1年半の検討を経て実現。三井住友カードとコンカーの戦略的業務提携第4弾の開発ストーリー

2022.09.30 11:00
(写真左から、(株)コンカー プログラム&オペレーション部 マネージャー 首藤氏、三井住友カード(株)法人決済ビジネス部 部長代理 森田氏・井上氏)


三井住友カード株式会社は、株式会社コンカーとの戦略業務提携の第4弾として、「新幹線区間情報の自動連携」を2022年8月末より開始しました。本システムを利用することにより、従業員は経費精算における入力作業を、経理担当者は情報の正誤チェック作業をなくすことができます。
2020年9月に戦略的業務提携を発表した同社は、「キャッシュレス」「入力レス」「ペーパーレス」「承認レス」の4つのレスにより、経費精算分野におけるDX推進をサポートすべく、これまでに第1〜第4弾までの取り組みを発表し、双方の強みを活かしたサービスを開発し続けてきました。


今回はリリースしたばかりである、「新幹線区間情報の自動連携システム」の開発に至った経緯とその裏側を、三井住友カード株式会社の法人決済ビジネス部・森田氏と井上氏、そして株式会社コンカーのプログラム&オペレーション部・マネージャーである首藤氏 に伺いました。
経費精算における4つのレスを目指して。業務提携を結んだ両社の思い
ーー2020年9月に戦略的業務提携を発表してから、第1〜第3弾までサービスを開発・発表していますが、それぞれどのような取り組みだったのでしょうか。
森田:弊社とコンカーさんは2019年に業務提携を結び、「キャッシュレス」「入力レス」「ペーパーレス」「承認レス」の4つのレスによる経費精算業務の完全自動化を目指しています。


その第1弾として開発したのは、三井住友カードの法人カードで決済したETCの出入り口情報を「Concur Expense(※)」へ連携するシステムです。これにより、社用車で発生した経費の事後申請の入力レスと、経理担当者の突合業務の削減を実現しました。


※株式会社コンカーが提供する、企業の経費精算・経費管理の高度化と従業員の働き方改革を支援するクラウドサービス


続いて第2弾では、国内のタクシーや飛行機の利用情報を「Concur Expense」へ連携させました。特に、タクシーは小額で利用頻度が高いので、どうしても経費精算業務の件数が多くなってしまいます。事後申請の際、従業員は乗降情報を手入力していましたが、第2弾の開発で三井住友カードが提供する「VJタクシーチケット 」の利用区間を電子データで渡せるようになり、本作業を削減しました。経理担当者もデータの精査が楽になるということで、従業員・経理担当者どちらにとっても便利なサービスになっているかと思います。


そして、第3弾では電子帳簿保存法の改正に対応した、利用先店舗の精緻化を実施しました。開発の背景としては、紙の請求書や領収書の代わりに法人カードで決済した際の電子データを「Concur Expense」で保存する企業様が増えたことが関係しています。国税庁が定める要件を満たす開発を行い、帳簿として使えるように整備を行いました。




ーーそして今回の「新幹線区間情報の自動連携」で第4弾となりますが、これまでの戦略的業務提携には具体的にどのような狙いがあるのでしょうか。


首藤:停滞している日本のDXを経費精算の分野から加速させるというのが、戦略的業務提携の出発点になっています。


当初、我々コンカーとしては、一社と深い関係を築いてプロジェクトに取り組むという考えはありませんでした。しかし、自社の力だけでプロダクトの開発や浸透を進めるには、一部限界のようなものも正直感じていました。


そのような話を三井住友カードさんとしていくなかで、これはもう両社がきちんとコミットして開発を進めていく必要があるだろうと。結果、2019年に戦略的業務提携を結んでから、三井住友カードさんのご助力のおかげで、お客様に対して価値のある情報をお返しできるようになってきたと感じています。


ーー三井住友カード社はいかがでしょうか。


森田:我々三井住友カードとしては、従来この経費精算業務を合理化して、本来はやらなくても良い作業を徹底的になくしたいと考えています。


しかし、弊社はカード会社なので、経費精算業務のワークフローの中でお客様に対してできることは非常に限られています。立替払いや現金精算をなくし、かつ利用した経費をデータにすることで可視化することで、精算事務の一部合理化や経費の見える化によるガバナンス強化を図ることができます。しかし、経費精算システムそのものを提供しているわけではなく、限界がありました。


