「福祉業界は激務」のイメージが激変!職員が長く働けるための工夫とは

2020.04.01 00:00
J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

3月2日~3月5日の放送では、「特定非営利活動法人 でっかいそら」が取り組む「働きかた改革」をご紹介しました。

横浜市・瀬谷区に拠点を置く「でっかいそら」は、主に、知的障がいがある方々に福祉サービスを提供する特定非営利活動法人。
2005年に活動を開始し、2008年ごろ、事業を少しずつ広げていこうとしたとき、職員を募集するために考え始めたのが「働きやすい施設」ということでした。
理事長の飯田誠さんは、「何をやっているのかよくわからない団体が職員を集め、働いてもらうために、どんなことをやればいいのか?・・・と考えたのがきっかけ」と語ります。
福祉の仕事といっても、働きやすいのかどうかわからない・・・という中で、「働きやすい施設」だというのを前面に出して職員を募集しようとしたわけです。
最初は利用者4人、職員3人、事業所1か所からスタート。障がいがある子供たちを預かる施設が認知されてきて、これから事業が軌道に乗るかな?と思ったのが2008年だったとのこと。当時は、良い職員にどうやって長く働いてもらうか?がテーマで、「働きやすい施設」がいちばんの課題でした。
現在は25ほどの施設を運営し、250名ほどの職員が働いているということですですが、2008年当時、まずは何から始めたんでしょうか?
「<福祉>というと時間が不規則で、休み時間がない、たいへん・・・という印象が根強い時代。未経験の方が踏み込むには勇気がいる業種だった」と飯田さんは振り返ります。
最初にしたのは、「都合のいい時間で働いて構いません」という「くりあげ勤務」(フレックスタイム制のような勤務)を始めたのが最初でした。
現在の勤務体制は、9時間拘束の8時間労働。9時スタート~18時までとなっています。
2日目はまず、女性の比率が高いことについて伺いました。
「福祉関係では女性が働いている比率が高い。さまざまな条件を柔軟に受け入れて、長く働いてもらうことが肝心」と飯田さん。
長く働いていると当然、職員の方のライフステージも変わり、子供が小さい時と大きくなってからでは働き方も変わってきます。
「でっかいそら」では、とにかく「長く働いてもらう」ことを主体に考えているので離職率も低いそう。「なるべくやめないように、日ごろから、考え方・意見などを聞き、<働きやすい環境>を作っている」ということで、そのために、職員の方に対して、不定期ですがアンケートを実施しています。
例えば昨年、福利厚生面でのアンケートを取ったところ、1番の希望は「お盆休みがとりたい」というものでした。もうお盆が迫っていたため実施することはできませんでしたが、その「できなかった理由」も公表することで透明性を高めています。
アンケートでの2番目の希望だった「ガン検診」にはいま取り組んでいるほか、リフレッシュ休暇、アニバーサリー休暇も導入。なるべく職員の希望を叶えるようにしているそうです。
「制度は使ってもらわないと意味がないので、使いやすい形で導入する」と飯田さんは強調します。
3日目は、職員の方にお話を伺いました。
2008年ごろから、「働きやすい施設」を念頭に「働き方改革」を進める中で、早い時期から「時間年休」制度を導入。男性の育児休暇取得率も100%を達成しているほか、配偶者の出産のときの特別休暇制度、さらに資格取得補助制度など、「働きやすさ」を高めるためのいろいろな制度が充実しています。
中でもいちばん多く使われているという「時間年休制度」について、人事担当の今田竣さんは・・・
「勤務の前や後の時間に使う人もいるが、子供の授業参観やインフルエンザの予防接種などで使うための<中抜け>もできるので、満足度は高い」と語ります。
今田さんはご自分でもよく使っているそうで、「一日休むほどではないが時間を確保したい、というとき役に立つ・・・」とのこと。
今田さん自身、以前は「福祉業界は時間が不規則で激務」と思っていたそうですが、実際に入ってみてガラリとイメージが変わったそうです。

つづいて、同じく人事担当の三浦綾乃さんには、女性職員について伺いました。
「でっかいそら」には三浦さんはじめシングルマザーが多く、また、仕事・子育てが一段落した方が数多く働いているとのこと。
三浦さんは長男が小3・次男が小1のときにパートで入りましたが1年後に「短時間正職員」となりました。「9~16時の勤務なので、夕方の時間が空いているのが助かる」と語ります。
また、休職して復帰する方が多いのも特長だということです。
最終日は、今後の課題について伺いました。
「あくまでも利用者が主体なので、あまり職員の働き方改革を急に行ってしまうと、人手もカネも余分にかかってしまいます。最終的に利用者に対する支援が低下しないように、物事に取り組んでいます」と飯田さん。
さらに「利用者がいる場所でサービスを提供するものとしては、在宅ワークや完全なフレックスタイムはなかなか導入しにくい。それをどのように取り入れて事業に生かしていくか? アレンジを加えながらどう取り入れるかが今後の課題です」とのことです。

最後に、福祉業界について伺ったところ・・・
「福祉は経験年数がものをいう世界。さまざまな経験を積んだうえで対応を考えたりする業種で、昔ながらの職人肌のようなところがあります。なので、長く勤めてもらわないと身につかない。実際に関わらないと、本当の楽しさ・喜びを見いだせないんです」とのこと。
「『やってみようかな』と思った人が、本当に利用者と関わって、楽しさ・喜びを知ってもらうためには数年かかります。なので、いろいろと考えて、そうなるまで(長く)働いてもらうようにしています」と語っていただきました。

今週のお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は・・・
『働きやすい環境で、仕事の楽しさ・喜びを見出す』

福祉で働くことの本当の楽しさ・喜びを見出すためには「長く働くこと」が肝心。そのためには、「働きやすい環境」がまずは必要不可欠なんですね。