スポーツ文化と地域発展への貢献を目指す、セレッソ大阪のファンマーケティング戦略とは

2023.11.02 15:00
全世界を襲った未曾有のコロナ禍は、スポーツ界にも多大な影響を与えた。一時は無観客での試合開催も余儀なくされるなど、その存在意義すら問われかねない状況だったが、ようやく昨年頃から観戦環境が整い始め、観客動員にも回復の兆しが見られるようになってきた。そうした中、大阪市に本拠地を構えるサッカーJ1のセレッソ大阪も、「サッカーを核とする事業を展開し、夢・希望・感動にあふれたスポーツ文化の振興と地域社会の発展に貢献する」日常を取り戻すべく、歩みを続けている。近年は安定して上位と結果を残しているピッチ内に加え、ピッチ外でも顧客満足度を高め、新規のリピーターを増やすべく、日々、奮闘。「競技だけの魅力で集客できることが一番ですが、競技の魅力を伝えるためにも、まずは来てもらうことが大事。勝敗以外のところでも『スタジアムで過ごす1日が楽しかった』と思ってもらいたい」という信念を持つ事業部ファンマーケティンググループ生田修也に、セレッソ大阪のホームゲームにおけるイベントの仕掛けや取り組みについて、話を聞いた。
未来のファン・サポーターを増やすファンマーケティング
大阪市・堺市をホームタウンとするサッカークラブ、セレッソ大阪。1957年創部のヤンマーディーゼルサッカー部が母体となり、1995年にJリーグへ加盟。現在は、選手としても長年セレッソで活躍し、「ミスターセレッソ」の愛称でも親しまれた元日本代表、森島寛晃が代表取締役社長を務め、「SAKURA SPECTACLE(サクラ スペクタクル)」というクラブスローガンのもと、「サッカーを核とする事業を展開し、夢・希望・感動にあふれたスポーツ文化の振興と地域社会の発展に貢献する」ことを目標に掲げている。
応援するファン・サポーターへ交流する選手たち


2019年にはクラブ史上最多となる1試合平均21,518人の観客を動員したが、2020年から続くコロナ禍の影響は、スポーツ界、そしてセレッソ大阪も無縁ではなかった。一時は無観客試合や観客動員数を制限した上での試合開催も余儀なくされた中、昨年頃から次第に観戦環境が整い始め、今年は人数制限なしの集客が可能となった。そうした追い風も背に、顧客満足度を高め、新規のリピーターを獲得すべく、ファンを一人でも多く増やしていくファンマーケティングを担当している生田修也に話を聞いた。既存のファン・サポーターに試合を楽しんでもらうことはもちろん、潜在顧客を掘り起こし、1枚でも多くのチケットを売ることが仕事だ。もちろん、プロサッカークラブの本分は、試合内容で魅了し、目の前の相手に勝つこと。強く、魅力的な選手が多いほど、ファン・サポーターの数は増える。ただし、スタジアムに足を運ぶきっかけ、サッカーという競技を知ってもらう手段は、一つでも多くあった方がいい。「競技だけの魅力で集客できることが一番ですが、競技の魅力を伝えるためにも、まずは来てもらうことが大事。勝敗以外のところでも『スタジアムで過ごす1日が楽しかった』と思ってもらえることで、未来のコアサポーターを増やしたい」(生田)という信念の下、ホームゲーム当日、ピッチ外でのイベントや企画を手掛けている。
事業部ファンマーケティンググループ 生田修也
様々なイベントでセレッソ大阪の認知を広める
Jリーグ、そしてセレッソ大阪というクラブがより広く認知されるために、日々、既存のサポーターだけではなく、新規のファンにも刺さるアイデアを捻っている“ファンマーケティンググループ”だが、クラブとしてイベントを仕掛ける上でこだわっているのは「アットホームな土地柄を生かした大阪らしさ」(生田)。アニメ「じゃりン子チエ」とのコラボでは「昭和レトロデー」として開催された21年のJ1第25節・横浜FC戦と第26節・湘南ベルマーレ戦において、イベント広場特設ブースに赤電話、ジュークボックス、懐かしの映画ポスターなど昭和にタイムスリップしたようなアイテムが展示され、来場者全員に「じゃりン子チエ」コラボステッカーが配布された。「セレッソ大阪のコアサポーターは40、50代。その世代の方が見ていたアニメであり、舞台は大阪の下町。これはセレッソ大阪がコラボしないわけにはいかない」(生田)と、実際にテレビに映る「じゃりン子チエ」を見ながら思い立ったという。
「昭和レトロデー」で配布されたコラボステッカー


当時は収容人数が5,000人制限というコロナ禍でもあり、このイベントは、どちらかと言えば既存サポーター向けではあったが、もちろん、新規サポーター獲得へ向けたイベントも定期的に行っている。その中の一つが、毎年行われている「セレ女デー」だ。J1第29節・湘南戦で開催され、試合当日は来場者プレゼントとして、先着10,000名に日本ハムオリジナルホッケーシャツがプレゼントされた他、様々な香りが楽しめるショップが出店され、インスタ映えする特別フォトブースも設置。ヘアアレンジ体験や、セレッソカラーに彩られたネイル体験、フェイスペイント体験など、サッカー以外にも女性やお子さんが楽しめるイベントが盛り沢山の1日となった。
2023年のセレ女デーで設置されたフォトスポット


