「一年後に乾杯しよう!」丹波篠山で始まった地産地消のクラフトビール作りプログラムに込められた、株式会社ミドリカフェの考える“人と自然との関係性”

2024.01.09 09:00
株式会社ミドリカフェは、日本の自然環境を守っていくため、「資源循環」・「環境共生」を大切にした暮らしの提案を行なっているコンサルティング会社です。これまで主に「自然」と「人の暮らし」をどう繋げ、近づけていけるかを重視した緑化設計や場づくりを行ってきましたが、約3年前より兵庫県丹波篠山市を拠点とし、従来の造園ランドスケープの設計デザイン・施工業務に加え、森づくりのコンサルティング業務も行っています。最近では知人に協力してもらい、事業所として借りている物件の裏山で、放置林の間伐やアクティビティーを楽しむための整備も進めています。


本記事では、ミドリカフェが運営している「草むらの學校」で始まったクラフトビール作りプログラムの内容と、その根底にあるミドリカフェ代表ウチダの“人と自然との関係性”についての想いを紹介します。
ウチダ ケイスケ
1972年生まれ。京都工芸繊維大学工芸学部卒業後、造園コンサルタントに約8年従事。
独立後、神戸市東灘区に前身となる「ミドリカフェ」を2005年にオープン。2023年に「株式会社ミドリカフェ」として組織変更。2013年~2015年兵庫県立淡路景観園芸学校インストラクター。2015年~2019年神戸大学大学院農学研究科学術研究員。2019年~兵庫県認定里山づくりアドバイザーを務めている。
森づくりなどの里山文化の学びを目的とした「草むらの學校」
まずは2022年に始まった“草むらの學校”という取り組みについてお話しさせてください。 “草むらの學校”は、森づくりなど里山文化の学びを目的とした學校です。丹波篠山市にある「やまもりサーキット」というキャンプ場の敷地内に専用のキャンプサイトを借りて運営しています。


プログラムでは、実際にその地域に暮らす自然や生き物などに詳しい住民の方々を講師に招き、一緒に草むらに入って昆虫採集をしたり、猟師さんによる鹿の解体ショーをしたり、野草を探して食べたり工作したり、竹を切ってバウムクーヘンを作ったりしています。まだ始まって一年ほどですが、こうして学びの時間を設けることで、参加者の方に丹波篠山の里山の自然により興味を持ってもらえ、子どもたちからも「またあの先生に会いたい!」という声が上がるようになるなど、自然はもとより人との関係性も生まれるようになってきました。
こうした“草むらの學校”の取り組みは、全国の地方新聞やNHK、一般社団法人共同通信社が主催している「地域再生大賞」の第13回優秀賞に選ばれました(2023年2月)。
大事なのは、地域や人々と継続的に関わること。ビール作りを通じて「関係人口」を増やしたい
近年丹波篠山を含めた地方の山間部にある農村の多くが、農林業の高齢化や担い手不足、自然災害、獣害、空き家の増加など、様々な問題を抱えています。その解決策としては、移住や雇用の促進、里山環境を保全するための補助事業等がありますが、多くの地域でスムーズに進んでいないのが実情です。加えて「里山環境を誰のためにどんな方法で活用するのか」といった議論が少ないため、一時的に良くなっても何十年か先にはまた維持管理する人がいなくなる可能性もあるでしょう。
美しい自然環境を未来に残すことは、文化の継承のためにとても大事なことですが、そのためには環境を維持する人の存在、「自然と人との関係性」について見直していく必要があると思います。私は移住や雇用の促進などと同じように、「関係人口」を増やしていくことがとても大事だと考えています。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でも、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人のことを言います。農村などに入り、地域の文化について体験したり学んだりする活動事例はたくさんありますが、中には“単発のイベント”で終わるものも多く、もったいないと感じることがあります。そこで、地域や人と“継続的に関わる”ことが出来る年間プログラムとして、ビールづくりを“草むらの學校”で始めることにしました。


このような活動を通じて、農村資源を使った新しい商品開発を体験できたり、地域の方と顔見知りになり、プログラム以外でも遊びに行くようになる。そして気がつけば、今までの自分の生活圏が、街の中から地方を含めた地域にまで広がっていく。そうして「関係人口」が増えることで、美しい自然環境を守るための活動が活発化していく、そんな新しい「人と自然の関係づくり」ができればと思います。
過程を楽しむ醍醐味を!一年かけて参加者全員で楽しむ“クラフトビール作り”
2023年の11月よりスタートしたビール作りプログラムでは、地域の農家さんやブルワリーさんと協力し、一年を通して様々な工程を体験、参加者全員でクラフトビールを作ります(厳密には発泡酒)。ビールを作るために必要な原材料は、大麦とホップ。そこに風味づけとしてヒノキの木を加えます。これらの原材料を一から栽培して使用するため、一年という長い期間がかかるのですが、この月日の経過も含めて、参加者の皆さんには楽しんでいただきたいと思っています。


