「開館30周年記念特別展 柿右衛門展」

2017.03.31 15:00
東京・渋谷の戸栗美術館にて、4月1日より「柿右衛門展」が開催されます。
・370年の伝統、酒井田柿右衛門家
 江戸時代より約370年の歴史を持つ佐賀・有田の酒井田柿右衛門家は、色絵磁器の名家です。1670年代頃、柿右衛門様式を生み出しました。米のとぎ汁のように温かみのある白い素地、濁手(にごしで)を活かすように、余白をたっぷりととった構図、赤をはじめとした美しい絵具の発色、繊細な筆致が魅力です。まるで一幅の絵画を眺めているような、絶妙の絵付けは当時の絵付け師たちの高い技術がうかがえます。
色絵 双鶴文 輪花皿 /伊万里(柿右衛門様式)/ 江戸時代(17世紀後半)/ 口径22.5㎝ / 戸栗美術館所蔵
これらの磁器は国内のみならず海外へももたらされ、西欧の王侯貴族たちに絶大な人気を誇りました。ドイツ・マイセン窯をはじめ、イギリス、フランス、中国でも柿右衛門写しの製品が作られたほどです。
色絵 花鳥文 皿 / ドイツ・マイセン窯 / 18世紀前半 / 口径42.7㎝ / 戸栗美術館所蔵
色絵 花鳥文 輪花皿/伊万里(柿右衛門様式)/ 江戸時代(17世紀後半)/ 口径22.0㎝ /戸栗美術館所蔵
・現代に調和する伝統 ― 十五代酒井田柿右衛門

製作に手間のかかる濁手の技法は18世紀の間に失われてしまいますが、戦後に十二代・十三代によって復興され、十四代へと引き継がれました。そして濁手と優美な絵付けの伝統を受け継ぎながらも、新しい作風に取り組まれているのが、当代の十五代柿右衛門氏です。今展のために制作された「濁手 桜文 壷」は、その好例と言えるでしょう。本作のポイントは花弁の色。従来の「柿右衛門」では花弁の輪郭線の内は赤で塗るのが定石ですが、あえてごく薄い艶やかな紫が用いられています。これにより桜の花弁本来の色味や質感が表現され、風雅な趣が醸し出されています。また本作は通高57.2cmと、15代の作例の中で最大級を誇ります。同形異意匠の作はオランダとイギリスの美術館にそれぞれ1点ずつに所蔵されていますが、国内ではこの一点のみ。貴重な作例ですので是非この機会にご覧ください。
濁手 桜文 壷 / 十五代酒井田柿右衛門 / 2017 / 通高57.2cm / 戸栗美術館所蔵
このほか、今展では十五代の襲名前から新作まで、歴代柿右衛門氏の優品、江戸時代の柿右衛門様式の名品、約80点を展観いたします。「柿右衛門」のすべてをお楽しみください。

【開催情報】
<展覧会名>開館30周年記念特別展 柿右衛門展
<開催場所>戸栗美術館 東京都渋谷区松濤1-11-3 渋谷駅ハチ公改札口徒歩15分
<開催期間>2017年4月1日(土)~5月14日(日)
午前10時00分~午後5時00分
期間中毎週金曜・土曜は午前10時00分~午後8時00分
※入館は閉館の30分前まで
※会期中無休
<問>   03-3465-0070
<URL>   http://www.toguri-museum.or.jp/