【試乗】アルティメットの言葉に偽りなしの衝撃の速さ! 中谷明彦がシビックタイプRをサーキットで全開走行

2022.10.04 10:00
この記事をまとめると
■中谷明彦さんが鈴鹿サーキットで新型ホンダ・シビックタイプRに試乗した
■先導車付きのカルガモ走行でラップタイムは2分30秒台を記録
■新型シビックタイプRはFFアルティメットスポーツとしての完成度を大幅に高めていた
鈴鹿サーキットにて新型シビックタイプR初試乗
  新型シビック「タイプR」に、いよいよ試乗する機会がめぐってきた。しかも試乗ステージは鈴鹿サーキットのフルコースである。試乗案内にはヘルメットやレーシングスーツ、グローブなどのアイテムを携行するよう書かれていて、 かなり本格的な走りを堪能させてもらえそうだ。と言うことで、3年ぶりの開催となる鈴鹿F1グランプリ会場となる鈴鹿サーキットへと出かけた。
  会場に用意されていたのはタイプR専用色であるグランプリホワイトに彩られた6台の新型シビックタイプRである。3台ずつ2列に並べられ、その前方には イエローの従来型シビックタイプRリミテッドエディションが置かれていた。
  どうやらこの従来型シビックタイプRが先導車となり、その後方を3台の新型が追従走行するというリードフォロー形式の試乗会であるようだ。その先導車をドライブするのは伊沢拓也選手と武藤英紀選手。ふたりはスーパーフォーミュラやスーパーGTでホンダのワークスカーを駆って活躍する現役の実力者だ。また、ホンダのテストドライバーで、スーパー耐久に参戦する木立純一氏も名を連ねている。これは相当速いペースで走らせることが期待できそうだ。
  早速マシンに乗り込む。新型は先代モデルに比べて全長が35mm長くなった。従来型も新型も5ドアのハッチバックというシビックと同様の車体形式を継承しているのだが、従来モデル以上にセダン的なルックスを備えた伸びやかな全長が新型タイプRをやや大きく感じさせる。グラマラスなリヤフェンダーはドアパネルを専用に形を起こし、またフェンダーアーチも大きく張り出させて全幅を15mm拡幅させている。一方で、スラントしたノーズからなだらかに続くルーフは低く、全高はマイナス30mmとなった。地をはうようなスポーティセダン的ルックスを備えていると言えるのである。
  またホイールベースは35mm長くなり、従来車ではリヤのタイヤの接地性に不安が感じられたのだが、そうした部分の改善を期待できる。全幅は15mmの拡幅だがトレッドベースとタイヤのサイズアップの相乗効果でフロントトレッドは+25mm、リヤも+20mmと大幅な拡大が図られているのだ。これによってワイド&ローのプロポーションが強調され、また前後に備える空力パーツも効果的にデザインされていて、高い走りの実力を備えている雰囲気を漂わせる。
  歴代モデルで使われてきた赤いセミバケットシートが乗り込んだ瞬間鮮やかに目に映り、またフロアカーペットもレッドで統一。一方でダッシュボードやセンターコンソールは黒に統一され、タイプRの伝統的なカラーコーディネーションが引き継がれている。
  すでに暖気が済まされていてエンジンは始動状態だ。ドライバーの眼前にあるメーターはサーキットのレーシング走行にふさわしい表示になっている。これはエコ、ノーマル、スポーツ、インディビデュアルとあるドライブモードのさらに上にある+Rモードを設定すると現れる表示機能で、サーキットは+Rモードで走って欲しいと言うエンジニアリングサイドの意気込みがうかがえるのである。
  センターダッシュボードのセンターモニターには前後左右4輪のタイヤ摩擦円にGメーターを組み込ませた新しい表示方法が採用され、タイヤの接地性を視覚的に見せている。ページ画面を左右にスワイプさせてほかのページを開くと、エンジンの油温や水温、ターボチャージャーの過給圧などクルマのコンディションをグラフィックで見せてくれるページもある。さらにページをめくって行くとラップタイム画面表示となり、サーキットでの毎ラップを走りながら知ることができるのだ。
