努力が生みだすものは「結果」ではなく「報い」

2019.05.17 22:30
俳優・田辺誠一さんが番組ナビゲーターを務め、毎回1人のゲストの「美学」=信念、強さ、美しさの秘密を紐解き、そこから浮かびあがる「人生のヒント」を届ける、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。5月17日の放送は、元競泳・平泳ぎ選手の田中雅美さんが登場。1996年のアトランタ五輪から3大会連続で五輪に出場し、'00年シドニー五輪の400mメドレーリレーで銅メダルを獲得。引退後はスポーツコメンテーターやタレントとして活躍する傍ら、現在は女優として演技を学ぶ田中さんの素顔に迫った。
■努力の成果は「結果」ではなく「報い」である
平泳ぎのエースとしてアトランタ五輪、シドニー五輪、アテネ五輪と3度の五輪に出場した田中さん。中でも、世界ランキング1位で迎えたシドニー五輪では、日本中の期待が集まった。しかし、結果は100mが6位、200mは7位に終わり、「人生の中であの瞬間が一番辛かった」と振り返る。400mメドレーリレーでは銅メダル獲得に貢献したが、最終目標である個人でのメダルを逃した田中さん。落ち込んだ気持ちを立て直してくれたのは、アメリカ留学中にホストファミリーのお父さんがかけてくれた言葉「Never too late Never give up」(何かを始めるのに遅すぎることはない、決して諦めないことが大事である)だった。田中さんはこの言葉を「やりたいと思った時がチャレンジの時」と解釈。「挑戦によって新たな出会いが生まれ、自分の世界は広がる。私にとって挑戦とは、常に軸にあるもの」と話す。
シドニー五輪後は引退も考えた田中さんだったが、アメリカ留学を機に再び夢の舞台を目指し、200m平泳ぎでアテネ五輪に出場するも、結果は4位。メダルには届かなかったが、「4番だからこそ学べたことがある」とポジティブに捉える。「一生懸命頑張っても叶わないことはある。だけど、“報い”は別の形で表れる。努力=結果ではなく、努力=報い。努力すれば叶うのではなく、報われるものだと私は信じている」。競泳人生を総括し、「感謝できる最高の仲間に恵まれたのは、長い間水泳で頑張った報いだと思う」と語った。
■コンプレックスは、自分らしく生きるためのエネルギー
2005年に現役を退いてから15年、スポーツコメンテーターやタレントとして活躍する田中さんの現在の夢は、女優として輝くことだ。田中さんは2017年に舞台デビューし、ドラマ出演も果たした。「わからないことだらけで、恥ずかしさとの戦い」だが、観た人が喜んでくれたり、時に称賛してくれたりする“報い”に励まされている。女優業に挑戦した理由は「目立ちたがり」だったから。そして、田中さんは、挑戦し続けるための原動力として“コンプレックス”を挙げた。「結果として個人のメダルを獲得できなかったというコンプレックスが自分の中にずっとある。けれど、私にとってコンプレックスとは、ネガティブな要素ではなく、自分らしく生きるためのエネルギーになるもの」。
プライベートでは結婚・出産を経て、1歳半になる娘のお母さんとしての一面も持つ田中さん。理想の女性は、元バドミントン選手の陣内貴美子さんのような「カッコよくて芯があり、周囲への尊敬の気持ちを忘れない女性」。最近は、着物を着られる大人のカッコいい女性を目指しており、着付け教室にも通う。人生100年時代と言われる中、2019年に40歳になった田中さんに、残りの人生をどう生きたいか尋ねた。「何よりも今を大事にしたい。そうすれば、絶対に明日はさらに良くなる。1年後はもっといい自分でいられると思うので、今日、目の前にあることと100%向き合うという日々を重ねていけば、10年後も素敵な人と仕事をしていると思う。娘もそんな私の背中を見て、すくすく育ってくれていればいいな」。最後には、母親らしい笑顔がはじけていた。
次回、5月24日の放送は、プロラクロスプレーヤーの山田幸代さんが登場する。