メルセデス・ベンツの4ドアクーペ「CLA」が生まれ変わり、日本上陸を果たした。Aクラスをベースとする派生モデルとして2013年に誕生し、初代、2代目ともに流麗なシルエットを特徴としてきた。3代目も4ドアクーペという基本コンセプトを受け継ぎながら、その姿から走り、室内空間に至るまで大きな進化を遂げている。
まず目を引くのは、メルセデスの新たなデザインを感じさせるフロントマスクだ。中央にスリーポインテッドスターを据えたグリルという伝統的な構成を踏襲しながら、左右のヘッドランプを結ぶようにラインを配することで、ワイドでシャープな表情をつくり出している。サイドに回れば、弧を描くようにリアへ流れていくルーフラインがCLAらしさを主張する。低く構えた4ドアクーペならではのプロポーションには先代とのつながりを感じるものの、中身は一新された。基本骨格には、新世代プラットフォームのMMA(メルセデス・ベンツ・モジュラー・アーキテクチャー)を採用。電動化を見据えつつ内燃機関にも対応する設計で、試乗した1.5リッター直列4気筒ターボ+48Vマイルドハイブリッド仕様では、その新しい思想をエンジン車の感覚で味わえる。
ドアを開けると、エクステリア以上に世代交代を実感する。水平基調のダッシュボードが室内をワイドに見せ、試乗車に装着されていた「MBUXスーパースクリーン」は、運転席から助手席までディスプレイが連続するような景色をつくり出している。単に画面を大きくしただけではない。表示は鮮明で、グラフィックの動きも滑らか。タッチ操作への反応も素早く、スマートフォンを扱うような感覚で各機能へアクセスできる。物理スイッチを減らしたインテリアは好みが分かれる部分でもあるが、実際に触れてみるとメニューの切り替えはスムーズで、視覚的にも操作の流れを把握しやすい。
そして何より印象に残るのが、室内に漂う雰囲気だ。大きなスクリーンによるデジタル感と、4ドアクーペらしい低めの着座位置が組み合わさり、一般的なコンパクトセダンとは異なるコックピット感がある。華やかな先進性を打ち出しながら、ドライバーを中心に空間が構成されていることもCLAらしい。
スターターボタンを押し、街へ走り出す。最初の数百メートルで思わず「おっ」と感じたのは、乗り味の変化だった。ボディをキュッと引き締めたコンパクトな感覚は従来モデルにも通じるが、タイヤが路面を転がり始めた瞬間から伝わってくる感触には、ひと回り大きなクルマを思わせる落ち着きがある。ステアリングを切った際の動きにも軽薄さがなく、路面から入力を受けてもボディが余計に揺さぶられない。どっしりとしているのに鈍重ではない。その絶妙なバランスが、走り始めから上質さを感じさせる。かつてのメルセデスには、ドアを閉めた瞬間やステアリングを握っただけで伝わってくる独特の重厚さがあった。新型CLAの乗り味には、そんなブランドの記憶を現代的に解釈したような感覚がある。
一方で、アクセルを踏み込めば印象は軽快な方向へ変わる。直列4気筒ターボは最高出力190ps、最大トルク300N・mを発生し、30psのモーターを組み合わせる。発進直後から力の立ち上がりは滑らかで、排気量を意識させる場面は少ない。特に好印象なのが、アクセル操作に対するパワートレーンの反応だ。信号から走り出すときや、流れに合わせて速度を上げていく場面ではモーターがさりげなくエンジンをアシストする。8速DCTの変速も含めて動きが途切れにくく、ドライバーは電動化を強く意識することなく、必要な力を自然に引き出せる。
速度域を上げると、低く構えた4ドアクーペらしい身のこなしがいっそう際立つ。ステアリング操作に対する反応は素直で、車体の向きが自然に変わっていく。それでいて過度にスポーティさを強調するのではなく、静粛性や乗り心地まで含めて全体を丁寧に整えている点に好感が持てる。印象的なのは、軽快さと安心感が無理なく両立していることだ。取り回しやすいサイズでありながら、走りには上位モデルを思わせる落ち着きがあり、日常の移動を穏やかで質の高い時間へ変えてくれる。
静粛性も、このクルマの印象を支える大きな要素だ。街中ではエンジン音が前に出すぎず、ロードノイズもよく抑えられている。会話を邪魔しない穏やかな室内と、路面の凹凸をしなやかに受け流す足まわりが、ボディサイズ以上の上質さを感じさせる。コンパクトクラスであっても、安全性や走行性能、乗り心地にメルセデスとしての基準を持ち込む。その考え方は新型CLAにも息づいている。そこへデジタル化と電動化という新しい価値が加わり、先進機能を単なる装備ではなく、走りや居心地の良さとして実感できる点が新世代らしい。
華やかなデジタルコックピット、流れるようなシルエット、扱いやすいサイズ。そうした分かりやすい魅力の奥に、新型CLAはメルセデスらしい実直なつくり込みを備えている。 メルセデスへの入り口という言葉だけでは、このモデルの価値は語りきれない。4ドアクーペの美しさと日常性、軽やかな身のこなしと落ち着いた乗り味。その相反する要素を自然にまとめ上げたところに、新型CLA 220の魅力がある。
メルセデス・ベンツ CLA 220 車両本体価格 687万円(税込)ボディサイズ | 全長 4730 X 全幅 1835 X 全高 1470 mmホイールベース | 2950 mm車両重量 | 1670 kgエンジン | 直列4気筒ターボ排気量 | 1498 cc最高出力 | 190 ps最大トルク| 300 N・mモーター最高出力 | 30 psモーター最大トルク| 85 N・mお問い合わせ先www.mercedes-benz.co.jp
Text : Takuo Yoshida