フェンシング界のニューヒロイン、現役大学生の宮脇花綸「憧れのアスリートはいない」

2018.11.02 22:30
元プロビーチバレー選手の浅尾美和さんがMCを務め、ゲストの「生き方」「人間性」にフォーカスし、そこにある真の「美しさ」を解き明かす、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents 才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。11月2日の放送は、フェンシング女子フルーレ日本代表の宮脇花綸さんが登場。フェンシングの奥深さとその魅力、東京五輪への思いを語った。
■フェンシングに求められる頭脳・作戦・演技力
宮脇さんは現在、慶應義塾大学経済学部の4年生。5歳からフェンシングを始め、2016年にはジュニアのワールドカップで優勝、そして2018年5月、シニアのグランプリ大会で準優勝し、女子フルーレでは日本ランキング1位、世界ランキング16位に到達した。また、同年8月のアジア大会フルーレ団体では、金メダルを獲得している。
フェンシングには、フルーレ、エペ、サーブルの3種目があり、フルーレは手足を除いて背中を含む胴体部分すべてが有効面となる。攻撃権が交互に入れ替わり、3分間3セットの15本先取で勝利となる。
宮脇さんは、フェンシングの魅力を「ただ力強い人が勝つだけじゃなくて、速さのコーディネーションや強さのコントロール、もちろん戦略だとか、そういうものを組み合わせて試合を成り立たせるすごく奥深い競技」と表現。「例えば、力の出し方も常に全力ではなく強弱をつけることが大事。遅いことをうまく利用して、1人時間差攻撃をしたり、わざとミスをしたふりをしたり……コーチは“フェンシングは演技力が大事。わざと演技をして罠にはめてそこを迎え撃つ、それがフェンシングの面白さ”と言っています」。
フェンシングには頭脳と作戦、演技力が求められる。世界トップレベルの試合になると、最初は運動神経の良さだけで感覚的にポイントを取ることができるかもしれないが、強い選手ほど相手の攻撃を逆手に取り、また違う作戦をしかけてくる。宮脇さんは「試合中に何度も局面が変わるので、それに気づいて新しい作戦を立て攻撃し返せる選手じゃないと、トップには行けないと思う」と話す。
■宮脇花綸のマイルール
ナショナルチームでコーチを務めるフランク・ボアダンさんは、「宮脇選手は頭脳明晰で作戦と戦略を考えゲームを組み立てられる。しかし、時々考え過ぎてピンチになってしまうことがある」と指摘。宮脇さんもそれを認め、「意識的に感覚的な部分やルーズさを出すようにしている」とのこと。一方で、宮脇さんの根底にあるのは、厳格なマイルール設定だ。「自分が認識していることと、実際の言動が矛盾してほしくないので、ルールや定義をきちんと決めた中で、自分をコントロールしながら矛盾のない中で過ごすことに心地良さを感じる」と語った。
他にも、「倒れている自転車があったら直す」、「見抜かれる嘘は吐かない」、「汚い言葉は使わない」など、人として大切にしているマイルールや、宮脇流の美学がある。言葉遣いにおいては、「マジ」、「バカ」、「最低」、試合で負けた時の「クソ」は言っても良いが、「死ね」や「殺すぞ」といった単語は使ってはいけないと、明確な境界線を引いているのだとか。
自身の強みの1つは「思ったことをハッキリ言えること」だと語った宮脇さん。「言うべきことは、コーチや先輩でもハッキリ伝えます。海外のコーチと一緒に練習するようになってからは、特に相手にわかってもらうことの大切さを感じました。言うことで、仲が悪くなるわけではありませんし、お互いを理解するためにも言った方が良いことの方が多いと感じています」。宮脇さんは「根がルーズなので」と謙遜するが、強い意志によって形作られたこれらのマイルールが、フェンシングという競技を続けるうえで重要なファクターであることは間違いないようだ。
■アスリートとして生きる決意