一方で、コンカーさんは経費精算のワークフローを合理化するシステムは持っているけれど、金融事業者ではないので決済の部分には踏み込むことができないという状態でした。


ただ、両社とも経費精算における不要な作業をなくしたいという想いは同じであり、お客様の視点に立ったときに、各社が別々に行うよりは2社が協力した方が良いのではないかと。そこから、お互いの強みを融合して、日本の経費精算業務を抜本的に変えようということで、業務提携に至りました。


第1弾から今回の第4弾まで開発が進んでいますが、徐々に効果が出てきているのではないかと思っています。
1年半検討を続けて実現した「新幹線区間情報の自動連携」
ーー第4弾として開発された「新幹線区間情報の自動連携」はどのようなプロダクトなのでしょうか。
井上:「JR東海エクスプレス予約サービス」利用による国内の新幹線利用の決済情報を「Concur Expense」に連携させるという機能です。これにより、今まで発生していた乗降区間や乗車日等の情報に係る手入力作業がなくなります。


三井住友カードの「エクスプレスコーポレートカード」を持っていて、かつ「Concur Expense」を導入しているお客様は、JR東海様が管轄する新幹線のご利用が圧倒的に多いんです。国内出張の移動手段として、飛行機やタクシーなどもありますが、その中でもJR東海様で決済される件数は約30万件とかなりの数字です。


利用されている回数が多いということは、出張後の事後申請の際に係る手入力作業が多いということです。出張のたびに従業員は経費精算の入力作業をして、さらに経理担当者は本当にこの情報で合っているのかを精査しなくてはならない。そこにかなり時間を割いているお客様が多いということで、今回自動連携に至りました。


ーー三井住友カードの独自機能とのことですが、システムを新たに開発する点において大変だったことはありますか。
井上:我々三井住友カードにとって非常に新しい取り組みでした。そもそも、お客様が保有する新幹線の付加情報を「Concur Expense」に連動するシステムもサービスもなかったため、サービス設計にとても苦労しました。


森田: 特にお客様の代わりに取得した新幹線に係るデータと三井住友カードの「エクスプレスコーポレートカード」のデータを紐付けするシステムの設計に頭を悩ましました。本機能の新規構築については、新たな挑戦だったのですごく難易度が高かったですね。


ーー実際に開発に着手されてから完成までにかかった期間はどのくらいでしたか。


井上:開発の方向性が決まってから提供するまでは、大体4〜5カ月ほどですね。我々三井住友カードに求められていたのは、ハイスピードでの開発だったので。


ーーなぜ早期開発が重要だったのですか。


森田:「エクスプレスコーポレートカード」を保有するお客様が求めていたというのが一番大きな理由です。経費精算関連のクラウドサービスがすごい勢いで浸透してきていて、もはや法人カードと経費精算システムとのデータ連携は当たり前になってきています。お客様が本サービスに求めるレベルや期待値は年々上がってきているんです。


それは、弊社が実施しているアンケートの結果からもわかっていることで、それならばお客様の期待にお応えするために急いでやろうと。お客様がもっとも手間がかかっている精算作業をなくしたいという思いから、ハイスピードでプロジェクトを立ち上げることになりました。


ーーコンカー社としては、「新幹線区間情報の自動連携」についてどのような想いがありますか。
首藤:私自身がコンカーにジョインしてからずっと要望されていた機能だったので、三井住友カードさんの推進力のおかげでやっと実現できたという思いが強いですね。


森田さんもおっしゃっていましたが、新幹線のデータは利用量が多いため経費として申請する際に申請側の入力の手間と、経理担当者側の確認の手間が大きい。そこの作業負担を軽減できるのは非常に素晴らしいですね。


また、今までは手入力だと例えば「新横浜」を「横浜」と申請してしまうことも多く、名称がバラバラになるためデータとして分析するのが難しいという状況でした。それが今回の開発により、三井住友カードさんが企業様から取得したJR東海様のデータを送っていただけるので、データ分析も可能になります。


