困難な局面でサバイブするために「すべてにアジャスト」マインドの徹底

2019.04.12 22:30
2018年5月よりスタートした『SHISEIDO presents 才色健美~強く、そして美しく~with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)が、番組ナビゲーターに俳優・田辺誠一さんを迎えて4月からリニューアル。毎回1人のゲストの「美学」=信念、 強さ、美しさの秘密を紐解いていく。4月12日の放送は、前週に引き続き、メジャーリーガーの田中将大さんが登場。結果を残し続けるための秘訣に迫った。
■ストロングポイントは「セルフコントロール」
名門ニューヨーク・ヤンキースの背番号19を背負い、日本人史上初となる5年連続二桁勝利、今シーズンは日本人最多となる4度目の開幕投手を務め、勝利を飾った。そんな田中さんにとって、今でも忘れられない試合がある。それは中学2年生のときの、夏の県大会予選の決勝だ。「最終回、一打出れば同点、長打が出れば逆転の場面で、ツーアウトで僕に打席が回ってきた。ここで打って、勝てば全国大会出場という場面で、中途半端なスイングをした結果、ライトのファールフライでゲームが終わってしまった」と回顧。敗因は「僕の気持ちの弱さに尽きる」と猛省した田中さんは、この敗北を機に「このままじゃいけない。どんな時でも気持ちを強く持って、試合に臨めるようになろう」と決意した。
この経験を糧に、日々の鍛錬と実績を積み重ねてきた田中さんは、自身のストロングポイントについて「セルフコントロール」と表現。「ゲームの中で一球一球どう思いながら投げるか。ピッチャーの中には何も考えないで投げたり、キャッチャーのサイン通りに投げていたりする選手もいる。僕だって何となく投げてしまったことはある。だからこそ、しっかりと自分の中で整理して投げている」と、意味を持つ“一球”の大切さを語った。
田中さんは、長期間に及ぶシーズンを乗り切るために、オフはゴルフや釣りなどの趣味を全力で楽しむことにしている。ただし、投球と同じく「考察して正しい答えを導く」ような側面を持つ趣味を自然と選んでいるようだ。「例えばバス釣りなら、ルアーをどこにキャストするか、どの深さまで下ろすか、そんな風に駆け引きしながら考えて仕掛けるのが楽しい」と話す。
■サバイブの鍵は“適応力”
「なぜメジャーリーグで結果を残せるのか」と問われた田中さんは、「僕が感じていることとのギャップを感じる」と素直な気持ちを吐露。「僕自身は成績を残し続けているとは思っていないし、周りの期待に応えられたシーズンなんて1度もない。ただ、もしメジャーリーガーとして生き残れている理由があるとすれば、何事にもアジャストすることだと思う」と断言した。
「レギュラーシーズンの開催時期は日本と一緒だが、アメリカは日本より20試合も多いので、どうしても過密スケジュールになる。他にも、マウンドの高さ、ボール、移動距離、文化も違う。けれど、そのすべてにアジャストしなければならない」。そうした中で自分の健康を保ち、マウンドに上がり続け、高いクオリティの投球をしなくてはいけない。さらに、「たとえ万全のコンディションでなくても、その中でいいボールが投げられるように、その日の自分の体調にもアジャストしなくてはいけない」と語る。田中さんにとって「アジャストする」は単純な意味ではなく、「すべてに適応していく」という求道的なニュアンスを含んでいる。
最高峰の舞台で結果を出し続けるためには、的確にセルフコントロールをした上で、いかに実際のプレーの精度を高められるかが大切。力強いガッツポーズが印象的な田中さんだが、その実、あらゆる局面で冷静に状況分析を行い、見事に「アジャスト」している。その積み重ねが、さらなる高みに到達するための正しい手段であることを、身をもって証明し続けている。
次回、4月19日の放送は、平昌五輪女子フィギュアの金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手が登場する。