“最強の人”が好調を維持するためのルールは「離れること」「一日一善」

2019.01.04 22:30
元プロビーチバレー選手の浅尾美和さんがMCを務め、ゲストの「生き方」「人間性」にフォーカスし、そこにある真の「美しさ」を解き明かす、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents 才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。1月4日の放送は、空手・組手日本代表の植草歩さんが登場。女子68キロ超級で世界ランキング1位、2015年全日本空手道選手権・女子個人組手で優勝して以来、前人未到の4連覇を達成した植草さんの知られざる素顔に迫った。
■前人未踏の4連覇達成
小学生から空手を始め、学生時代からトップ選手として活躍してきた植草さん。「形(かた)」ではなく「組手(くみて)」を選んだ理由は、勝利へのこだわりだった。「小さい頃は形の試合にも出ていたが、どうしても勝てなかった。組手は背が高かったので、ちょっと手を出せば当たってポイントが取れるという感じだったので、勝てる方に勝てる方にと流れていった結果です」と、その経緯を語った。
全日本空手道選手権の個人組手で、2018年に4連覇を達成した植草さん。初優勝した2015年の大会について、「初めて空手が五輪正式種目に入るかもしれないということで、やけに注目が集まっていた中、“勝たなきゃいけない”というプレッシャーがあった」と振り返る。植草さんはこの時、いつも以上に集中力が増し、極限まで高まった状態=“ゾーン”に入ったという。「相手の動きが読めて自分が勝つためのプロセスがイメージでき、体も勝手に動くので、自分でもわからないくらい点数が取れて、すごく楽しくて気持ちの良い試合だった。その優勝がなければ、世界チャンピオンになって勝ち続けることもできていなかったと思う試合でした」と語った。
これまで、ゾーンに入った経験は3回あるそうで、そのひとつは、2017年の同選手権準決勝で、残り数秒からの逆転勝利を収めたとき。植草さんは、「しっかり準備をして、過程がきちんとしているからゾーンに入れるのかなと思った」と分析した。
植草さんの現在の目標は、「今年も優勝して5連覇を達成し、2020年の東京五輪で結果を出すこと」。空手が初の五輪種目になり、初代女王の最有力候補と周囲から期待されている中、植草さん自身も「東京五輪が自分の中で節目だと思っている」と話す通り、思い入れは強い。
そんな植草さんが挫折を味わったのは、大学4年生で臨んだ2014年の同選手権の決勝で敗れた時だった。「自分はこれだけ空手を頑張ってきたのに、何で勝てなかったのかわからないとトレーナーに打ち明けたときに、“お前は空手の中では一流選手なのかもしれないけど、僕たちトレーナーからしたらフィジカルな部分でも強くないし、メンタルの部分もまだまだ未熟。伸びしろしかないね”と言われた」。その言葉をきっかけに、「まだまだ私、頑張れることがあるんだ!」と気づいた植草さんは、心技体、全てを磨きなおして、翌年から快進撃を続けていくこととなった。
■強くあり続けるための2つのルール
植草さんには2つの決め事がある。1つは、大きな大会が終わったら、1週間くらい空手から離れて休むこと。「大学時代は日曜日がオフで、他の曜日は授業以外、朝から晩まで空手をしていた。以前は練習量を落としてしまったらいけないと思い込み、視野が狭かった」。練習漬けの日々は社会人になっても変わらなかったが、2015年の全日本空手道選手権が行われる2週間前に、植草さんの何かが限界に達した。「トレーニングをするのはいいけれど、空手はやりたくない」とトレーナーに訴えた植草さんに返ってきた言葉は、「今週1週間は空手をしないで、最後の1週間で調整しろ」というもの。空手を休んで1日目、2日目はラッキーと浮かれていた植草さんだが、3日目から不安になり、練習に戻りたい衝動に駆られた。それでも我慢し、大会1週間前に練習に復帰。そうやって臨んだ大会で、初優勝を飾った。それ以来、「“空手をやらないと”という気持ちにするためにも、オフは大事。友達と遊んだり、空手と全く関係ない人と話すだけでも視野が広がる」と、メリハリを持つように心がけている。