例えば、この区間での利用が多いから出張手当てを厚くしようなど、企業側で次の一手を打つことができます。リリースは8月末ですが大きな反響があるのではないかと考えています。
DX推進はまだまだこれから。2社が実現を目指す社会の姿
ーーそれぞれの強みを活かした開発により経費精算のDX推進をサポートしてきたわけですが、現状、日本のDXはどのような状況にあるのでしょうか。
首藤:何がどうなったらDXができたといえるのか、統計があるわけではないので第三者としてのコメントは難しいのですが、弊社としてはようやく始まりに差し掛かっていると考えています。


社内でもよく言っているのですが、経費精算業務に自社のこだわりは正直なところいらないじゃないですか。企業によっては、これまでに培ってきた企業文化があると思いますが、そこを守ることの価値は大きくないですよね。本業に比べて経費精算業務はDXがしやすいということに、市場全体が気付き始めた段階だと思います。


ーー何をきっかけに市場全体が経費精算分野のDX推進がしやすいということに気付いたのでしょうか。


首藤:いくつかターニングポイントはあったと思いますが、一番大きい理由としては電子帳簿保存法の改正ですね。


今まで領収書の保存は原本が必要でしたが、条件を満たせば原本は不要でデジタル化できるなど、段階的に緩和されてきました。一昨年には、カードデータで証憑として認めるという動きもありました。


ーー今後ますます経費精算におけるDXが進んでいきそうですね。最後に、戦略的業務提携を通してどのような社会実現を目指しているのか教えていただけますか。


首藤:弊社は、「経費精算のない世界」をビジョンとして掲げています。今のZ世代が、かつて電話帳を引いて電話をかけていた時代を知らないように、経費精算という業務があったことを知らない世代が出てくる。そんな世界を目指したいと思っています。


ーー三井住友カード社はいかがでしょうか。


森田:我々三井住友カードも、経費精算をなくすことを目指しています。ただ、それでお客様のDXが終わるかといったらそうではなくて、今後は購買時のDXも推進していく必要があると考えています。


サプライヤーから物を買うときに請求書を受け取り、その請求書を社内で経理仕分けをし、最終的には紙で保存している。経費精算とは別に、手間のかかる業務が発生しています。


コンカーさんは購買業務システムを持っており、弊社は購買用のカードを展開しています。次は、購買業務自体もなくすための取り組みも始めていきたいなと。経費精算も購買も経理担当者が作業を行わず、自動的にデータとシステムが解決してくれるような、そんな社会をつくれたら良いなと考えています。




【三井住友カード株式会社 会社概要】


・ミッション:「便利」「安心」「お得」にご利用いただけるキャッシュレス社会の実現
・会社名 :三井住友カード株式会社 (未上場 証券コード:8316)
・所在地 :東京都江東区豊洲二丁目2番31号 SMBC豊洲ビル
・設立 :1967 年 12 月
・代表取締役:大西 幸彦
・企業HP: 
・事業内容 :
-会員事業(

-加盟店事業(

-受託事業(



・公式SNS :
-Twitter(@smcc_card)
-Facebook(



―――――――
プロフィール
森田 健太郎(三井住友カード株式会社・法人決済ビジネス部・部長代理)
2008年、三井住友カード入社。法人営業部門を経て、2014年より法人向け商品・サービスの企画開発を担当。建設業界向けのB2B金融プラットフォーム事業の立上げやビジネスシーンのキャッシュレス・企業のDXを支援する商品開発のプロジェクトリーダー等を経験。2020年8月より、コンカーとの戦略的業務提携に伴い、共同開発商品の開発リーダーに就任し、数多くのプロジェクトを牽引。
井上 祐也(三井住友カード株式会社・法人決済ビジネス部・部長代理)
2012年、三井住友カード入社。SMFGのサイバーセキュリティ部門の立ち上げ、LINE Payとの戦略的提携等を経て、2020年より法人向け新規ソリューションの企画開発を担当し、ビザ・ワールドワイドとの法人決済促進に向けたプロジェクトを推進。今春にリリースした、BPSPを活用した「請求書支払い代行サービス」事業を牽引。
首藤 啓成(株式会社コンカー・プログラム&オペレーション部・マネージャー)
2014年、通信キャリアからコンカーに入社。50社以上のパートナーとの販売、導入、ソリューションビジネスの日本立ち上げを実施。現在はパートナープログラム全般の開発を推進。

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