大まかな流れは、まず初めに参加者の皆さんと協力していただく農家さん、ブルワリーさん、運営スタッフで集まりビール醸造の方法やスケジュールを共有、麦の播種を行います。(写真は実際行われた麦の播種の様子)
冬には山に入り、林業家さんを招いて間伐体験。この時切ったヒノキの木は後にチップ化して使用します。春には麦の追肥と里山の自然観察体験、夏から秋にかけてホップの植え付けや麦の収穫ホップの収穫を予定しています。秋になるといよいよビールを仕込み、プログラムスタートから一年後にみんなが関わったヒノキビールが完成! お披露目会を開催し、全員での乾杯を楽しみます。


大麦の栽培は丹波篠山市で農業を営む橋本創房さん、ホップ栽培とビールの仕込みは、同市でクラフトビールの醸造販売をされている丹波路ブルワリーさんにご協力いただいています。丹波路ブルワリーさんとは、2021年・2022年に木の芳香水を使用した「黒文字麦泡」「檜麦泡」を共同で開発販売した経験があり、そのどちらもが大変好評でしたので、今回もぜひにとお願いしたところ快く引き受けてくださいました。また、草むらの學校の企画に携わってくれている、やまもりサーキットさんにも本プログラムの運営サポートをしていただいています。
さらにはこのプログラムを実現するにあたり、同じ丹波篠山市で都市部の人と米づくりなどのプログラムを通じて日本酒作りに取り組んでおられる「ミチノムコウプロジェクト」代表、吉良農園さんにアドバイスをいただき、取り組みを後押ししてもらったことも大きな力になっています。


山や畑から醸造の現場までの様々な体験プログラムを、大人も子どもも一緒になって楽しんでもらった後は、キャンプをしたり、観光を楽しんだり、食事を楽しんだりして、地域全体を楽しむ機会になると嬉しいです。ビールが好きな人、ビール作りに興味がある人だけでなく、親子で自然体験がしたい人や里山文化に興味がある人など、どの世代の人にも足を運んでもらい、楽しい時間を過ごしてほしいと思っています。
自然環境を「自分事」に。草むらの學校が生み出す人と自然との関係性
昨今、地球温暖化や生物多様性・森林の保全などといった取り組みが社会的なニーズとして注目されていますが、どこか遠い世界の言葉に聞こえてしまうことはないでしょうか。その理由としては、なんでもビジネスに結びつけようという動きが見えてしまうことや、熊の住宅地への出没や自然災害が起こったときのメディアの報じ方にあるような気がします。被害の大きさを数字で繰り返し伝えることは、「対自然」の構図を描いてしまうので、根本的な問題であるはずの「なぜそれが起きているのか」が議論されません。その結果、自然環境の存在意義や共存のための方法をあまり意識しなくなり、「自然=脅威」といったイメージが膨れ上がり関係性が分断されてしまっているような気がしてならないのです。社会的なニーズとしては、「自然を大切にする」という意識が高まっているのに、これでは「人と自然との関係性」が途絶えてしまうでしょう。私はここに常に違和感を持ち続けてきました。


30代で独立してからは、「人と自然を結びつけるプラットフォームづくり」を意識するようになり、カフェをつくったり、さまざまなワークショップやプロジェクトを立ち上げるようになりました。すると、多様な人との繋がりが生まれ、やがて地域ぐるみでの取り組みに広がることもあり、これでいいんだという手応えを感じました。なにより参加してくれた方々が笑顔になって帰っていくことに大きな魅力を感じたものです。
そうした想いや経験から、「自然環境を設計デザインするだけでなく、その後にどう活用・運用(維持管理)していくか」を含めたコンサルティングがしたいと思い、範囲も庭や公園緑地だけでなく、森にまで広がるようになりました。その一つの形が、キャンプ場という場を通して地域の森づくりにも取り組んでいく「草むらの學校」で、理論的な学びよりも楽しく自由なアプローチで森づくりに関わっていくことを大切にしています。
今回の「ビールづくり」では、特別な一杯を笑顔で乾杯するために、年間を通して地域の自然やそこで生活する人と関わることで、今までどこか「他人事」のように感じていた自然環境が、「自分事」に変わっていく機会になるのではないかと期待しています。そうなることで、新しい「人と自然との関係性」が生まれ、未来につながる地域づくりや自然環境の保全に繋がっていくと信じています。


【会社情報】
株式会社ミドリカフェ
〒669-2713 兵庫県丹波篠山市倉本141
代表取締役:ウチダ ケイスケ
HP:
【関連情報】
草むらの學校
〒669-2704 兵庫県丹波篠山市遠方41-1 やまもりサーキット北側
HP:

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