株式会社レガールファクトリー代表の長野伸哉です。
石川県金沢市で、ペットフードブランド「CHIEN-CHIEN(シアンシアン)」を手がけています。ドッグフード「シェフドッグ」をはじめ、犬や猫のフードを作っています。
始まりは2002年、野々市市で開いた小さなトリミングサロンでした。
2016年には自社工場を建て、今は生の肉や魚を練り込み、低い温度で時間をかけて乾かす作り方を続けています。
手間も時間もかかるこの作り方を、なぜ選び続けているのか。これまでの歩みとあわせてお話しします。
トリミングサロン「CHIEN-CHIEN(シアンシアン)」
2002年、私は建設会社を辞め、トリマーの妻と二人で野々市市にトリミングサロンを開きました。店名の「CHIEN-CHIEN(シアンシアン)」は、フランス語で小さな子どもが使う「わんわん」という意味です。
お店を始めて驚いたのは、皮膚のトラブルやアレルギーに悩むワンちゃんの多さでした。かゆみ、フケ、抜け毛。体調がすぐれないという相談もたびたび受けました。
「うちだけじゃないんだ」
そう思いました。
実は、わが家のダックスフンドのララも、子犬の頃から体が弱く、入退院を繰り返していたんです。
このときはまだ、自分たちがフードを作ることになるとはまったく思っていませんでした。
わが家には、ダックスフンドのララとチワワのキキがいました。なかでも、体の弱いララのことがいつも気がかりでした。
ある夜、ララが急に倒れました。歯茎は真っ白。知り合いの獣医師のもとへ駆け込むと、命に関わる状態だと言われました。原因不明の難病だと分かったのは、検査の結果が出てからです。
評判の良いドッグフードを試しても、ララの様子はなかなか変わりません。トリミングサロンでも、同じように健康不調で悩む飼い主さんの声が絶えなかったことを覚えています。
「このごはんで、本当に大丈夫なのだろうか」
私は毎晩、ドッグフードの原材料や作り方を調べるようになりました。
そうして出会ったのが、1冊の本で紹介されていた、数名で営む小さなフード工場です。体に不要なものは使わず、一つひとつ丁寧に作る。その姿を見て「探していたのはこれだ」と思いました。
2003年、その工場に作ってもらう形で、ドッグフード「シェフドッグ」の販売を始めました。
最初はトリミングサロンでサンプルを配るところから。手に取ったお客様の口コミで少しずつ広がり、2005年には通信販売も始めました。
ララはその後も何度も体調を崩しながら懸命に生き、最後は病気の再発で見送りました。
「自分の愛犬に与えられないものは作らない」という基準
「自分の愛犬に与えられないものは作らない」
私たちがずっと大切にしている言葉です。
私は話が長く、「こだわりを一言で」とよく頼まれてきました。生肉がどう、製法がどうと説明していると、とても一言には収まりません。
そんな中で自然に口にするようになったのが、この言葉でした。根っこにあるのは愛犬への思いです。やっぱり、長生きしてほしいし、元気でいてほしいんです。
だから、シアンシアンのフードには、次のものを使っていません。
肉骨粉(食用の肉をとったあとの骨や皮などを、高温で処理して粉にしたもの)。エトキシキン・BHA・BHTなどの合成酸化防止剤。防カビ剤、合成着色料、香料、合成保存料。
酸化防止剤は、決められた量の範囲なら使ってよいものです。それでも私たちは、賞味期限が短くなっても使わないと決めました。
作り置きはせず、少しずつ作ってできるだけ早くお届けしています。
肉と魚は人が口にできるものを産地から仕入れる
シアンシアンのドッグフードの中心になる肉と魚は、人が口にできる品質のものを、できるだけ地元から仕入れています。
肉は金沢市の天狗中田産業株式会社様から。
天狗中田産業株式会社 河村様(右)
魚はJFいしかわ(石川県漁業協同組合)様から。
JFいしかわ様の金沢港での水揚げ
届いた原料は、今も私が自分の目で確かめています。
ただ、最初から仕入れ先が見つかったわけではありません。「ペットフード用に」と頼むと、断られることのほうが多かったんです。「うちの名前は出さないでくれ」と言われることもよくありました。
魚の仕入れ先が決まったのは、ダメ元で漁協に相談に行った日のことでした。話をしているうちに、商談に入ってくれた方の奥さんが、トリミングサロンのお客様だと分かったのです。
「長野さんのところのフードに使ってもらえるなら」
そのひと言から、今に続く取引が始まりました。
たくさん獲れて値が下がった魚や、脂が少なく市場では値がつきにくい魚も、フードには向いています。漁協にとっても私たちにとっても無理のない形で、取引が続いてきました。
さつまいもは、金沢市の有限会社かわに様が育てる五郎島金時を使っています。秋に収穫して貯蔵した芋を、ゴールデンウィーク頃まで使うのが毎年の流れです。
有限会社かわに様の五郎島金時の収穫風景
自然を相手にする原料は、毎年同じだけ手に入るとは限りません。
能登半島地震のあとは魚が入らない時期もありました。作る量が増えた今は地元の原料だけでは足りず、ほかの地域の取引先にも支えられています。
それでも、地元で手に入るものは地元から。この考えは、これからも変えずにいたいと思っています。
国産・無添加ドッグフード「シェフドッグ」
シェフドッグは、どんな犬種・年齢にも合う「オールミックス」という種類から始まりました。その後、子犬向けの「パピー」と、体重が気になる子向けの「ライト」を作りました。
