他人を変えるのは難しい。大切なのは相手の理想に近づく努力をすること

2019.08.23 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。8月23日の放送は、元バドミントン選手の潮田玲子さんが登場。小椋久美子さんとペアを組んで活躍した“オグシオ”時代のこと、2児の母となった現在の生活などについて語った。
■マイナスの考えや悪い出来事も、捉え方によってはチャンス
現役時代は2008年の北京、2012年のロンドンと2大会連続でオリンピックに出場した潮田さん。当時の自分を色にたとえると「間違いなく、赤」だという。ただひたすら勝利だけを目指していたあの頃について、「燃えていたって感じですね。今思えばですけど、トゲトゲした部分もありました」と回想する。
2002年から2008年まで、小椋さんとダブルスのペアを組み、“オグシオ”として一躍人気者に。同時に、多くの人から寄せられる期待は大きなプレッシャーとなった。「気持ちを抑えられなかったり、コントロールできなかったり。そのイライラをパートナーにぶつけることもあったかもしれません」と振り返る。常に気を張り、弱さを隠し、ケガをしても「別に痛くないです」「プレーには支障ありません」と強がってしまう。そんな状態で、極度の緊張感の中にいた潮田さんの支えになったのは、「常に前向きに」という言葉。
潮田さんは、「マイナスの考えや悪い出来事も、自分の捉え方によってはチャンスに思えたり、良いことに繋がったりすることもある。物事の見方を変えるのって、大事だと思っていて。でも、前向きな気持ちがないと、そういうふうには見られないんです」と力説。物事をプラスに考えることで、自分が成長できるということを学んだ。
■1対1は、何があっても向き合わなければいけない究極の形
ダブルスというプレースタイルに教えられることも多かった。「私はもともとシングルスプレーヤーだったんですけど、やっぱり1人だったらオリンピックには出られてなかったと思うんですよ。ダブルスだったから自分の力以上のパフォーマンスが発揮できて、世界で戦えたというのはあったと思います」と分析する潮田さん。そして、「ダブルスって、1+1が2じゃなくて、3とか4にもなるんです。2人で勝ったときはすごく嬉しいですし、2人で1つだとずっと思っていたので」と打ち明ける。
ダブルスで経験したのは、濃密な人間関係。「私、1対1って究極の形だと思っていて。3人だったら、2人が揉めても、もう1人の違う考えが入ってきて、うまく中和されると思うんですけど、1対1だと何があっても結局は向き合わなくちゃいけない。うまくいっているときは、お互い何も考えないでいいんですけど、関係が悪くなったときほど、自分が相手にとっての良きパートナーであろうとしないとダメなんですよね」と語る。
そして、それは夫婦関係にも当てはまる。潮田さんは2012年に、現在、ジェフユナイテッド市原・千葉に所属するプロサッカー選手・増嶋竜也さんと結婚。妻として夫と向き合う中で、「相手に不満があるときって、相手も絶対自分に対して不満があるんですよ。でも、相手を変えることってすごく難しいから、だったら、自分が変わるように努力することが大事だと思うんです」と語る。
2015年には第1子を、2017年には第2子を出産。2児の母として、子どもたちとも真剣に接してきた。「怒ることもありますし、イライラすることもありますけど、子どもとの時間は一番、私の素の部分というか人間らしい部分が出ていると思います」と潮田さん。選手だった頃の“赤の時代”を経て、現在は“黄色の時代”なのだという。
「結婚してオレンジになって、今は、赤みがもう少しなくなって黄色に。トゲトゲしたところもなくなって、だいぶ丸くなったなと思います(笑)」。選手生活でも、夫婦関係でも、子育てでも、1対1で向き合うことを大切にしてきたからこそ成長することができた。潮田さんが今回見せてくれた、柔らかい笑顔がその証なのだろう。
次回8月30日の放送は、8月に登場した片岡安祐美さん、星奈津美さん、田知本遥さん、潮田玲子さんのエピソードをプレーバックし、彼らの輝きの秘密に迫る。