家族がサポート。これはそれまでと何も変わりません。
動物を本当に大切にする方をサポートするアイテムを今後も継続的に作っていくために、会社として事業をリスタートしました。
本当に使いやすい手帳へ
2022年末には、犬用「いぬヘルプ手帳」とエキゾチックアニマル用「どうぶつヘルプ手帳」が発売し、全ての動物の母子手帳が完成しました。
冊子版「もしもヘルプ手帳シリーズ」はたくさんの方に愛用していただき、嬉しい声をいただいていました。


ただ冊子版には
・必要情報を書き足すことができない
・多頭飼いだと冊数が増える(一冊にまとめられない)
・猫日記のページを増やせない
・必要な資料(病院のカードや診療領収書など)をまとめられない
など、足りない部分がありました。


使い続けたからこそ見えてきた、あと少しな部分。
そんな「痒いところに手を届く手帳に改善できないか」と考えた結果「バインダー式の手帳を作ろう」と旗を上げました。
クラファンにて2694%を達成
この手帳を制作するにあたって、SNS上のコミュニティを使って多くの猫飼いユーザー様の声をお借りしました。
血液検査ページや、コラムページ、写真を挟むスペースやカードケース…そして防災に関するページなど。見た目だけではなく、新たな機能を存分に増やしながら手帳作りが進みました。


2023年、応援購入サイトMakuakeによるクラウドファンディングで出来上がったバインダー式ねこヘルプ手帳の応援購入を開始。
開始8分で目標金額を達成し、その後も支援は伸び続け、当初の目標金額を大幅に上回る2694%を達成しました。
能登地震で注目される防災伝言メモページ
バインダー式ねこヘルプ手帳には、もしもの防災時に備えて「緊急時の伝言メモ」というページを用意しています。
アレルギーやワクチン接種情報、投薬病歴など猫の健康に関する最低限の情報を1枚に詰め込んだメモを、クリアファイルに入れて保存することができます。


もしなんらかの理由で猫と離れなければならない時、このページをケージに括り付けておくなどすれば、一目で情報が伝わる仕組みです。クリアケースに入っているので、水濡れも防ぐことができます。


またバインダー式はより専門的な視点を取り入れ、藤井動物病院(所在地:神奈川県横浜市)の院長・藤井康一獣医師の監修を受けています。
2024年元旦に起きた能登の大地震。避難所で猫と一時的に離れなくてはいけなくなった方から、このページが大変役に立ったとご連絡がありました。
動物と一緒に避難できる避難所は限られており、例え可能であっても別スペースで分けられていることもあります。飼い主のいない時になにあったらと不安な中、このメモのおかげで精神的に救われたとのお声でした。


手帳を持ったとしても、直接的に事故を防ぐことや災害から逃れることもできません。ですがもしもの時に精神的にサポートすることができたのならば、私たちが作ってきたこの手帳は間違いではなかったと再確認するきっかけとなりました。
家族のいない動物への支援
このヘルプ手帳が購入された数は、「家で大切にされている動物たちの数」だと思っています。動物たちにとっても飼い主にとっても、それはかけがえのない幸せです。
ただ、世の中には家族もおらず、保健所で殺処分になってしまう動物たちも残念ながらいます。


その子たちの命を救えないかと、私たちは寄付を続けています。寄付金はヘルプ手帳1冊購入につき50円と決めています。家族に愛された動物たちの分が、家族がいない動物たちの幸せをサポートできたら、という思いからスタートしました。


寄付金は公財日本動物愛護協会様を通して、殺処分を失くす運動に使っていただいております。
動物と暮らす全ての方へ
クラファンで大好評だったバインダー式ねこヘルプ手帳。2024年2月に一般販売を開始します。早くもたくさんの方から一般販売を待ち望む声があり、2月22日の猫の日ギフトにも注目されています。
その上で、夏を目処にいぬヘルプ手帳やどうぶつヘルプ手帳もバインダー式の製作を進めています。


今はネットショップ中心の販売ですが、この手帳は動物と出会う最初の場所での販売を目指しております。例えば保護猫施設、動物病院、ペットショップ等、これから動物と暮らす方が一番最初に手に取ってほしいと感じているからです。


動物とその飼い主がいつまでも安心して暮らせる様に、今後も日々活動を続けていこうと感じております。

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