「今できていることは“当たり前”なんかじゃない」と気付くことから始めよう

2019.08.09 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。8月9日の放送は、元競泳選手の星奈津美さんが登場。ロンドン、リオ五輪の200mバタフライで銅メダルに輝いた彼女が、引退を決意した瞬間、今現在の思いなどについて語った。
■今できていることは“当たり前”なんかじゃない
水泳を始めたのはなんと1歳半。幼い頃から“水”に慣れ親しんでいた星さんは今、“重力”に頭を悩ませている。現役を引退してからは地上にいることが多くなり、「なかなか慣れなかったんですよ。立っていることも、歩くこともきつい。水泳選手って、ゆっくりならいくらでも泳いでいられる。たぶんウォーキングよりも楽なんです」と打ち明けた。2018年には東京マラソンにも参加。「残りの10キロとか、もう泳ぎたくて仕方なかったです(笑)。その辺に川とかないかなって思ったくらい、重力がキツくて」と笑う。
バタフライの選手として2012年のロンドン五輪に出場し、銅メダルを獲得。しかし、2014年に持病のバセドウ病が悪化し、手術を決断。「だいたい1カ月くらい競技から離れることになったんですけど、その間に考えることがたくさんありました。水泳が生活の中心だったけれど、水泳ができなくなって、それが当たり前じゃないんだと気付きました」。このことをきっかけに、競技に対する向き合い方が変わり、夢に向かって努力できることのありがたさを、強く感じたという。
そして手術から1年後、2015年の世界水泳選手権で頂点に立つ。「今までにない感情で迎えた大会でした」と星さん。「自分でも想像していなかった結果でした。金メダルという形で、いろんな人に恩返しができた」と語る。
翌年、2016年のリオ五輪でも銅メダルを掴むが、25歳になっていた星さんは、そこで引退を決意。決勝のレースを泳ぎきった瞬間、結果を知らせる電光掲示板を見る前から顔がほころんでいたという。「結果を見る前から、安心した表情になっていたというか。結果としてなんとかメダルが獲れて、もちろん嬉しかった部分もあるんですけど、そこに賭けて全部を出し切ろうと思って泳いだ2分5秒間だったんで、それができたことにすごくホッとしたんですよね。成し遂げられたという感情でした」と振り返った。
■どんなに小さいことでも、ためになると思ったら毎日続けてみる
現在、28歳。指導者として子どもたちに水泳を教えることも。決して無理強いはせず、自主性に任せるのが星さんのスタイルだ。「自分で考えて選択できるようにしてあげたくて。私も、コーチや家族から“ああしなさい、こうしなさい”と頭ごなしに言われたわけじゃなくて、水泳を続けるのかどうかも含めて、まず聞いてくれて、私に決めさせてくれたんですね」と自身の経験を踏まえながら、子どもたちと接する。
星さんは、「私も、自分で選択してきたからこそ、逃げ出したり、途中で諦めたりすることなく、責任を持って最後までやりきろうと思えたんじゃないかな」と語る。
そもそも高校生くらいまでは、目立った成績を残せていなかったという。決して速い選手ではなかったが、自分で決めて、続けてきたからこそ今がある。星さんが大切にしているのは「継続は力なり」という言葉。
「どんなに小さいことでも、ためになると思ったら毎日やろうと思って。本当に細かいことだと、足首を少しでも柔らかくしようと毎日足首を回していたりとか。ずっと続けていけば、それが力となって大きな結果になると思っていました」と胸を張った。自分で決めること、そして続けることの大切さを、星さんはこれからも子どもたちへ伝えていく。
次回、8月16日の放送は、元女子柔道選手の田知本遥さんが登場する。