木々が芽吹き、花々が咲き誇る美しい季節が、今年もやってきます。今年の桜の開花予想は、東京が3月22日。西日本から東京にかけて、3月下旬から満開を迎える場所が増えていく見通しです。東日本から東北地方は、4月下旬までに開花、札幌や釧路は5月上旬に開花する見通し。薄紅色の美しい桜は、間近で見た感動をそのままに、美しくカメラに収めておきたいものですね。今年は「リフレクション撮影術」をマスターして、いつもと違った幻想的な桜色の世界を、作品として残してみませんか?
今回、撮影テクニックを伝授してくださったのは、プロフォトグラファーの別所隆弘さん。αシリーズがあれば、ほんの少しの設定やアングルに気をつけるだけで、光を自由自在に操ることができ「リフレクション撮影術」を実践することができます。
別所隆弘
滋賀県在住。プロフォトグラファー。アメリカ文学研究者。National Geographic Nature Photographer of the Year 2017 “Aerials” 2位など、国内外の写真賞多数受賞。雑誌掲載やウェブメディア、著書などを通じて、写真と文学の融合を試みるのが近年の関心事。
滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマの撮影がライフワーク。
ミホミュージアム 桜トンネル ~壁など反射物を効果的に使ったリフレクション撮影~
使用レンズ:SEL2470GM(24-70F2.8)
α7R Ⅱ, FE 24-70㎜ GM, F5.6, 1/40秒, ISO 100
トンネルに反射した桜色が美しく印象的なこちらの作品は、滋賀県・ミホミュージアム(※)の敷地内にあるトンネルで撮影されたもの。トンネルのカーブによって、桜色の世界がまるで無限に続いていくかのような広がりを演出しています。この写真を撮影するポイントは3つ。
1.朝の光を利用する
トンネルでの撮影は正午を過ぎると太陽が昇りすぎてしまって、光が斜めに入ってこなくなるため、午前中の撮影が良いでしょう。とりわけ朝の光は、角度と柔らかさが出るので、おすすめです。
2.ローアングルで撮影する
肉眼では写真よりもトンネルがまっすぐに見えるのですが、カーブを強調し、奥行きのある写真にするため、70mm前後の中望遠のレンズを使って、ローアングルで撮影するといいですね。しゃがんだ時の顔の位置よりも、さらに下の位置で構えることを目安としてください。
3.シャッタースピードは40分の1程度で撮影する
通常、朝、屋外で撮影をする場合のシャッタースピードは400分の1くらいのスピードです。その状態で撮ると、トンネル内部が暗くなります。逆に遅すぎると、桜が真っ白になってしまうので、マニュアルでシャッタースピードを調整して適正な明るさを探してください。全体的には、若干明るめに撮影すると良いでしょう。
αシリーズは液晶モニターで確認しながら撮影できるので、その場で色味の調整もできるのが便利。「その場で色味を調整しておかないと、桜本来の色を忘れてしまいます。」と別所さん。その場の光との相対的な感覚で調整しますが、この時はホワイトバランスをマゼンタ寄りに(右と下に2目盛りずつ)調整しています。
そのままでも幻想的な写真になるのですが、編集ソフトAdobeのPhotoshop Lightroom
を使って、白飛びしないようハイライトを抑制したり、どうしても暗い全体を明るくするために露光量を+1前後で調整したり、黒い影を低減するためにシャドウを+85に調整すると、より桜色が際立ち、鮮やかになります。さらに、「円形フィルター」機能を使ってトンネル部の暗さを修正すると、より華やかに仕上がります。
(※)ミホミュージアムは、展示替え等のため休館期間があります。詳細はオフィシャルサイトにてご確認ください。
目黒川 桜色の水面 ~鮮やかな桜色の水面を創るリフレクション撮影
使用レンズ:SEL2470GM(24-70F2.8)
α7R Ⅱ, FE 24-70㎜ GM, F8.0, 1/40秒, ISO100
