本格オフローダー、ラングラーのPHEVが4xe(フォーバイイー)。最も能力に長け、現代に適した仕様だと英国編集部は評価します。
現代に最も適したラングラーの4xe
ジープ・ラングラーは、大自然を愛する人へ向けた理想的なオフローダーだ。丘陵地帯を駆け巡ったり、広大な海辺を流すのに、これ以上適したクルマはないと思う。そして今回試乗したプラグイン・ハイブリッドの4xeは、現代に最も適した仕様だろう。
普段の通勤は、駆動用バッテリーに蓄えた電力で賄える。より遠くを目指す週末には、充分なパワーを発揮する内燃エンジンが活躍してくれる。だが何より、電気の力だけでオフロードを走る新鮮さが素晴らしい。
【画像】現ラインナップ1番の能力 ジープ・ラングラー 4xe 競合クラスのオフローダーと比較 全135枚
通常のラングラーと同様に、ドアとルーフは比較的簡単に取り外せる。駆動用モーターの静かな回転音と、タイヤが地面を蹴るノイズだけで悪路へ立ち向かうと、内燃エンジンで走る時以上に没入した体験になる。自然が奏でる音を楽しみながら。
既に、この魅力へ少なくない人が気付いている。北米市場では、ジープ・ラングラーの販売数の35%を4xeが占めるそうだ。2023年末には、50%までその割合が高まると予想されている。
プラグイン・ハイブリッドのシステムは、少々複雑。ボンネット内に収まるのは、一般的な2.0L 4気筒ガソリン・ターボエンジンで、最高出力は273psを発揮する。
電気モーターは2基搭載し、1つ目はエンジン側へ追加されたスターター・ジェネレーター(ISG)。39psと6.0kg-mの能力を持ち、一般的なマイルド・ハイブリッドと同様に、エンジンが低回転域にある時にトルクをプラスしてくれる。
現ラインナップで最も能力が高い
2基目は、8速ATのマルチプレート・クラッチとギアの間に内蔵された駆動用モーター。136psと充分なパワーを備え、エレクトリック・モード時は、エンジンを回さずに2369kgあるラングラーを進めることができる。
ISGを備える理由は、メインの駆動用モーターがクラッチより後ろにあるため。エンジンが掛かっている状態なら、ISGは駆動用バッテリーを充電できる。一方の駆動用モーターは、ニュートラルが選ばれない限り、単独で回転はできないのだ。
ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン 4xe(欧州仕様)
さらに面白いのが、内燃エンジンで走るのと同様に、駆動用モーターでの走行時も8速ATを介することになる点。ジープが長年培ってきた四輪駆動システムを、従来どおり利用することを可能にしている。ローレシオのトランスファーも、ロッキングデフも。
4xeならではといえるのが、電気モーターらしいシームレスさ。極めて低速で走る場面でも、クラッチを滑らせたりする必要はない。ダイレクトな反応で、回転直後から24.9kg-mのトルクをタイヤへ伝えることが可能。スピードの調整も遥かに簡単だ。
一度の充電で最長33km走れる、駆動用バッテリーの容量は11.7kWh。車重はプラグイン・ハイブリッドではない2.0Lエンジンを積んだラングラーより、約360kg重い。
ぬかるんだ路面では、足を取られやすい可能性もある。それでも、ジープは現在のモデルラインナップのなかで、最も能力が高いと考えている。
実際に運転すれば夢中になれる楽しさ
実際にステアリングホイールを握れば、ラングラー 4xeの楽しさへ夢中になれる。今回のスペインでの試乗は短時間で、小川や草地程度の場所しか走らなかったが、スタックするような素振りは微塵も見せなかった。
エレクトリック・モードの走行可能距離が不安なら、内燃エンジンと協働するハイブリッド・モードがベター。駆動用バッテリーは徐々に消耗していく。市街地や目的の悪路まで駆動用バッテリーを温存する、E-セーブ・モードも選択できる。
ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン 4xe(欧州仕様)
パワートレイン以外、4xeは基本的に従来のラングラーと変わりない。若干落ち着きに欠ける乗り心地や、プレミアム感には乏しい実用主義のインテリアなどは、ジープらしいままだ。
車内の人間工学的には優れており、快適な運転姿勢を取れる。オールドスクールな、クルマを運転している、という実直な感覚がうれしい。
ちなみに、比較的大きな駆動用バッテリーをリアアクスルの直前に搭載するため、ショートボディのラングラーには4xeの設定はない。
電動化技術を実際の強みとして展開
大型SUVでプラグイン・ハイブリッドを選べる例は少なくないが、こんな印象を抱けるモデルは他に例がないだろう。ジープ・ラングラー 4xeは、電動化技術を実際の強みとして展開できている。そこから得られる体験も、特別なものといえる。
ただし、非常に残念な事実なのだが、今のところラングラーの4xeは英国で正規販売される予定がない。またハイブリッド・システムの位置的に、右ハンドルにするとステアリングコラムが干渉するため、左ハンドル専用でもある。
ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン 4xe(欧州仕様)
ジープは、輸入代理店へ導入を検討するよう要望を出しているとのこと。少なくとも筆者の場合は、左ハンドルでも気にしない。
最も高性能なオフローダーの1台といえる、ジープ・ラングラー。そのベストなプラグイン・ハイブリッド仕様が、グレートブリテン島へ上陸できることを期待したい。日本では、既に販売が始まっている。
ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン 4xe(欧州仕様)のスペック
北米価格:6万1080ドル(約843万円)から
全長:4882mm
全幅:1894mm
全高:1848mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:6.0秒
燃費:17.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2369kg
パワートレイン:直列4気筒1995ccターボチャージャー+電気モーター+ISG
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:17.3kWh
最高出力:380ps/5250rpm(システム総合)
最大トルク:64.8kg-m/3000rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック
記事に関わった人々
執筆:マット・プライヤー
英国編集部エディター・アト・ラージ
翻訳:中嶋健治
1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。
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