失速したクラウンを復活させる壮大な計画! 4車種投入と登場順序に隠れた巧妙な狙いとは

2022.11.26 13:00
この記事をまとめると
■トヨタから新型クラウンが登場
■SUVを含む4つのタイプをラインアップ
■その理由は今後もクラウンを存続させるため
全店全車取り扱いは不人気車のリストラ
  従来のクラウンは、日本を中心に売られるセダンだったが、新型クラウンクロスオーバーは、海外でも販売できるSUVになった。大幅な路線変更を行った目的は「クラウンを廃止せずに存続させること」だ。
  クラウンの登録台数は、1990年は1カ月平均が1万7300台だったが、2021年は約1800台であった。約10%まで減っている。そうなるとコロナ(終了時はプレミオ)やマークII(マークX)と同じように、クラウンを廃止する方法もあった。
  そしてトヨタの国内販売は、2020年に、全店が全車を扱う体制へ移行している。これは残酷な「不人気車排除装置」だ。たとえばかつてのクラウンは、専売店舗のトヨタ店が大切に販売した。クラウンのユーザーが「アルファードに乗り替えようか」と言っても、好条件を提示してこれを阻止した。クラウンからアルファードへ乗り替えると、トヨタ店の顧客をトヨペット店に奪われるからだ。
  しかし全店が全車を扱う今は、トヨタ店でアルファードを普通に販売できる。もはやクラウンからアルファードへの乗り替えを防ぐ必要はない。このように全店が全車を扱うと、アルファードのような販売の好調な車種は売れ行きを一層伸ばし、不人気車はさらに落ち込んで、車種の廃止に追い込まれる。
  この全店が全車を売ることによる非情な掟を、トヨタは十分に承知していた。取り扱い車種から販売店まで、国内販売を総合的にリストラするために、全店が全車を扱う販売体制に踏み切った。
それでもトヨタはクラウンを残したかった
  それなのにクラウンは、1955年に初代モデルを投入したトヨタの基幹車種だから、今後も残したいと判断された。全店が全車を扱う販売体制に移行しながら、クラウンには情けを抱き、大きな矛盾を生み出した。
  その結果、トヨタが支払った代償も大きく、クラウンに4種類のボディを用意した。かつてマークXは、ミニバンの人気が高かった時代にマークXジオという3列シート車を加えて登録台数の上乗せを図ったが、失敗してマークX自体が消滅した。1〜2車種では、クラウンが販売不振から抜け出せない心配もあり、4車種が必要だった。
  そこでクラウンを海外でも販売できる売れ筋カテゴリーのSUVに発展させ、なおかつ4車種を用意してシリーズ化したわけだ。4車種を合計してクラウンの生産/登録台数を算出すれば、相当な台数になる。クラウンを絶対に廃止させない万全の体制を敷いた。
  そして2022年7月に発表された第1弾がクラウンクロスオーバーだ。外観はSUV風だが、ボディの形状は、後部に独立したトランクスペースを備えたセダンになる。
  今後はボディの短いSUVのクラウンスポーツ、車内が広く3列シート仕様も用意するクラウンエステート、ほかのクラウンシリーズとは異なり、従来と同じ後輪駆動のプラットフォームを備えるクラウンセダンも発売する。クラウンセダンは、従来型で豊富だった法人需要を受け継ぐことが主な目的だ。
  この4車のなかでもっとも多く売られるのはエステートだが、これを最初に発売すると、セダンだった従来型との格差が大きすぎる。だからといってセダンが最初では、クラウンの変化を表現できない。そこで新旧クラウンの橋渡しをするために、セダンボディのSUVというクラウンクロスオーバーを最初に投入した。クラウンを廃止せずに今後も存続させるため、壮大なプロジェクトがスタートした。

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