宮脇さんが自身の強みとしてもう1つ挙げたのは、周囲に恵まれているということ。「フェンシングの選手として生きていくことは、ハイリスクローリターンだと思っていたときに、太田さんと話す機会があり、アスリートとして生きるきっかけを与えられました」。大学は薬学部に進み、薬剤師になろうと思っていた宮脇さんは、北京五輪(フルーレ個人)、ロンドン五輪(フルーレ団体)で2大会連続銀メダルを獲得し、現在は公益社団法人日本フェンシング協会会長を務める太田雄貴さんと出会い、人生が変わった。「太田さんは、私に五輪に行きたいか、行きたくないかを確認するよりも先に、五輪に行きたいという前提で、いきなり“五輪でメダルを獲るためにはどうしたらいいか”を話し始めたのです」。言われるがまま、その場で「何歳までに何をする」といった未来予定年表を書いたという宮脇さん。「太田さんの話に、そこまでしないとメダルを獲れないんだと思いました。でも、その時お話したことで、少しずつアスリートとして生きることを意識し始め、五輪を目指せるポジションにいる幸せを実感しました」。ちょっと本気になれば、ちょっと良い成果がついてきて、応援してくれる人が増えて……といった”プラスの瞬間”が連鎖するように生まれた。そうして、約半年かけてアスリートとして生きる決意と覚悟ができてきたのだという。
また、宮脇さんは「憧れのアスリートはいない」と話す。「従来のスタイルとはまったく違う方法で、見た目は格好悪くても自分なりの新しいフェンシングをやっているのかなという自負がある」。マイルールを貫き、自分なりのスタイルを確立したからこそ、アスリートとしての今がある。「他の競技の選手を見ても、人それぞれ自分に合うルールがある。他の人にとっては良くても、私には良くなかったこともある。そういう意味では、“この人と同じことをすれば大丈夫”とは思わないようにしている。でも、部分的に好きだな、いいなというものは取り入れるようにしています」と語った。
■東京五輪で世界の頂点へ
番組では、休日にお菓子教室に通う宮脇さんにも密着。米粉のレモンケーキとスコーン作りに集中する宮脇さんにとって、お菓子作りは“ケミストリー”。「分量が大事なので、ちょっと間違えると、卵の反応が全く変わってしまったり、メレンゲを潰し過ぎちゃったり、粉を混ぜすぎてグルテン作り過ぎちゃったり。お菓子は科学なので、そういうところに一番神経を使っています」。やはり性分なのか、集中して“お菓子作りのルール”に取り組んではいるものの、オフの日らしい屈託のない笑顔も見せていた。
一転、宮脇さんの眼差しが真剣さを帯びたのは、23歳となって迎える東京五輪の話題になった時だ。「現在、団体でメダルを獲れる位置にいるということは、東京五輪の団体でもメダルを狙えるということ。個人としては、それまでの世界大会で、何度もメダルを獲り、満を持して金メダルを獲りたいです。メダルを獲ると言ったら、銅か銀か金じゃないですか? 銀も銅も一回だけ負けているということになるので、それならその一回を勝って、銀を金にしたいなって最近思っています」。
宮脇さんの座右の銘は、“今日は私の日。私が主役だ”という意味の“TODAY IS MY DAY”。「試合の日は自分が一番高いところにいって、自分が一番いいことをして、一番目立たなければいけない日なので、すぐにその気持ちを呼び起こしてくれる言葉として、いつも胸に刻んでいます」。アスリートとして生きていくという強い覚悟を持ち、徹底した自己分析の積み重ねで、世界と勝負できるフェンサーに成長した宮脇さんの挑戦は、まだまだ続く。
番組の途中では、スポーツオケージョンにおける“美”をサポートする、プロならではのテクニックとノウハウを紹介。今回は「くずれにくいメイク法」と題し、運動中でも乱れにくいメイクの方法を解説した。
■「くずれにくいメイク法」
スポーツをしても安心の「くずれにくいメイク法」を教えてくれたのは、資生堂HAIR&MAKE UP ARTIST向井志臣さん。

今回使用するのは、下地、パウダリーファンデーション、アイブロウ、ルージュの4つ。

皮脂崩れ防止下地を全体にしっかり塗る事で、崩れを防ぎながら紫外線もカット。これ一つで、スポーツ時のベースメークの持ちが大きくアップする。

【ポイント1】
塗り忘れが意外と多いのが、顎の下部分。この部分までしっかり下地を塗っていく。
下地の後は、パウダリーファンデーションを薄く付けるのがオススメ。

【ポイント2】
崩れやすい目の下部分もしっかりとパウダリーファンデーション塗ることで、保ちがぐっとアップ。眉も汗やこすれに強いウォータープルーフタイプのアイブロウを使うと安心。

【ポイント3】
全体に描いた後、スクリューブラシで輪郭を軽くなじませると、ナチュラルな仕上がりに。
スポーツの時に艶々リップはNG。セミマットな質感がオススメ。

今回使用した商品の詳細は以下のサイトで。
次回、11月9日の放送では、2011年 FIFA女子ワールドカップの優勝に貢献した、サッカー女子日本代表・鮫島彩さんが登場する。