この記事をまとめると
■フォルクスワーゲン・ゴルフにはスポーティグレードとして「GTI」と「R」が存在する
■ホットハッチの楽しさを持つ「GTI」とゴルフの皮を被ったスポーツカーの「R」というイメージ
■本記事では両車の違いを明らかにしている
ゴルフをスポーティに仕立てた「GTI」と「R」
世界のコンパクトカーのベンチマークであり続けるのがフォルクスワーゲン・ゴルフだ。欧州のコンパクトカーはもちろん、日本のコンパクトカー、さらにはミニバンでさえ、ゴルフをベンチマークにしているほどだ(国産自動車メーカーの話によるとゴルフVII)。
そんなゴルフももう8代目になるが、ラインアップは豊富だ。ベースグレードのゴルフにはマイルドハイブリッドの1リッターTSIターボ、1.5リッターTSIターボ、2リッターTDIターボエンジンが揃い、その上位に「ホットハッチ」というジャンルを築き上げたスポーティハッチバックモデルの、2リッターターボエンジンを積むGTIがあり、さらに「ゴルフの皮を被ったスポーツカー」と称される、2リッターターボ、320馬力を発揮するゴルフRが君臨する。また、ゴルフR20周年を記念したゴルフR 20Yearsは335馬力までチューンナップされたR歴代最強のスペック、パフォーマンスを見せつける。
ここでは、実用的なスポーツモデルを望むユーザーにとって、羨望のゴルフGTIとゴルフRの違いについて解説したい。
まずは価格だ。GTIはベースモデルで514.4万円~。純正ナビのDiscover Pro付が535.3万円~。純正ナビのDiscover Pro+テクノロジーパッケージ付きの555.1万円~のほか、最上級の純正ナビのDiscover Pro+テクノロジーパッケージ+レザーシート仕様ともなれば634.3万円に達する。Rはベースモデルで677.2万円~。DCC、19インチアルミホイール付きで700.3万円~。R 20Yearsともなれば792.8万円~ものプライスタグをつける。
パワーユニットはともに2リッターターボながら、チューンが異なり、GTIは245馬力、37.7kg-m、Rは320~335馬力、42.8kg-mと、R 20Yearsの例を挙げれば、0-100km/h加速4.6秒(※Rは4.7秒)という高性能スポーツカーそのものの加速性能を持つRが圧倒する。
しかし、両車の大きな違いは、モデルラインアップにあると思う。GTIはホットハッチの代名詞だけに、歴代、5ドアのハッチバックボディのみ。シートは伝統のチェック柄を、いまではちょっぴり大人っぽく仕上げたものを使い続けている。ちなみにスペックは、多少だが、Rに遠慮した数値になっているのかも知れない。そして駆動方式は歴代、前輪駆動のFFである。
一方、Rはハッチバックだけでなく、標準型ゴルフでの人気のヴァリアント=ステーションワゴンのふたつのボディを用意しているのが特徴で、なおかつ駆動方式は強大なパワー、トルクを確実に路面に伝えるため、VWでは4MOTIONと呼ばれるフルタイム四輪駆動のみとなっているのだ。
それは発進加速でのパフォーマンスにも大きく影響し、FFのGTIだと前輪の空転に配慮した出力特性になるところを(最新モデルは電子制御LSDによってトラクション性能は劇的に進化しているからご安心を)、発進加速から文句なしの瞬発力、快音を放つ刺激十分な加速力を前輪の空転なしに発揮してくれるというわけだ。
また、Rにはレースモード、VW日本初採用のニュルでのタイムをかせぐためのドリフトモード(R 20Years)といった、かなり本格的なドライブモードも設定されているのである(GTIはゴルフの標準モデル同様のアダプティブシャシーコントロールDCCとしてエコ/コンフォート/スポーツ/カスタムの4モード)。
スポーティグレードでも日常使いができる乗り味!
と、本来、コンパクトカーの定番とも言えるゴルフのハイスペックなモデルとなるGTIとRだから、乗り心地はかなりハードなのか? と思いがちだが、さにあらず。GTIはライバルとくらべ、かなり大人っぽい乗り味が特徴で、快適かつ上質感に溢れたタッチに終始。ファミリーカーとしても十分に通用する商品力がある。
知り合いが、家族からスポーツカーの購入を反対され、ならばVWゴルフにする、と宣言したら、家族からOKが出た。しかし、こっそり買ったのはGTI。本人はそのパフォーマンスに満足しつつ、家族は快適なドイツ製コンパクトカーのキャラクターに納得……という、家族騙し!? のスポーツハッチでもあるのだ。
では、Rになるとガチガチな乗り心地になるのか、と言えば、これまたNOである。確かにスポーツ寄りのモードではスポーツカーそのもののタイトな乗り味にはなるものの(パフォーマンスを考えれば当然だ)、一転、コンフォートモードにセットすれば、高性能を味わいつつ、日常域で不満のない快適な乗り心地を提供してくれるのである。このあたりこそ、VWゴルフの立ち位置、本領発揮と言える部分ではないだろうか。
しかも、Rならヴァリアントも選択でき、大きな荷物を積みつつ快速で移動できるオールラウンダーな、ほぼクラス唯一のキャラクター=超本格スポーツワゴンが手に入ることになる。
ただ、一般論として、日本の路上で使ううえでは、パフォーマンス的にはGTIで十分以上という印象だ。派手過ぎず後席やラゲッジルームの実用性に富む超高性能スポーツカーを望み、なおかつワゴンボディが必要であるなら、R ヴァリアントの選択が大きな意味を持つ。
2シーター、2+2シーターのドイツ製高性能スポーツカーの所有者が、家族とのドライブ用にゴルフRを愛用している例は少なくないそうだ。それがR ヴァリアントなら、アウトドアも楽しむ理想的な、スポーツカーファミリーの2台持ちになると思える。運転がそれほど得意じゃない奥様や娘だって無理なく運転できるサイズ、取りまわし性の良ささえ備えているのだから。
ゴルフVIIのヴァリアント ハイライン(COXのローダウンサスとパフォーマンスダンパー付き)に乗り続け、現在も満足している筆者としては、次期愛車もゴルフヴァリアントにするつもりだが、個人的な話として、GTI程度のスペック、価格のGTIヴァリアントがあれば理想的だ。もっとも、元祖ホットハッチのGTIにヴァリアントが加わることは絶対にないはずだけど……。
ちなみに標準型ゴルフ、ゴルフヴァリアントにR-Lineというグレードがあるが、それは標準型ゴルフのスポーティドレスアップバージョンであり、パフォーマンスは標準型ゴルフと変わるところはない。ゴルフRとは別物である。