元プロビーチバレー選手の浅尾美和さんがMCを務め、ゲストの「生き方」「人間性」にフォーカスし、そこにある真の「美しさ」を解き明かす、スポーツグラフィックマガジン「Number」と企画協力したドキュメンタリー&インタビュー番組『SHISEIDO presents 才色健美 ~強く、そして美しく~ with Number』(BS朝日、毎週金曜22:00~22:24)。6月15日の放送は、元マラソン選手の有森裕子さんが登場。51歳になった現在も走り続ける意味やアトランタ五輪の名言にまつわる隠された真実などを語った。
■「走ること」は自信を持って生きるために必要な手段
子どもの頃は「不器用で、走ることも得意ではなかった」と明かした有森さん。順位が付かず、他の人と比較されることの少ないモノ作りに没頭していたが、やがて「明確に自信が付けられるものが欲しい」と考えるようになっていく。その後、中学校の運動会で出場した800メートル走で、有森さんいわく「たまたま、運良く」学年で1位に。部活動のバスケットボールは、自分が試合に出ていなくても勝敗が決する団体競技。一方で、ひとりの力で達成した優勝という結果は、彼女にとって明快に自信となった。
高校では陸上部に入部。有森さんは、「短距離はダメでした。足は遅い、体は硬い、ハードルは足が開かない。一方で長距離は、スピードが大事というよりは、ある程度、我慢すれば結果が出ました」と振り返った。「我慢はまったく苦にならない」と言う彼女にとって、「走ること」は好き嫌いで語るものではなく、結果を出し、生きていくために必要なもの=自信を作る手段なのだという。
有森さんと言えば、「初めて自分で自分をほめたいと思います」という、アトランタ五輪で3位に入った直後の発言があまりにも有名。当時、「自分をほめてあげたい」と誤って流布され、違う意味合いで解釈されてしまったことも。
実はこの言葉は、挫折を味わっていた高校時代に出合った、シンガーソングライター・高石ともやさんの詩に影響を受けたものだった。
高校生二年生だった有森さんは、駅伝の全国大会で岡山県代表の補欠選手としてエントリーされた。しかしその役割は、同じ高校の後輩レギュラー選手の荷物持ち。「屈辱的だと思う自分も情けないし、先輩らしく振る舞おうと頭では思えても、後輩の顔を見ると嫌な顔をしている自分がいた」と、その空間にいることが耐え難かったという。
そんな気持ちで臨んだ開会式で、翌日にレースを控えた選手を励ますために招かれていた、市民ランナーの草分けでもあった高石さんが、こんな詩を朗読した。
「ようこそ、京都へ来られました。ここまで来るのに一生懸命、頑張ってきた自分も、苦しんだ自分も、喜んだ自分も、全部知っているのは、あなた自身だから。ここに来た自分を、人にほめてもらうんじゃなくて、自分でほめなさい。」
選抜されたのに嬉しそうな顔をせず、暗い顔で、今にも倒れそうな苦しい顔をしていた選手たちに向けたエール。有森さんは、聞いた瞬間に激しく心を揺さぶられる。「そうなんだよ、頑張ってきたんだよ。本当にその通りで、一瞬気持ちが楽になりました。でも同時に、私は何をやっているんだろう、補欠なのに楽になっている場合ではない。こんな気持ちでは、これ以上強くなれない。自分をほめるなんて、補欠である今は、死んでも自分に言ってはダメ」と、ふたつの思いが交錯してボロボロ涙を流した。そして、泣きながら高石さんの詩をノートにしたため、「この言葉は、自分をほめられると思えたときまで封印しよう。そう言える自分になるために、もっと強くなろう」と決意した。
バルセロナ五輪で銀メダルに輝いたあと、故障などの苦難を乗り越えて獲得した、アトランタ五輪の銅メダル。順位は1つ下がったものの、有森さんにとっては前大会よりずっと価値がある結果だった。「レースを思い返したとき、何でもっと頑張れなかったのかとは思わなかった」と述懐した有森さん。初めて、「自分をほめたい」と言えるだけの自信を手に入れた瞬間だった。
有森さんは引退後、様々な社会活動に取り組み、スポーツイベントのゲストランナーを務めるなど、走ることの素晴らしさを伝え続けている。一緒に走るランナーに有森さんが伝えたい言葉は、「すべてを力に」。以前は、「喜びを力に」と伝えていたが、ある人から「喜ぶことしか力にならないの?」と問われ、「最近、喜ぶことがない」と打ち明けられたことを機に、思い直すことに。有森さんが、喜びが力になると思っていたのは「日頃、山ほどある何でもないことの中に、1度か2度喜べることが起こるから感動が増し、それが力になる」と考えていたから。しかし、その助言がきっかけで「喜びのみで力を得る人ばかりではない」と気付き、マラソンでも同じことが言えると考えた。「マラソンではスタートからゴールまで何度も困難が訪れるけれど、起こりうるすべてを力にしてゴールしてきた」。「マラソンも人生と同じ。良いことも悪いことも全部含めて力にできたらいい」と、「すべてを力に」という言葉に込められた思いを語った。
番組の途中では、スポーツオケージョンにおける"美"をサポートする、プロならではのテクニックとノウハウを紹介。今回は、「夏の紫外線対策」基礎編part2と題し、日焼け止めの適量と塗り方を解説。
■「夏の紫外線対策」基礎編part2
日焼け止めの適切な使用量と使用法を教えてくれたのは、資生堂HAIR&MAKE UP ARTIST石田美紀さん。
【顔】
乳液タイプの日焼け止めなら1円玉硬貨大を、ジェルタイプはパール粒1コ分を目安に使用。塗り残しがちな耳の前や後ろ、耳などは、指先に適量とってから伸ばすと良い。
【首】
乳液タイプの日焼け止めなら10円玉硬貨大を、ジェルタイプはパール粒3コ分を目安に使用。首は手のひら全体を使って、馴染ませるように塗り広げていくのがコツ。顔と首以外にも、手の甲や指の間は日焼けしやすい箇所なので、忘れずにしっかりとなじませたい。
今回使用した商品の詳細は以下のサイトで。
次回、6月15日の放送では、プロクライマーの大場美和さんが登場。「人が見ていないところでも美しく、カッコよくありたい」と語る彼女の強さと美しさに迫る。