トリミングサロンや電話で特に多かったのが、アレルギーの相談です。
鶏肉が合わない子には「ビーフ」を、牛肉が合わない子には「チキン」を。両方合わない子のために馬肉の「ホース」を、肉がすべて合わない子のために魚の「フィッシュ」を作り、今の7種類になりました。
どれを選べばいいか迷う方には、検査をしていなければまず「オールミックスから」とお伝えしています。
粒の大きさは3つです。
基本は直径約6mmの小粒で、体の大きな子には約8mmの大粒。もっとも小さい約4mmの極小粒は、お客様のひと言から生まれました。
「6mmだと噛みにくそうだから、毎日叩いて粉々にしてあげているんです」
そう話してくれた飼い主さんがいました。チワワが大流行した頃に家族になった子たちが、一斉に年を重ねていた時期でした。
歯が弱くなった小さな子でも食べやすいように作った極小粒は、7歳以上の子向けの「わんこのきちんとごはん」に使っています。猫用には小粒の「シェフキャット」も作っています。
1時間で乾く工程に約12時間をかける理由
ドライフードは、高温で一気に乾かせば1時間もかからずに仕上がります。ただ、それは乾燥というより、焼くような状態だと私は考えてきました。
シアンシアンの工場では、穀類を使う直前に製粉し、朝一番に生の肉や魚をミンチにして混ぜ合わせます。
生肉を練り込む工程
高温をかけずに粒の形にしたら、70〜80度ほどの温度で、一晩かけて乾かします。
時間は平均で約12時間。冬は15時間を超え、夏は10時間ほどで乾くこともあります。風味や栄養をできるだけ損なわず、酸化を抑えるためにこの時間をかけてきました。
乾燥機に並んだフード
生の原料は、脂や水分の量が毎回少しずつ違います。ロットごとに調整が必要で、色や形が少し変わることもあります。
乾燥には、広い場所も欠かせません。時間だけを考えれば、1種類を大量に作って短時間で乾かすのがもっとも効率的です。
しかし、私たちはあえて真逆をやっています。
検品から梱包、発送まで、すべて自分たちの手で行っています。
フードを検品する様子
この作り方を、自分たちの手で続ける。そのために建てたのが、今の本社工場です。
ほぼ全員に止められて建てた自社工場
2003年から十数年、シェフドッグは小さな工場で作ってもらっていました。
自分たちで作ると決めたのは2016年。借入をして、金沢市に本社工場を建てました。
相談した人のほとんどが「リスクが高い。やめておけ」と止めました。ただひとり背中を押してくれたのが、創業の頃からお世話になってきた工場の社長です。
「大変な思いもするかもしれないけど、絶対成功するよ」
数人で工場を回していた頃から苦労を重ねてきた姿を、私はそばで見てきました。その人の言葉だったから迷わずに決められたんです。
工場が動き始めたとき、作り手は私ひとりでした。従業員を雇う余裕はなく、うまくいくかどうかも分かりません。
1回に作るのは100kg。そのための原料を自分で製粉し、煮干しを砕いて粉にし、検品する。1日作ったら、次の1日は原料の仕込みに使う。最初の半年は、土日も休まず工場に通いました。
思った形に仕上がらず、失敗が続きました。1日に400kgを作れるようになるまで、さらに時間がかかりました。
朝5時に工場へ行き、片づけを終えて帰るのは夜中の0時。そんな日が3年ほど続き、製造が軌道に乗ったのは2019年頃のことです。
それでも、この時期を苦しかったとは思っていません。
自分が作ったものを、お客様が評価して注文してくださる。面白いと思う気持ちのほうが強かったからです。
工場が2つに増えた今、取り組んでいること
2021年には、能美郡川北町に第二工場ができました。
今は自社のフードに加えて、考え方の合う会社から頼まれたフードも作っています。組む相手を決めるとき、会社の大きさよりも、ワンちゃんやネコちゃんを大切に思っているかどうかを見ています。
ここまで来られたのは、一緒に働く仲間がいたからです。
実は、私は結構ポンコツなんです。それでも、ついてきてくれる人たちがいます。
スタッフから「家を建てました」「子どもが生まれました」と聞くたびに、まだまだ頑張らないといけないと思います。
今、2つの工場はどちらも手いっぱいです。
作り方は変えずに、作れる量を増やす。それがこれからの課題で、一緒に働く仲間も募集しています。猫用のフードも、もっと良くしていきたいと考えています。
10年後も、ワンちゃんやネコちゃん、そして飼い主さんから声をいただける、今と同じような会社でありたい。
最後に、愛犬のごはんに悩んでいる方へ。
ドッグフードには、合う・合わないがあります。気になったら、一度試してみてください。持病や体調のことで気になることがあれば、いくらでも相談に乗ります。
※記事内の写真は各社様の許諾を得て掲載しています。
会社概要
株式会社レガールファクトリー
代表者:代表取締役 長野 伸哉
創業:2002年(トリミングサロン「CHIEN-CHIEN」を開業)
設立:2007年6月11日
本社・本社工場:石川県金沢市森戸1-104
第二工場:石川県能美郡川北町
事業内容:ペットフードの製造・販売、ペットフードの受託製造(PB・OEM)、トリミングサロンの運営(石川県野々市市)
URL:
CHIEN-CHIEN(シアンシアン)のオンラインショップ
公式オンラインショップ: