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大女優ジュディ・デンチ×英国最高峰スタッフ集結  孤独な女王の晩年を輝かせた、知られざる真実の日々
朝日新聞
2019.01.22 10:00
1世紀もの間、隠されてきた〈真実〉の物語。女優ジュディ・デンチが20年ぶりに2度目のヴィクトリア女王を演じたことでも話題の映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』が1月25日(金)から公開となる。今回、女優の草刈民代さんに本作の魅力を伺った。
「年齢に関係なく、心の躍動に導かれ、自分を発見していく女王が素晴らしい」
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年齢や階級などを超え 惹(ひ)かれ合った2人
「人がちゃんと生きるってこういうことなんだな」。デンチ演じるヴィクトリア女王を見つめながら、そんなことを思いました。観(み)終えた後、誰もが生きる力や勇気をもらえる素敵な作品です。
 印象的だったのは、インドから来た若者アブドゥルが女王の前にひざまずき、つま先にキスをするシーン。突然の行動に周囲は騒然。でも、女王自身は「元気が出たわ」と笑顔。こんなことをされたら惹かれるか驚くかのどちらかですよね。女王が惹かれたのは、彼に下心がなく、あくまで純粋な気持ちで自国インドの流儀として行った行為だったからでしょう。
 それ以降、女王はアブドゥルを従僕として自身のそばに置き、彼からインドの文化についてあれこれ教えてもらいます。異文化への興味が深まると共にそれを話してくれるアブドゥルにも興味を持ち、ますます惹かれていく女王。確かに彼はなかなかのハンサムで知性があって魅力的。そもそも人が醸し出す雰囲気というのは造作よりも精神的なものによると私は思っています。どんなにイケメンでも真のエネルギーや知性がない人は輝いていない。アブドゥルはそれらを兼ね備え、立ち姿にも表れていたのだと思います。
20年ぶりにヴィクトリアを 演じるデンチが素晴らしい
 それにしても、女王を演じたデンチは素晴らしいですね。式典の最初は本当につまらなそうな、退屈した表情だったのに、アブドゥルと出会ってからはどんどん顔つきが変わっていきます。彼に「私はずっと独りぼっち。生きている意味がある?」と弱音を吐露するシーンがあるのですが、本当にこの人なら分かってくれると思ったからこそ本心を言えた、というのがリアルに伝わってきます。涙をこぼしたり、かと思えば少女のような無垢(むく)な笑顔を見せたり。さりげないのに深みを感じさせる演技に見ほれました。
 デンチがヴィクトリア女王を演じるのは『Queen Victoria 至上の恋』に続き、20年ぶり2度目とのこと。ご自身も経験を重ねた上で再度、実在した女王を演じるというのは女優としてかなり挑戦しがいのあることですよね。
 アブドゥルを演じたアリ・ファザルもすごく良かった。女王への思いを実に繊細に表現していました。特に前半と後半では全然表情が違います。時間の経過がその姿から感じられ、後半は彼の背中からも完全に年輪を重ねた姿が見て取れます。
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実話を基にした愛の物語が 教えてくれる人生の意味
 本作を通して、生きていく上で大切なのは心が動くことなのだと私は教えてもらった気がしました。人生終盤の時期でも、心の躍動があればその人は元気になれるし、人生を輝かせることができるんだなと。
 ヴィクトリア女王は全てを管理され、自由のない生活を長年強いられ、生きてきたわけですが、そういう中にあっても、彼女は「人としてどう生きていくべきか」「どう在るべきか」を常に考えていたんだと思います。だから晩年、自身の直感のもと、陰口をたたく周囲の声などものともせず、アブドゥルという存在を自身のよりどころにして、納得のいく時間の中で心を満たすことができたのではないかと思います。女王という立場を超え、自分の人生を全うしているところが素晴らしいです。私も、人を思ったり戦ったり、たとえ挫折しても、そこから何かを発見し、それによってどう行動するかを、死ぬまで考えて生きていきたいなと思いました。何より、女王のように年齢など関係なくときめくことができるって、素敵なことですよね。
 そして忘れてならないのは、本作が実話だということです。ベースになっているのは2010年に発表された本作の原作。1世紀もの間、表に出ることのなかった女王の秘密が壮大なスケールで描かれています。衣装や儀式なども当時の様子を忠実に再現した、見応えある壮麗な映像美! さすが経験を積み重ねた英国スタッフが製作しただけのことはあるなと思いました。王朝ものとしての風格を感じさせる作品ですが、クスッと笑えるシーンも随所に散りばめられています。歴史の重みとユーモアが絶妙に組み合わさった人間ドラマをぜひご覧下さい。(談)
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PROFILE
草刈民代
くさかり・たみよ/1965年東京都生まれ。小学2年からバレエを始め、84年に牧阿佐美バレヱ団の正団員となる。以降、日本を代表するバレリーナとして国内外で活躍。96年に映画『Shall we ダンス?』(周防正行監督)に主演し、数々の賞を受賞。2009年にバレリーナを引退し、女優としての活動を開始。12年の主演映画『終の信託』(周防正行監督)では日本アカデミー賞主演女優賞を受賞。今春の4月6日(土)・7日(日)に東京・丸の内のCOTTON CLUBにて「草刈民代 FIRST LIVE」を開催予定。
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STORY
1887年英国、ヴィクトリア女王の即位50周年記念式典。記念金貨の贈呈役としてアブドゥルは英領インドから英国へと渡る。一方、最愛の夫を亡くし、心を閉ざしてきたヴィクトリア。そんな彼女が心を許したのは、まっすぐにほほ笑みかけてくるアブドゥルだった。身分も年齢も超え、強い絆で結ばれていく2人だったが、周囲はそんな“君主と従者”の関係に猛反対。英国王室を揺るがす大騒動へと発展していく。