  サーキットモードを選ぶと日本全国にある約13カ所の指定されたサーキットであればGPSによるジオフェンス機能で自動的に速度リミッターが解除され、性能を最大限に発揮することができる。また、自身のスマホに専用アプリをダウンロードして自分のスマートフォンで撮影した走行画面をリンクさせてロガーデータとともに表示させたり、クラウド上にアップロードして世界中のタイプRオーナーとそのタイムと走行データを競ったり比較したりすることができるサービスも付加されていると言う。
  ドライビングポジションを合わせる。足もとにはしっかりとしたフットレストが備わり、アルミの輝くスリーペダルが印象的でステアリングの正面にしっかりとしたポジションを決めることができた。
  シフトはHパターンの6速だが、ショートストロークで操作性に優れ、ゲート感がきっちりとわかりやすくなっている。
  さぁ、いよいよ伊沢選手がクルマを走らせ、そのあとに連なってのカルガモ走行が始まる。
  F1鈴鹿グランプリ開催準備の関係で今回は西コースのパドックが使用された。パドックは西バックストレートの中程にある。かつてアイルトン・セナがホンダNSXに試乗したときも、この西コースのパドックから走り始め、そのときに立ち会ったことがある。
FFセダン型市販モデルとしては極めて高い戦闘力を実現
  コースインすると、すぐに路面に吸い付くような安定感と接地性の良さが感じられた。市販状態ではミシュラン・パイロットスポーツ4SがタイプR専用に開発され装着されているが、今回はオプション設定される同じミシュランの「カップ2」タイヤ、いわゆるサーキット走行用のセミレーシングタイヤが装着されている。そのグリップ感はまだ走り始めて間もない冷間状態であるにもかかわらず極めて高い。
  西パドックからコースインすると、最初のコーナーが高速の130Rとなり、その時点で時速100キロを超える速度に達していても四輪の接地感は失われず、さらにステアリングの正確なライントレース性、またキックバック入力の少なさ、ボディの剛性感やサスペンションのしっかりとした剛性の高さなどを感じ取ることができる。これは思い切り攻めていけばかなり速そうだ。
  先導車は徐々に速度を上げホームストレートでは時速200キロをオーバーし時速220キロ近くまで速度を上げた。ここでブレーキングを開始すると4輪のブレーキがたちどころに制動力を発揮し、安定感を持ちながら確実な減速をすることができる。従来のFFモデルではなかなか引き出せなかった4輪ブレーキの実効性能が伝わってくるのである。走行後の計測では4輪とも摂氏350度の温度となっており、バランスの良い接地が制動時にも発揮されていたことがうかがえる。
  エンジンは7000回転まで吹き上がり、各ギヤが小気味よくシフトで決まっていく。レブインジケーターはまるでレーシングカーのような表示機能となって点滅し、7000回転でシフトを促す。自分流の「マシンガンシフト」も試してみたが、まったくストレスなくまるで吸い込まれるように次のギヤへとエンゲージされた。見事なシフトフィールだ。
  また、ブレーキングにおいては通常シフトダウンを行う際にヒール&トーを駆使しながら回転を合わせシフト操作するが、タイプRはレブマッチシステムで自動ヒール&トーシステムが備わっていてドライバーはヒール&トーを使うことなく変速操作ができる。レブマッチシステムは今回さらに進化して2速から1速へのシフトダウンも可能となっていて、 その際もまったくギヤ鳴りを起こすことなく、エンジンのオーバーレブもすることなく確実にシフトダウン操作ができるようになっていた。
  ただ、ドライビングの癖としてサーキット走行でシフトダウンする際には足もとが無意識のうちにヒール&トーを行っていて、このレブマッチシステムを使ったり使わなかったりの走行になった。ヒール&トーをドライバー自ら使ってもシャープに吹き上がるエンジンのブリッピング特性により、回転を合わせるのは容易であった。これには軽量化されたフライホイールの効果が大きく作用していると思われる。従来モデルよりも18%も軽量化され、回転時の回転モーメントはマイナス25%となっていて、エンジンの回転の吹き上がりや回転変動においてレスポンスの良い反応を期待することができる。