近年は異業種とのコラボも増え、キャスティングにも力を入れている。前述の「セレ女デー」では、人気スマートフォンアプリゲーム「アイドリッシュセブン(アイナナ)」に登場するRe:valeとのコラボが実施され、試合当日は、限定コラボグッズの販売、コラボビジュアルのスタンディパネル・オリジナルユニフォームの展示も行われた。特にRe:valeの百(モモ)は、“学生時代、サッカー部に所属しており、怪我で挫折した”という過去があり、そんな百が“アイドルとなって、サッカーチームとコラボする日が来る”という“ストーリー”も、アイナナファンの琴線に触れたようだ。「セレッソ大阪だけでは届かない層にも響く」(生田)ことを目的とした、こうした異業種との取り組みの反響は大きく、試合当日は限定グッズ売り場にたくさんの行列ができ、X上ではサッカーファン以外にも大きな話題となった。
「Re:vale」コラボのスタンドパネルで撮影


21年のJ1第33節・横浜F・マリノス戦、昨年のJ1第27節・サンフレッチェ広島戦と2年連続で来場して大きな反響を呼んだヒップホップグループ「梅田サイファー」等、アーティストを招き、試合前やハーフタイムにピッチレベルでパフォーマンスを行うことも近年の特長だ。メンバー自身がXで感想を述べるなど、サッカー界を越えて広がりを見せるイベントとなっている。
2022年広島戦でパフォーマンスした「梅田サイファー」


また、試合前には、「WAKUWAKUステージ」と呼ばれる舞台で様々な芸人がネタを披露する取り組みも行われている。今年はすでに「見取り図」や「銀シャリ」といった著名なコンビも登場するなど、大きなインパクトと盛り上がりを見せた。
2023年神戸戦で「見取り図」が参加したWAKUWAKUステージ
「まずやってみる」というセレッソの社風と寛容なサポーターあってこそのユニークな企画
もちろん、こうしたイベントはすぐに実現できるモノではない。「年間のJリーグのスケジュールが出た段階で大まかな予定は立てつつ、試合の3〜4ヶ月前から準備を重ねていく」(生田)過程において詳細を煮詰め、実現へ向けて奔走していく。予算やアイデアも含め、企画段階で異論や反対意見など、社内で様々な議論が交わされることもあるという。それでも、「まずはやってみたら、という社風がセレッソ大阪にはある。やりたいことをやらせてもらえているので有難いです」と生田は語る。また、サポーターに関しても、「一見、突拍子もないユニークな仕掛けも受け入れてくれる姿勢をもった方が多い。知らない層に、セレッソ大阪を認知してもらうことに喜びを感じてくれるコアサポーターさんは多い」生田は感謝する。これは企画実現に向けて、セレッソ大阪の大きなアドバンテージとなっている。老若男女を問わず、スタジアムに来やすい雰囲気が醸成されていることはセレッソ大阪の強みだ。
2023年名古屋戦のハーフタイムで、全力疾走する声優の「久保田未夢さん」


10月28日に開催された大阪のサッカー界が熱く燃え上がる1日、ガンバ大阪との“大阪ダービー”は「公認セレ男・ローランド氏」が来場した。ローランド氏がセレッソ大阪と関係を築くきっかけとなったのは、2019年のレディースデー(現・セレ女デー)の企画として、クラブがローランド氏を招き、“セレ女のお悩みを解決するトークショー”を行ったこと。また、ローランド氏によるレフェリーエスコートも実施されたが、中学時代は柏レイソルのジュニアユースでプレーし、高校時代は帝京高校サッカー部でプロサッカー選手も目指していたローランド氏にとって、「プロサッカークラブからオファーをいただけるとは思っていなかった。ピッチに足を踏み入れた瞬間は何物にも代えがたい経験になった」という。それ以降、「セレッソか、それ以外か」の精神を貫き、自身のSNSやテレビ出演等でもセレッソ大阪の情報を積極的に発信。2020シーズンから「公認セレ男」に就任。さらに、「CEREZO×ROLANDコラボグッズ」のロイヤリティ全額を桜スタジアム建設募金として寄付するなど、献身的な行動を続けている。一番最初にローランド氏をゲストに招く際は、社内でも様々な意見もあったようだが、今では“最強のサポーター”としてクラブを力強く後押しする存在になっている。
2023年レフェリーエスコートを行う「ローランド氏」


「ホームタウンである大阪市や堺市の人たちでも、まだセレッソ大阪を見たことがない方々は多い。今後も社内全体で、一人でも多くの方に注目される取り組みを続けていきたい」と生田は語る。根底にある心は、「スポーツ、サッカー、エンターテインメントを通じて、一人でも多くの方に楽しんでもらいたい」というサービス精神だ。試合後にピンクのペンライトを振ってスタジアムをサクラ色に染め上げるナイトゲーム限定の「SAKURA NIGHT」も2022シーズンから行い、好評を博している。
SAKURA NIGHTの様子
満員のスタジアムで優勝を決めるために、社員一丸となって取り組んでいきたい
「初めてスタジアムに来た方が『楽しかった、また来たい』と思えるアットホームな雰囲気作りは今後も継続していきたい」(生田)。今期のリーグ戦では、スタジアム収容率が、J1・全18クラブ中、セレッソ大阪がナンバーワンになることも多い。「常に満員のスタジアム環境を作ることで、選手たちのパフォーマンスも向上する。それがチームの結果にもつながる。相乗効果でチームを強くしていきたい。一番の目標は、満員のスタジアムで優勝を決めること。そこに向かって、全社員で一丸となって取り組んでいきたい」(生田)。
応援するサポーターの方々


今後もクラブを広く周知させるために、既存のサポーターを満足させつつ新規のリピーターを増やすために、サポーターと選手が一体となった強いクラブにしていくためにピッチ外でどのような仕掛けが生まれていくか。セレッソ大阪の今後の取り組みに注目していきたい。

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