2人しか乗れない贅沢。知る人ぞ知るディフェンダーの本流 ランドローバー「ディフェンダー110ハードトップ」

2026.11.06 07:00
2020年に登場して以来、ディフェンダーの人気は衰えることを知らない。ランドローバーのラインアップの中でも、ひときわタフでカジュアルな存在だ。直線を基調とした無駄のないスタイリングに加え、ブランドの原点ともいえる血統を受け継いでいることも、クルマ好きの心をくすぐる理由だろう。
日本市場に導入されているディフェンダーは、バリエーションも豊富だ。頂点には運動性能を極限まで高めたスーパーSUV「OCTA(オクタ)」が君臨し、ベーシックな3ドアの「90」、主力となる5ドアの「110」、さらにリアオーバーハングを延長した「130」がそろう。今回試乗した「110ハードトップ」は、その中でも少し異色の派生モデルである。
最大の特徴は、商用車登録(1ナンバー)となる2人乗り仕様であること。外観は一見すると通常の110と変わらないが、リアクォーターウインドーはボディ同色のパネルに置き換えられ、後席ドアのガラスも内側から黒い樹脂製のカバーで覆われている。乗用車とは明らかに異なる、実用性を優先した仕立てだ。
運転席に収まると、ダッシュボード周りはおなじみのディフェンダーそのもの。しかし、前席の背後には頑丈な隔壁が設けられ、客室と荷室が明確に分けられている。横開き式のテールゲートを開ければ、そこには広大な空間が広がる。2列目シートを取り払ったフロアには小物入れも備わり、荷物を積むための機能性が徹底されている。
なぜ、このような仕様が存在するのか。その答えは、ランドローバーが歩んできた歴史にある。英国の田園地帯で、泥にまみれた悪路を走りながら人々の暮らしや仕事を支えてきたのが、このブランドの出発点だ。日本でいえば、小型トラックに近い役割を担ってきたと考えると分かりやすい。かつてのディフェンダーには、荷台を備えたピックアップや、そこにアルミ製の屋根を架装したタイプも存在した。今なお本国では、農業や建設業など、さまざまな現場で働くクルマとして親しまれている。つまりハードトップは、単なる変わり種ではなく、むしろランドローバー本来の姿を色濃く残した一台なのである。
日本仕様は「110ハードトップ X-DYNAMIC SE D350」のみで、パワートレーンには3リッター直列6気筒ディーゼルターボを搭載する。商用車だからといって装備が簡素なわけではない。大型のセンターディスプレイをはじめ、20インチアルミホイール、メリディアンのサウンドシステム、白く塗り分けられたコントラストルーフなど、プレミアムSUVにふさわしい内容がそろう。今回の試乗車には、オプションのエアサスペンションパックも装着されていた。
走り出してまず印象に残るのは、その堂々とした外観からは想像しにくい軽やかな身のこなしだ。大柄なボディを意識させない素直なハンドリングに加え、路面の凹凸をしなやかに受け止める足回りも心地よい。試乗車に備わるエアサスペンションは、荒れた舗装路でも不快な突き上げを抑え、ゆったりとした乗り味をもたらしてくれる。タフなオフローダーでありながら、長距離を快適に移動できる懐の深さは、現代のディフェンダーならではの魅力といえる。
直列6気筒ディーゼルの洗練されたフィーリングも、このクルマの上質さを支えている。低回転から湧き上がる豊かなトルクによって、重い車体を無理なく加速させる一方、回転の上昇は滑らかで、エンジン音もよく抑えられている。アクセルを深く踏み込まなくても余裕を持って速度を高められるため、高速道路での巡航にも落ち着きがある。積載能力を重視した実用車でありながら、運転する楽しさや移動の快適性に妥協していない。その二面性こそ、ハードトップの面白さだろう。
とはいえ、購入を考えるうえで気になるのは、やはり「2人乗り」という割り切った仕様だ。一般的なファミリーカーとして使うには不便だが、用途が明確な人にとっては、これほど頼もしい相棒もいない。例えば、職人が荷室に専用の棚を組み込み、仕事道具を満載して現場へ向かう。あるいは、大型犬を連れて郊外へ出かけるのも似合いそうだ。窓のないリアクォーターパネルにブランドロゴやショップのマークを描けば、洒落たビジネスカーにもなる。もちろん、広大なラゲッジスペースはゴルフバッグの積載にも十分な余裕があり、仲間の道具をまとめて運ぶゴルファーズエクスプレスとしても活躍してくれるはずだ。
もっとも、110ハードトップが日本ではかなりマニアックな存在であることに変わりはない。その実用性を生かし、日常の道具として使いこなせる人は限られるだろう。しかし、だからこそ惹かれるものがある。街でめったに出会わない希少性に加え、ランドローバーが受け継いできた本来の精神を、現代の快適性とともに味わえる。そんな特別なディフェンダーを日本でも選べること自体、クルマ好きにとっては、なんともうれしい話ではないだろうか。
ランドローバー ディフェンダー110ハードトップX-DYNAMIC SE D350  車両本体価格 1049万円(税込)ボディサイズ | 全長 4945 X 全幅 1995 X 全高 1970 mmホイールベース | 3020 mm車両重量 | 2410 kgエンジン | 直列6気筒 ディーゼル ターボ排気量 | 2993 cc最高出力 | 350 ps(258 kW)最大トルク| 750 N・mお問い合わせ先www.landrover.co.jp
Text : Takuo Yoshida

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