  コーナーの立ち上がりで加速するシーンにおいては、ターボ過給による420Nmという高トルクが発揮される。ターボチャージャーを新設計したシングルストロークのターボながら、ターボの羽形状を最適化することによって非常に低コストでこの高性能化が実現されたと言う。そうしたノウハウはF1エンジンを生み出すHRCのノウハウが多分に注ぎ込まれていると言って良いだろう。
  世界に目を向ければ2リッターターボでは420馬力を超えているAMGのエンジンなども存在しているが、ホンダのこの新型タイプRは、国産モデルとしてはもちろん、従来の中で1番パワフルでありトルクも最大値となっている。
  鈴鹿サーキットでは直線でも車速をぐいぐい高めていき、バックストレートではメーターから時速221キロの最高速を読み取ることができた。その際も強力なダウンフォースにより車体が地面に押さえつけられる感覚が得られ、安定感が高い。難しい高速コーナーとして知られる130Rへのアプローチもブレーキングとシフトダウンで車体をさらに安定化させることができ、スムースで速くクリアすることができる。130R旋回中の速度は時速170キロオーバーで、これはFFセダン型市販モデルとしては極めて速いスピードと言って良いだろう。
  今回、デュアルピニオンの電制パワーステアリングが装備されたことでステアリングの応答性は常にリニアで剛性感も高く、また操舵力は軽く適切な補舵力が発揮されていて、サーキットを走るにふさわしい味付けとなっている。
  また、デュアルアクシスストラットのフロントサスペンションは、高い剛性と理想的なアライメント変化、ジオメトリー変化を可能とし、パワーをかけているときも路面をとらえて離さない。ヘアピンコーナーから立ち上がりなど、フルパワーをかけた加速においても、従来モデルではトルクステアが出て車体が横方向に流れたりアンダーステアを示したりしていたが、今回そうした挙動はまったくと言っていいほど姿を表さなかった。コーナーへの減速侵入から立ち上がり加速領域におけるまでライントレース性とコントロール性が安定感のもとに維持され、「このクルマは速いぞ!」と実感させるに十分な乗り味であった。
  2周、3周、そして5周とラップを重ねピットへ一旦戻る。次の回はタイムアタックベースで走るように伊沢選手に無理をお願いし走行してもらった。タイムアタックモードになると、ブレーキバランスの良さがさらに際立ち、高速から侵入する第一コーナーにおいてもリヤがまったくスライドすることなく安定した減速Gを得ることができた。
  また、フロントバンパーに設けられたブレーキ冷却ダクトが高まった前輪ブレーキを効率よく冷却することで4輪のブレーキ温度を常に一定に保てるようにうまくコントロール制御されていると言うことができる。こうした空気の流れはダウンフォースや冷却に大きく貢献しており、クルマの安定性をより高めている。
  さすがにトータル20ラップもするとタイヤのほうが根を上げてくるが、グリップダウンした状態でもラップタイムは2分30秒でノーマル市販モデルとしては圧倒的な速さを軽々とマークして見せてくれた。メーカーの社内実験ではよりコンディションの良い時にタイヤウォーマーなどを使って2分23秒台のタイムが引き出せていると言うのも頷ける。
  このミシュランカップタイヤで2分23秒が出ると言うことは、もしスリックタイヤを装着すればさらに5秒ほどタイムアップし、それはポルシェ911などでもなかなか出せないような速いタイム領域に突入することになる。
  今回のシビックタイプRはタイプRとしての本質を磨き上げると言うこと、そして官能性を高めドライバーに感動を与えることを目標としているが、それは見事に達成されていると言えるだろう。
  1964年にホンダが初めて自動車を作るメーカーになったときにいきなりF1にチャレンジして世界を驚かせた。しかもその1年後にメキシコグランプリでF1初優勝を飾るなど、ホンダのチャレンジスピリットを世界に見せつけた。
  鈴鹿を走ることによってそのチャレンジングスピリットが脈々と受け継がれ、今回の新型シビックタイプRもアルティメットFFスポーツとして、完成度を高めて登場させられたと言うことを改めて確認することができた。

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