高校時代までは発想がネガティブで、「ウジウジすることが多かった」と話す植草さんだが、大学に入り強豪選手たちの中で揉まれて、風邪も引けない、怪我をしたなんて言えない環境に身を置いたことで、ポジティブな発想に変わった。植草さんは、「気持ちが弱かったときは空手も弱かった」と打ち明け、ポジティブシンキングになってからは笑顔も増え、心に余裕を持って競技を楽しめるようになった。
もう1つの決め事は、一日一善。「些細なことに苛立つ自分が嫌いで、相手を傷つけてしまったと自己嫌悪に陥るので、もし誰かに嫌なことをしてしまったら、良いことをして帳消しにできたらなと思う」と話す。また、部屋の壁には“全日本空手道選手権4冠”“世界選手権2連覇”といった目標を紙に書いて貼っており、「その目標を達成するまでに良い行いをしたら、毎回動物シールを貼っていく」と、照れくさそうに笑った。植草さんは「良い人間であることが強さの近道」だと信念を語る。
■女性として憧れの存在になるために磨かれる美
植草さんが試合モードになるスイッチは、髪をお団子にしたとき。「練習でもポニーテールの時は、気合が入っていないかもしれません。ポニーテールや、髪を下している時はオシャレしている時、というイメージがあるからですね」。
番組では、オフの日に行きつけの美容院へメンテナンスに行く植草さんに密着。「試合前は絶対に来ます。大学まではショートカットやボブだったんですけど、卒業してからは巻き髪に憧れて伸ばしています。髪の毛を伸ばしはじめてから強くなったので、五輪までは伸ばして願掛けをしています」と話した植草さん。常にツヤツヤで綺麗な髪の毛でいるためのメンテナンスを欠かさず、美容に関する情報の収集にも余念がないという。担当の美容師も「武道をしているとオシャレに興味がないという印象を抱いていたが、(植草さんは)本当に普通の女の子」と話した。
植草さんが美意識を高く持つようになったのは、「お前が綺麗でキラキラした女性だったら、子どもたちも憧れて夢を見るだろう」という、高校時代の恩師の言葉がきっかけだった。「恩師に“せっかく女の子に生まれたのだから常に綺麗でいることを心がけなさい”と言われてから、スポーツをしていても、そんな風に考えていいんだなと思い改めました」。
■宿命だから勝ちにこだわる東京五輪
試合前に「負けたらどうしよう」と思うときも、「できる、できる、できる」と3回口にしてから、自分を奮い立たせて試合に臨んでいる。「やっぱり言霊の力は強い。3回言葉に出すことで気持ちが高ぶってくるし、人と殴り合う競技なので闘争心がないと勝てない」と話す。
植草さんは、2020年の東京五輪を28歳で迎える。「経験を重ね、選手としてもだいぶ脂がのった時期だと思うので、そのタイミングで、しかも東京で行われる上に、空手が初の五輪種目。偶然にも色々なことが重なって迎えることになる。そんな自分の運命にも感謝するし、宿命だと考えたら、勝つべきだし、勝つしかないと思っています」と熱く語った。
座右の銘は「笑う門には福来る」。植草さんは、「試合でも笑顔の時はどんどん自分の中で良いイメージが膨らむし、私生活でも笑顔には笑顔が寄って来る。だからずっと笑っていれば幸せが来ると思う」と話した。トップ選手ならではのプレッシャーと厳しいトレーニングを乗り越えながら、トレードマークでもある笑顔を忘れず、女性としての美意識を持ち、後進にとって憧れの存在であり続けようとする植草さん。東京五輪での金メダルを期待したい。
番組の途中では、スポーツオケージョンにおける“美”をサポートする、プロならではのテクニックとノウハウを紹介。今回は“魅惑のくちびる”になれる、口元メイクの方法を解説。
■口元メイク法
スポーツ後のお出かけに適した口元メイク法を教えてくれたのは、資生堂HAIR&MAKE UP ARTIST西森由貴さん。

今年はベリーリップがトレンド。

おすすめの口元メイクは“とろり塗り”。

まずはくちびる全体にルージュを塗り広げる。
重ねて塗ることで、しっかりと色を出すことができる。
ポイントとして、中央部分に塗り重ねると、立体感とツヤが増す。

今回使用した商品の詳細は以下のサイトで。
次回、1月11日の放送は、バレーボール元全日本代表の栗原恵さんが登場する。