「すべては自分次第」突き放すようでいて“強さ”を育んでくれる教え

2019.06.14 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、ゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。6月14日の放送は、プロゴルファーの渡邉彩香さんが登場。順調にトップ選手への階段を登っていた最中、狂い始めた歯車を元に戻し、さらに成長すべく奮起する渡邉さんの素顔と、現在の思いに迫った。
■どんなときも“自分らしさ”を
172cmの長身を活かしたドライバーショットは屈指の飛距離を誇り、20歳の時にツアー初優勝。翌2015年には2勝をあげ、年間獲得賞金は1億円を突破。“女子プロゴルフ界に渡邉さんの時代がくる”と期待の声が上がった。勢いに乗って迎えた2016年の全米女子オープンは、リオ五輪代表を懸けた特別な一戦。当落線上で迎えた最終18番、渡邉さんは、現時点での順位と、何位までに入れば代表に選ばれるかを把握した上で、内定がより確実となるパーよりもバーディーを狙いに。しかし、ショットは池に落ち、リオ五輪への道は閉ざされてしまった。渡邉さんは当時のその選択に関して「後悔はない」ときっぱり。「守りに行って、守りに行ける選手ではない」と自分を客観視し、大一番でも自分のゴルフを貫いた。
しかし、その後も思うように成績は振るわず、昨シーズンは賞金シードを喪失。「悔しくてたまらない」と現在の心境を吐露する一方で、「今の自分が置かれている状況もあって、すごく刺激的」な出来事があったという。それは、一時は世界ランキング1000位以下にまで陥落したかつての大スター、タイガー・ウッズが、今年のマスターズ・トーナメントで復活優勝を果たしたこと。渡邉さんは、現状の打開に向けて「思い切りの良さを大切にしながらも、新しい感覚のことにもトライしている」と、試行錯誤しながら練習に励む毎日だ。
ツアーには、渡邉さんの代名詞とも言えるドライバーショットを見に、多くのギャラリーが駆け付ける。「ドライバーを振り、ギャラリーから“ナイスショット”だけではなく、“オー”といった感嘆の声が聞こえるのが嬉しく、それがモチベーションになる。私のプレースタイルとして、ドライバー一発で観客を沸かせられるような選手になりたい」と意気込みを語った。
■守り続けている両親の教え“すべては自分次第”
渡邉さんは、現在の自分を表す色は“青”だと語る。「(低迷していても)ふてくされることなく、冷静に、落ち着いてひとつひとつの物事をきちんとこなせているし、考えられるようになってきているので、そういう部分では成長できていると思う」と自己分析した。一方で、数年前の好調な時期は「赤や黄色」。「あの頃は良くも悪くも出たところ勝負で、目の前のことしか見えていなかった」と回想した。
両親の影響で始めたゴルフだが、練習を強要されることも、結果を求められることもなかった。「辞めたければ辞めればいいし、やりたければ続ければいい。そのかわり練習しないで悔しい思いをするのは自分。逆に、練習をたくさんして優勝し、いい思いをするのも自分」と言われてきた。突き放しているようでいて、“強さ”を育むための「すべては自分次第」という教えが、今までの渡邉さんを支えてきたのだろう。「ゴルフを続けられたのは両親のおかげ」と感謝の言葉を述べた。そしてもう一つの両親の教えは「人生はゴルフだけではない」。渡邉さんは、「ゴルフだけできればいいわけでなく、学生であれば勉強もできなくてはいけない。人から見られる競技なので、女性としても綺麗でいないといけない。スポーツ選手として憧れてもらえるような選手になるためにも、ゴルフだけではいけない」と語る。
渡邉さんの座右の銘は「明日は明日の風が吹く」。いい時もあれば、悪い時もある。それがずっと続くわけではないと身を持って経験した。「明日になったらまた全然違う一日になると思うから、ゴルフにおいても、それ以外においても、毎日新たな気持ちで色々チャレンジしていきたい」。渡邉さんにとって厳しい状況は続くが、「こういう状況になっても周りの人がすごく支えてくれている。今は自分以上に私がまた勝てると信じてくれている人たちのために優勝したい」と力強く語っていた。
次回、6月21日の放送は、プロゴルファーの上田桃子さんが登場する。