両サイドから咲き乱れる桜がせり出し、水面まで美しい薄紅色に染めるこちらの作品は、東京都・目黒川で撮影されたもの。桜の密集感を際立たせ、まるでこの風景が永遠に続いているかのような奥行きを感じさせる写真を撮影するためのポイントは3つ。
1.輝度差のある場所で撮影する
立体感を出すために、輝度差がある場所を選んで撮影しましょう。ただし、輝度差で光と影のコントラストが強くなりすぎないようにするのがポイントです。というのも、桜は色や雰囲気が繊細で、その淡い世界観こそ美しさの極み。輝度差がきつすぎると、荒々しい印象を与えてしまいかねないので気を付けましょう。
2.中望遠のレンズで撮影する
SEL2470GMレンズなら、70mmで撮影しましょう。密集感と奥行きを同時に出すことができます。広角(24mm)で撮影すると、桜がスカスカに見えてしまいます。また、100mmなど望遠レンズで撮影すると、奥に見える橋が近くになりすぎて、狭く見えてしまいます。
3.DROは3前後に調整する
DRO(ダイナミックレンジオプティマイザー)は、5に設定すると、コントラストが低くなりすぎてしまいます。3前後に調整すると、桜の雰囲気と立体感の双方を損なわず美しさを引き立てられるでしょう。
彦根城 鏡桜 ~水面に映るもうひとつの桜をシンメトリーに見せるリフレクション撮影~
使用レンズ:SEL1635Z(1635F4.0)
α7R Ⅱ, FE 24-70㎜ GM, F9.0, 8.0秒, ISO100
暗闇に浮かび上がるように幻想的な夜桜。水面に映るもうひとつの桜とシンメトリーが美しいこちらの作品は、滋賀県・彦根城で撮影されたもの。昼の淡い世界観の桜とはひと味違った、夜桜の魅力をダイナミックに捉える写真を撮影するためのポイントは3つ。
1.最も明るい場所が白飛びしない場所を選ぶ
背面液晶モニターにヒストグラムが出せるので、輝度のヒストグラムを見ながら、白飛びしない状態を維持します。
2.広角レンズで撮影する
広角ズームレンズSEL1635Zを使って夜桜のダイナミックさを表現します。「αシリーズのセンサーはダイナミックレンジが広いので、風景写真家にとって最大のポイントになります。」と別所さん。また、広角レンズが軽いことも、撮影時のカラダの負担が軽減され、表現の幅が広がることにつながるそう。
3.反射した桜が歪まないように注意する
水面に映る桜が、これ以上右や左に行ってしまうと歪んでしまいます。広角レンズは歪みが出やすいので、水面も含めてひとつの被写体としてバランスを見ていきましょう。
「とにかくダイナミックレンジが広く、画質も良く、そしてなにより軽い!」と別所さんも絶賛のα7R Ⅱ。白飛びと黒つぶれの心配も少なく、ローアングルでの撮影も簡単に行えるのでより表現の幅が広がります。今回ご紹介した「リフレクション撮影術」を使えば、幻想的な淡い桜色の世界も、ダイナミックな鏡桜も思いのまま。美しい花の盛りの一瞬を、より美しく、より印象的に残してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、大人のソニーでも、別所さんの美しい写真をご紹介しています。
また、「TOKYO DAY OUT 」のコラボ企画では、東京の桜の名所をご紹介。周辺のおでかけスポットが充実し、道すがら桜を楽しめるスポットを是非チェックしてみてください。コンパクトデジタルスチルカメラ「RXシリーズ」を使って撮影した桜と、その撮影テクニックもご紹介しています。
さらに、DSC-RX100M4を使えば、とても幻想的な動画を撮ることもできます。散る桜をスローモーションで撮影し、逆再生の機能を使えば、散る桜の花びらがまるで木々に吸い寄せられるよう!
αシリーズで「リフレクション撮影術」にトライするもよし、まずはDSC-RX100M4で簡単にできる逆再生ムービーを撮るもよし。今年の春は、ぜひ幻想的な桜の世界の撮影にトライしてみてください。
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