「好きなこと」より「自分がやらなければならないこと」を探して生きる道

2019.12.13 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。12月13日の放送は、元サッカー日本代表の戸田和幸さんが登場。サッカーに対する熱い思い、指導者として歩み始めた現在の心境を明かした。
■好きなことではなく、自分がやらなければならないことを探す
戸田さんは、高校時代にU-17世界大会を経験し、卒業後はJリーグの清水エスパルスに入団。23歳の時に、日韓ワールドカップに日本代表として出場した。多くの人々の記憶に残るのは、赤いモヒカンヘアー。「人と同じことはしたくなかった」という戸田さんは、「自国での開催だったので、この大会に出られたら死んでもいいって言っていましたし、実際にそういう気持ちだったと思います」と述懐する。
真っ赤な髪型は、意気込みの表れでもあった。戸田さんは夢の舞台に立っている自分の写真を眺めながら、「当時は“スーパーギラギラ”してましたからね。赤いモヒカンなんて普通は頭だけが目立っちゃうんですけど、僕はこの髪型でも違和感がない目をしているじゃないですか。ギラついているんですよ」と語った。
ワールドカップでは、決死のディフェンスで何度も日本のピンチを救い、守備の要として体を張り続けた。あらん限りの力を振り絞って相手に立ち向かうプレースタイルは、手探りの中で見つけ出したもの。戸田さんは、「エリートは好きなポジションと、得意なスタイルでずっとサッカーができると思うんですけど、僕はそうじゃなかった。好きなことをやるんじゃなくて、自分がやらなければならないことを探して、やり遂げることで生きてきたんです」と振り返る。
ドリブルが上手い、ヘディングが得意、強いボールを蹴ることができる。戸田さんはどれもまんべんなくこなせる選手だったという。しかし、バランスが良いということは、突出したものがないということ。「それだけだと、どのポジションにも合致しない。集団の中で立ち位置を把握して、自分の強みを作らないといけませんでした。さらに、這ってでも相手を止めるような“がむしゃらさ”を足していかないと、プロではやっていけなかった」。
■“情熱”と“冷静”を備えて見据えるゴール
相手にジャンプをさせない、邪魔をする、自分に有利なポジション取りをする。そんな地道な練習を山ほど積み重ねて、過酷な生存競争を生き抜いてきた。「決してスマートではなかったですね」と話す。
物事へのこだわりが強く、妥協が許せない。納得できなくて無くなった仕事も数しれず。「僕はいつも自分の思いが先行しているので。簡単に言えば“ウザい”です。全部直球ですね。相手から“そんな球はいらない”と言われることもありますし、嫌がられることもあります。でも、それでより良い仕事になると信じているからこだわるんです」という戸田さん。さらに、「言われたことだけをやって、その結果、自分が思い描いていない方向へ行ってしまうのはダメ。プロではないですね」と続けた。
現在、41歳の戸田さんは、解説者として論理的な分析でサッカーの面白さを伝えている。一方で、2年前には日本代表監督を務めるために必要なS級ライセンスを取得。もともと考え方が指導者寄りだったという戸田さんは、「サッカーで生きてきたので、日本のサッカー界に貢献できる人間になりたい」とまっすぐに語った。
昨年は慶応大学サッカー部のコーチを務め、サッカー指導者としての第一歩を踏み出した。しかし、その先はまだまだ模索中。「ここからどうやって積み重ねていくかですよね。もうちょっとトライアンドエラーを繰り返して、自分なりに確認することが必要なんです。そのために必要な準備をきちんとするというのは大事だと思っています。根拠なしには動けないですね、僕は」。
現役時代から変わることのない情熱的な意志と、冷静に自分を見つめることのできる論理的な分析力。その両面を備えているということが、戸田さんの最大の武器でもある。「やると決めたら行きますよ」という力強い言葉の裏には、明確なビジョンがあるのだろう。“戸田JAPAN”の勇姿が見られるのも、そう遠い未来の話ではないのかもしれない。
次回、12月20日の放送は、女子ホッケー選手の小野真由美さんが登場する。