昔の自動車セールスマンは「何でも屋」だった! 活動制限に縛られるイマドキの新車販売現場が抱える問題

2023.10.20 06:20
この記事をまとめると
■昔の自動車セールススタッフは一種の「御用聞き」のような存在だった
■担当する顧客のクルマに関することをできる限り叶え、要望をなんでも聞いていた
■最近では自身の利益を稼ぐために問題行動に走るスタッフが増えている
まるで「何でも屋」のようだった自動車セールススタッフ
  50歳代後半の筆者ぐらいでもかすかに記憶しているのが、「御用聞き」。これはたとえば、酒屋さんや魚屋さん、八百屋さんなどでお得意様の家へ行き注文を聞いてまわることで、その後注文された商品が、現代風に言えばデリバリーされることになる。長年国民的アニメとして日曜夕方に放映されている作品でも御用聞きが登場してくる(現状は未確認)のを思い出す人もいるかもしれない。
  いまは働き手不足や、ライフスタイル、価値観の変化もあり、訪問販売から店頭販売にほぼ切り替わっている新車販売におけるセールススタッフも、過去には御用聞きに近い立ち位置だったようにも見える。もう少し格好良くいえば、お客の家庭のマイカーに関するコンシェルジュという表現もふさわしいかもしれない。
  日常的に新規開拓も含めた外まわり営業をメインとし、新規開拓の合間に既納客のもとに顔を出し「どうですか?」などとコミュニケーションを重ね、人と人とのつきあいがメインとなり、信頼関係のもとに、セールススタッフが「そろそろ乗り換えどきですよ」と勧めると、「それでは頼むね」といった流れで、乗り換えするクルマのチョイスも含めセールススタッフにお任せというユーザーも昔は多かったのだ。
  また、単に新車への乗り換えだけでなく、「いい洗車のやり方はないか」や「スタッドレスタイヤが欲しい」、「セカンドカーを売却したい」などなど、顔を出したときにいろいろ持ち込まれるクルマに対する案件に、少々自分の立場を逸脱するケースでも対応することもあったそうだ。ここ最近は個人情報保護の重視やコンプライアンスの強化などもあり、セールススタッフの活動範囲は狭まっており、御用聞きというような立ち振る舞いはなかなかできなくなっている。
  むかしむかしの新車販売の世界では、セールススタッフが仕事で使うクルマに積載するマストアイテムが「ブースターケーブル」であった。まだまだロードサービス自体もその存在が限られた時代でもあり、それに加入している人も少なく、バッテリーが上がると担当セールススタッフに連絡が入るケースも多く、お客のもとへ行き対応していたようだ。新人セールススタッフに対しブースターケーブルは必需品だと教える先輩も多かったようだ。
  そのほか、一部ディーラーオプションなど用品の装着についても相談にのっていたと聞く。これもいまでは不可能なケースがほとんどだが、ユーザーがカー用品量販店で購入した汎用製品を、正規手続きをせずにセールススタッフ本人がメカニックへお小遣いを払って、非正規で装着することもよくあったそうだ。ユーザーも正規手続きを経ていないことは承知しているので、取り付け作業に対するリスクは承知していた。
  新車納車時には純正カーオーディオは汎用品に比べ配線が簡単だったので、社員割引きで製品を購入し、自分で取り付けることで製品に対する値引きと取り付け工賃の節約を行うセールススタッフもいた。サイドバイザーなどニーズの多いディーラーオプションの装着は、昔のセールススタッフの多くは、その装着方法をマスターしていたとも聞いている。
今では自身の利益のために問題行動に走るスタッフも
  また、下取り車もいまほど自分の会社に入庫するのではなく、セールススタッフのネットワークを駆使して高値で処分していたというのもよく聞いた話である。あるセールススタッフをリタイアした人は、「新人のころ、夜遅く上司に内密で同行して欲しいと言われたことがあります。すると、他メーカーのクルマを運転して自分のあとをついてきて欲しいというのです。そして人気のない田んぼの真ん中の道路わきに鍵をつけたままに放置して帰ってきました(知り合いの業者へ転売するため)。なんか怪しいものの取引のようでワクワクしたのを覚えています。帰る途中にご馳走を食べさせてくれたのも覚えています」と話してくれた。
  いまでは運輸支局への勝手な出入りを禁じているケースが多いとも聞くが、過去にはセールススタッフがお得意様に代わって名義変更手続きや、県税事務所へ行き滞納していた自動車税を本人に代わってお金を預かり納税するなどもしていたそうだ。つまり、セールススタッフはサラリーマンでありながら、かなり顧客のために自由に判断し、そして勝手に動きまわっていたのである。顧客のために動くのならまだ許されるかもしれないが、結局、何か悪だくみがあって動くことも少なくなかったので、いまではセールススタッフの活動範囲はかなり制限されるようになっている。
  最近でも、いま世間をにぎわせている大手買い取り&中古車販売店へ、会社に黙って下取り予定車を個人的に転売し、売却額の一部を中抜きしてお客に渡していたメーカー系正規ディーラーセールススタッフが結構の数いたというので、いまの時代はよほど長い間の付き合いを経た信頼関係がない限りは、セールススタッフに一任するのはリスクしかないようにも見える。
「お客さまのために」と多くのセールススタッフが勝手に動いていたときといまの最大の違いは、セールススタッフの置かれている立場の違いも大きいだろう。それこそ自由に動けていたころは、新車販売についての台当たり利益、つまりセールスマージンがいまより大きかった。エアコンやオーディオがオプション扱いだった頃でも、これらは確実にオプション装着してもらえるので、それに対するマージンが支払われていた。
  そんなこともあり、ベテランならセールスマージンだけで1カ月生活できたとも聞いたことがある。しかし、いまではカーナビすらディーラーオプションがなくなろうとしている時代。マージン支給についても複雑な条件が提示されるようになり、その額も少なめとなっている。そうなると、悪いことばかり考えてしまう人が出てくるのは人の性ともいえるかもしれない。
  ただ、前述した大手買い取り&中古車販売店では、倫理的な問題や就労環境は別としても高額報酬は約束されていた様子。しかし、報道を見ている限りはお客のことを思ってというよりは、自分たちのために問題行為を行いながら高額報酬を維持していたようにも見えるので、一概に語ることも難しいのかもしれない。
  問題行動を起こすのは当事者の倫理観や順法意識に主要原因があるのは間違いない。ただ、そのようになってしまった背景には、いまの日本の世の中には広範囲に余裕がなくなってきていることもあるのではないかと筆者は考えさせられた。

