熱い情熱で「大企業」すら動かした「名開発者」4人と誕生した奇跡のようなクルマ

2024.01.27 17:20
この記事をまとめると
■開発担当者の熱意によって生まれたクルマがあった
■クルマ好きの開発者によって市販化されたモデルを4台紹介
■開発担当者自身がサーキットでも走るような走り好きであったケースもある
クルマ好きが作り上げた名車たち
  地球環境を守るため、カーボンニュートラルに向けて邁進するしか道がない自動車業界。そんななかでは、内燃機関の「スポーツカー」という存在そのものが「悪」とされてしまいそうなピンチでもあります。それでも、スポーツカーを根絶させてはいけない、走る楽しさを諦めたくないという、熱いハートを持った開発者がいたおかげで、この世に誕生することになったクルマがあります。
  まず1台めは、2021年8月に米国で最新モデルが発表された歴史あるスポーツカー、日産フェアレディZ。初代のS30型が誕生したのは1969年で、全世界で52万台以上を販売し、多くの熱烈なファンを生み出しました。
  しかし、4代目となるZ32型が2000年で生産中止に。当時はカルロス・ゴーン氏指揮のもと推進された「ニッサン・リバイバルプラン」の目玉のひとつとして、フェアレディZの復活プロジェクトが立ち上がり、元開発責任者の湯川伸次郎氏の熱意によって、Z33が異例のスピードで誕生するに至りました。ところが市場全体でスポーツカーの販売台数が減っていき、再びZは消滅の危機に陥るのです。
  それを救った立役者が、GT-RやZの総括責任者(当時)を務めてきた田村宏志氏。運命のスタートとなったのは2017年3月1日で、この日、田村氏はメモに手書きで「Zを考える」と記し、会社に対してZの必要性を説いたのだそう。その際、MT車はいらないのではないかという意見も出たところ、田村氏は「絶対にMTはやめない」と直訴。当時のMT車とAT車の比率が40:60だから、と熱弁を振るったそうですが、じつはその比率はNISMO仕様に限ったデータで、全体ではそこまでMT比率が高くなかったのだとか。
  それでも、田村氏としては極端なことを言えば、MT車を望む最後のひとりがいなくなるまでは、つくりたいという思いだったのかもしれません。その気持ちこそが、日産ファン、Zファンを大切にするということであり、フェアレディZという偉大なスポーツカーを次世代につないでいくということなのでしょう。
  2台目は、マツダが世界に誇るライトウェイト・オープンスポーツカーのロードスター。その現行モデルであるND型を初代のNA型同様に「軽く」することにこだわり、見事成功させたのが元開発主査の山本修弘氏です。先代のNC型は、時代に合わせた衝突安全性能などを満たすため、初代よりボディサイズも排気量も大きく、約150kgも重くなっていました。
  それをもう一度、NA型のオーナーに振り向いてもらえるクルマにしたい、という強い想いで開発に着手したという山本氏。安全性や環境性能を犠牲にすることは許されないなか、軽さにこだわるのは並大抵の決意ではできないことです。
  さらに、ロードスターに脈々と受け継がれる哲学として、FR、オープン、50:50の重量配分、慣性モーメントの小ささ、手に入れやすい価格の5つを死守。軽量化には、まずボディサイズを抑え、エンジンを小型化し、アルミ材料を増やしつつ、部品ひとつひとつの無駄を1g単位で削ぎ落としていったことで、先代より100kg以上減を実現。
  ただ、もっとも苦労したのはデザインで、デザイナーとしては「もう一生、変えなくてもいいと思えるデザイン」が完成したのですが、金型やプレス、組み立ての現場でそれを作れるかどうかは、また別の話。じつをいうと、アルミでは到底できないようなデザインだったそうですが、それぞれの現場がプロの意地をかけて革新してくれたおかげで、NDロードスターが完成したのです。
持ってることを誇りに思える
  3台目は、ホンダのスポーツDNAを連綿と受け継いできたシビックタイプR。その5代目、6代目の開発責任者を務めたのがS2000やNSX-R、インテグラタイプRなどのスポーツ運動性能開発を担当してきた柿沼秀樹氏です。
  2017年に登場した5代目は、スポーツカー逆風のなかにあっては成功を収めたモデルでしたが、6代目開発中に大きな壁が立ちはだかります。それが、2021年限りでホンダがF1から撤退したことや、「2040年までに電気自動車と燃料電池車の販売比率を全世界で100%にする」という電動化宣言。柿沼氏はここで開発の手を止めてなるものかと、役員室に乗り込んでタイプRの必要性をこれでもかと訴えたといいます。
  その甲斐あって、2022年についに6代目シビック・タイプRが誕生。究極のFFスポーツを目指し、5代目から受け継いだものをさらに突き詰めて、とくにエンジンについてはピュアエンジンの集大成をつくるという意気込みで、もうこれ以上できることはないというところまで、やりきったと語ります。
  じつはそんな柿沼氏は身銭を切って、社員有志による自己啓発チームでシビックタイプRを駆ってS耐に参戦。5代目のときには、同じクラスのGRヤリスや三菱ランサーエボリューションなどに苦戦を強いられてきましたが、そこで得た改善点を開発にも活かし、6代目での参戦をスタートすると表彰台の常連に。ついに、2023年のクラスチャンピオンを勝ち取るまでになったのです。自身のプライベートでの愛車もシビックタイプRで、まさにMr.タイプRと呼ぶにふさわしい、熱き開発者です。
  4台目は、SUVなのにニュルブルクリン24時間レースにまで参戦して走りを鍛え、スポーツカーのような走りを実現して登場したトヨタC-HR。そろそろ日本での次期型の登場が期待されていますが、そんなC-HRをそこまで走れるSUVに仕上げたのが、元開発担当主査の古場博之氏です。
  C-HRが登場した2016年当時は、どの国のユーザーに聞いてもSUVの走りに満足している人が少なかったため、それを打破するためにフォード・フォーカスやフォルクスワーゲン・ゴルフといった、走行性能に定評のあるモデルをベンチマークにして開発したというから、とてもユニークです。
  そもそも古場氏は、プライベートでサーキットを走り、VITAや86などさまざまなワンメイクレースに参戦している大の走り好き。だからC-HR開発にあたって、ドイツのアウトバーンをはじめ欧州のワインディングを徹底的に走りまわったそう。
  その勢いでニュルブルクリンク24時間レースにも参戦し、完走。もちろん古場氏もつきっきりで帯同し、ドライバー兼エンジニアとして奮闘。そんなSUVは未だかつて聞いたことがないほどです。だからこそ、走りのいいSUVというと真っ先に名前が挙がるくらい、C-HRが走り好きな人の支持を集めたのでしょう。
  ということで、名車の影には熱き名エンジニアあり。この世から面白いクルマ、感動させてくれるクルマがなくならないよう、エンジニアの皆さんの熱意をこれからも応援していきたいですね。

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