この記事をまとめると
■5代目スカイラインは「ジャパン」の愛称で親しまれた
■ドラマ「西部警察」で使用されたこともあり、いまでも根強いファンが多い
■当時はスペック不足からライバル車に挑発された不人気車だったが最近は人気が高まっている
5代目スカイラインは通称「ジャパン」!
旧車好きの間で「ジャパン」と言えば、「C210系」の5代目スカイラインのことだとすぐわかりますが、そうでない人たちにとっては、「日本車なのに何でわざわざジャパンと呼ぶのか?」と疑問が浮かぶことでしょう。
先に言ってしまうと、この「ジャパン」という愛称は、広告のキャッチフレーズから取られたものです。海外戦略車としての位置づけの「フェアレディZ」と異なり、「スカイライン」は日本のみで販売されるドメスティックな車種なので、その特色をよりアピールするために「SKYLINE JAPAN」と銘打って、日本国内で活きる性能に仕立て上げられたGTカーというイメージ広告を展開しました。それが後々に短縮されて「ジャパン」という愛称として定着しました。
スカイライン「ジャパン」とは、どんなクルマなのか?
この「ジャパン」は、4代目の「ケンメリ」こと「C110系」スカイラインの後継車として開発されたモデルです。それまでは欧米のクーペなどをお手本として、曲面が魅力的なデザインをまとっていましたが、1980年代前後に起こるデジタルブームの雰囲気を受けて、直線基調のデザインに切り替わったのが外観の特徴になっています。
後々になると、このデザインの転換が旧車好きの間で不評となってしまい、しばらく不人気車の扱いになっていた時期があるのですが、根強い「西部警察」のイメージと、日産旧車ファンに人気の高い「L型エンジン」をラインアップのメインに据えた最後のモデルということもあり、いまでは人気の車種に返り咲いています。
先代の「ケンメリ」の代の後半から、世界的に押し寄せた環境問題に対する“排気ガス規制”に対応させるためにパワーダウンを余儀なくされてしまったため、現役時代の「ジャパン」は走りのよさがアピールポイントであるGTカーとしてはとても苦しい状況だったと思います。
後期モデルから「ターボ」搭載となって、ようやく本当に速さを誇れる動力性能を得ることになりますが、前期モデルでは、ライバルである「トヨタ・セリカ」に広告で挑発を受けるくらいにエンジン性能競争で後塵を拝していました。
また、それまでは価格が低いグレードに「L型6気筒エンジン」と同じ設計の「L型4気筒エンジン」を採用していましたが、代の中程に新開発の「Z型4気筒エンジン」が投入されました。それまで4気筒モデルは“廉価版”のイメージがありましたが、この「Z型」は1気筒あたり2本のスパークプラグを持つ高性能エンジンで、そのイメージを払拭する十分な性能をアピールしました。走りを求めるスカイライン好きのなかには、4気筒モデルのほうがノーズが軽くてコーナーで速いとそちらを好む傾向もあったようです。
ドラマ「西部警察」で活躍した「マシンX」の衝撃
旧車好きでなくても、「西部警察」に登場する「マシンX」は好きという人はけっこう多いのではないでしょうか。筆者もそのひとりで、ブラックのボディに金文字で「2000GT TURBO」と誇らしげに記された堂々とした佇まいに魅せられ、憧れを持って観ていたのをいまでも鮮明に思い出せます。
※画像はマシンXと同色のスカイライン
外観は、「カンパニョーロ」製のマグネシウムホイールを採用した当時の特別仕様車「ゴールデンカー」そのもので、憧れた人が実際に手に入れられるということを強く打ち出していたのだと思われます。
なんと言っても強く印象に残っているのがその特殊装備でした。助手席部分には、無線や追跡装置などの電子機器が装備されたコントロールパネルがあり、飛行機の計器パネルを思わせるその非現実感に打ちのめされました。しかし、後から少し調べてみると、その装備の数々は円谷特撮のようなハリボテではなく、実際に機能する製品や、いまのカーナビ的装置などの、いずれ実現されるであろう未来の可能性をしっかり吟味されたものが使われていたことに驚かされます。
この「マシンX」のベースとなったのは、ターボが追加された後期モデルの「2000ターボGT-E」だとされています。年式はおそらく1980年で、ドラマで初登場したのが「大激走! スーパーマシン(PARTⅠ・54話)」で1980年8月放送なので、ドラマの撮影や車両の架装のタイミングを考えると、ターボモデルの発表前から製作に掛かっていたと思われます。そのことだけを見ても、当時メインスポンサーだった日産の本気度の高さが窺えます。
昨今の旧車ブームのなかでの「ジャパン」
先に書いたように「ジャパン」は、旧車ファンの人気のランキングで見たときに、10年ほど前まではだいぶ下の方だったという印象でした。というよりも、スカイラインとしては「ハコスカ」と「ケンメリ」が不動の2強で、ほかは少数派となっていたように思います。
その昔、族車として多くの旧い車種が改造のベースとして使われていましたが、その世界では「ジャパン」の採用率はかなり高かったと思います。その理由として考えられるのは、まず「スカイライン」という格の高い車種であること。そして、その「スカイライン」のなかで、当時比較的入手しやすい新しめのモデルだったというのも大きかったのではないでしょうか。あるいは角張ったデザインが、派手さを競うウエイトの大きい族車として適していたのかもしれません。
そしてその後で、いまに続く“旧車ブーム”が起こるわけですが、「ハコスカ」と「ケンメリ」が強すぎる状況に加えて、族車にもてはやされて数が減ってしまった「ジャパン」は現存数が少なく、イベントなどでも出会える確率が低い車種となっていました。
その後、旧車の人気の上昇にともなって中古市場価格が高騰するようになり、徐々に新し目の車種にも注目が集まるようになって、「ジャパン」にスポットライトが集まっているというのがいまの状況です。それで、これまではよく知らなかった「ジャパン」の魅力が掘り起こされて、再注目されているのを感じます。
実際に所有する場合を考えてみると、補修パーツの充実度はこれから期待するところで、カスタムパーツも決して多くはありません。しかしその一方で、趣味のクルマにとって大事なポイントであるデザインに目を向けると、直線基調の潔く勢いのあるキャラクターラインや絶妙なウエッジシェイプのシルエットなど、いま見ても新鮮さを感じるスッキリした外観には、独特の魅力を感じます。
広告で謳われていたように、日本の国土にマッチしたGTカーとして設計されたシャーシを持つ車種なので、例えば1〜2泊を想定したロングツーリングに出掛けると、きっと「ジャパン」の良さをいまでも十分に堪能できると思います。