あわせて読みたい

【ビジネス用語クイズ】「マージン」の意味は?社会人なら知っておきたい言葉!
mamagirl
\ニーズ拡大中/潜在看護師さんの現場復帰を後押しする『看護師の復職をサポート!ここが変わった!看護技術30選』が2月18日に発売!
PR TIMES
東京ばな奈×ドクターイエロー!東京土産にぴったりなオリジナルデザインのエコバッグ登場
PR TIMES Topics
最近純正装着が増えているアジアンタイヤってどうなの?! 装着後1年経過したリアルなレビュー
CARSMEET WEB
事故修復歴の無い中古車をリーズナブルな価格でオンライン販売する「OutletCars」をオープン
ラブすぽ
フルーツや野菜の自然の甘みを活かしたスムージー2種発売
PR TIMES Topics
新車・中古車対象「マットモーターサイクルズ・ライダースローン」提供開始
PR TIMES
「レンタカーのカーナビを信じたら終わった…」旅先でハマる高速道路の「2つの落とし穴」
ダイヤモンド・オンライン
レモンピールとバターの香り豊かな「ウィークエンドシトロン」販売開始
PR TIMES Topics
「中古のレクサス」買っているのはどんな人か?
東洋経済オンライン
ロータス、SKY GROUP とのディーラー業務契約締結を発表!新たなパートナーシップのもとイメージ/サービスともに強化を図る
CARSMEET WEB
まるで花束みたい!「母の日限定オリジナルバウムクーヘン」
PR TIMES Topics
バレたら追徴課税!?超富裕層が100億円の株を30億円で相続する「合法だが危険な方法」【現役プライベートバンカーが明かす】
ダイヤモンド・オンライン
新体制、商品戦略……、今後の日産は? メカニックの視点では?
ニッポン放送 NEWS ONLINE
超富裕層が「信頼できない人間」を見抜く方法が残酷すぎて涙目になる【プライベートバンカーが明かす】
ダイヤモンド・オンライン
ネット証券をかたる詐欺が急増!資産を守るには
東洋経済オンライン
「KUMHO ECSTA HS52」の“ハイバランス”を味わう[クルマも道も選ばぬ万能タイヤ 「KUMHO ECSTA HS52」を試す<AD>]
webCG
〈ビッグモーター事件〉「これは変です」と言えない組織体制が招いた大規模な不正事件…本当に有意義な会議は“アレ”が言える会議
集英社オンライン