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「お金を出して終わり」では、社会は変わらない。助成する側の視点から紐解く「マイリリーフ」の可能性と社会的インパクト
PR TIMES STORY
2026.11.04 11:00
アプリのダウンロードを必要とせず、LINE上から気軽に鼻・目・喉のセルフケアを体験できる「マイリリーフ」。このサービスを運営するミンイー財団が目指しているのは、単に支援を届けることではなく、その先にある「人の変化」を生み出すことです。
同財団が推進する助成事業(Grantmaking)では、NPOが現場で感じていながら、まだ形になっていない課題の整理から伴走し、取り組みの効果を検証しながら、そこで得られた学びを次の支援へとつなげています。
本記事では、ミンイー財団が実践する助成事業の考え方や具体的な事例を紐解きながら、「マイリリーフ」の無償提供に込められた想いについて、助成事業の責任者を務めるJessicaさんに話を聞きました。
>> 【マイリリーフを見る】
「資金を届ける」だけではない。NPOと共に“変化”を生み出す支援のかたち
── ミンイー財団の活動に関わることになった経緯やその理由を教えてください。
私は2024年にミンイー財団に参画しました。それまでは数年間ビジネスの世界で働いた後、社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)に転職し、ビジネス手法を活かして障がい者の雇用を生む事業に携わっていました。
そのなかで、自分が本当に情熱を持てるのは「人が内側から変わっていくこと」だと確信しました。同時に、ビジネスで培った戦略設計や仮説検証、リソースを集める力も、社会課題の解決に活かせるのではないかと感じるようになったんです。
台湾はアジアでも早くから社会福祉制度を整備してきた地域です。しかし現在、社会は非常に速いスピードで変化しており、制度やルールの見直しが追いつかず、従来の支援の仕組みだけでは対応しきれないニーズも生まれています。特に切実なのは、支援の仕組みが適していないと判明するまでに数年単位の時間を要する「タイムラグの問題」です。
NPOのリーダーが掲げる夢やビジョンは、何年もかけて多くの人に引き継がれていく大きなテーマです。私が今のキャリアを選んだのは、そうしたリーダーたちを後押ししたいと考えたからです。
戦略を一緒に考え、できるだけ早く試しながらより良い方法を見つけていく。必要であれば企業や行政など、分野を超えて人やリソースをつないでいく。
そうすることで、人を中心とした支援サービスに新たな可能性を生み出せるのではないかと思っています。
── そもそも財団の「Grantmaking(助成事業)」とは、どのような考え方に基づくものなのでしょうか?一般的な寄付との違いも含めて教えてください。
一般的な寄付は、信頼する活動主体に資金を託し、その活動の継続や発展を支える仕組みです。一方、私たちの助成事業は「この資金でどのような変化を生み出したいのか」という問いから始まります。それを明確にした上で、誰を支援し、どのくらいの期間取り組み、どこまでを対象とするかを決定し、最終的に「本当にその変化が生まれたか」を検証するところまで共に進めていくんですね。
だからこそ、ミンイー財団の役割は資金提供で終わりません。パートナーシップ開始の段階からNPOと一緒に課題を整理し、方向性や成果を測る指標を導き出します。取り組みが始まってからも、想定外の課題や変化が出るため、その都度対話を重ね、必要に応じて計画を見直していきます。
私たちは、パートナーが新たな取り組みに挑戦したり、実績ある取り組みを拡大したりすることを推進しています。その過程ではマイルストーンを設定し、チームも現場に寄り添いますが、何より大切にしているのは団体自身の「意思」と「主体性」です。答えを押しつけず、議論を深めながら、団体自身が目指す変化を実現できるようになることを後押ししていく関係性を大切にしています。
「目指す方向性」や「解決したい課題」が明確になっていることが重要
── ミンイー財団はこれまで台湾および東南アジアで多くの助成を行ってきたと伺いました。支援先を選ぶうえで、最も大切にしている基準は何ですか?
私たちが支援先を検討するときに、何よりも大切にしているのは、提案書の内容以上に「人」なんです。リーダーやチームがどのような未来を実現したいのか、そのために何を目標として掲げているのか。さらに、目指す方向性が具体的に絞り込まれているかを、対話を重ねながら丁寧に見ていきます。
もう一つ大切なのが、「解決したい課題が明確になっているか」ということです。私たちは、団体の規模や活動分野だけで支援先を決めることはありません。それよりも「自分たちはどこを目指しているのか」という“北極星”を、団体自身の言葉で語れることがとても重要だと考えています。それさえ明確になっていれば、私たちもパートナーとしてアイデアを出し合い、試行錯誤を重ねながら取り組みをより発展させていくことができるんです。
私たちが支援するテーマは限定していませんが、これまでの実績では、アウトドア体験や自然セラピーを活用する団体への助成が多くなっていますね。自然と触れ合うアプローチは、支援対象者が自ら現状を切り拓く力や前向きな変化を生み出すうえで、非常に高い効果があるからです。
── これまでの助成事業を通じて、どのようなソーシャルインパクトが出ているのかについてもお伺いしたいです。
前提として、支援した団体の数や助成金額そのものは成果ではないと考えています。これらはあくまで投入した「インプット」に過ぎず、私たちが本当に重視しているのは「何が変わったか」という「アウトカム」なんです。
そのため、プロジェクトを振り返る際は3つの視点から変化を見極めるようにしています。まずは「パートナーであるNPOが、当初目指していたビジョンを実現できたか」ということ。次に「限られた資金や人材、時間の中で、効率的かつスピード感を持って達成できたか」を見ています。そして3つ目は、「私たちの支援を通じて、NPOという組織自体が成長できたか」という点を追うようにしていますね。
課題を見つけるところから伴走する。ミンイー財団が大切にする3つのアプローチ
── 具体的な支援事例があれば教えてください。
具体的な変化が分かりやすい事例として、一つはNPO団体の「Dream Park(夢想城)」の取り組みが挙げられます。カヌーを通じたパートナーシップにより、これまでに1,000人以上の障がいのある方々が水上での体験に参加しました。その多くの方にとって、海へ出ること自体が生まれて初めての大きな体験だったんです。
もう一つは「張秀菊社会福祉事業基金会」の事例です。同団体が長年培ってきたツリークライミング(木登り)による若者支援のノウハウを、学校教育の現場に横展開し、これまでに小・中・高等学校の教員およびスクールカウンセラー100名以上にトレーニングを実施しました。一つの団体で培われた支援の知見が、学校という別の場所にも広がっていく。こうした変化も、私たちが大切にしている成果の一つなんです。
さらに、私たちが取り組んでいるのが「Mingyi Mindset Camp(明怡マインドセット・キャンプ)」です。普段は現場の仕事に追われているNPOのリーダーたちに、いったん日常から離れてもらい、花蓮(ファーリェン)にある当財団の拠点で2日間、じっくり対話する時間を設けています。そこでは、コアメンバー同士で普段話せないテーマについて深く話し合ったり、全く異なる分野の団体と出会って新しい視点を得たりしています。この試みの価値は「参加者の数」ではなく、キャンプを通じて過ごした時間がその後の活動や意思決定にどんな変化をもたらしたのかという「交流の深さ」にあると考えています。
── なぜ、資金の提供だけでなく、課題のリサーチやリソースの統合まで踏み込んでいくのでしょうか?
リソース(資金や人材)の提供以上に満たしづらいニーズがあります。それは、「団体の抱える課題を深く捉え直すプロセスに、伴走してくれる存在がいない」ということなんです。
台湾や国際社会には、戦略コンサルタントや専門ボランティアのマッチングなど、NPOを支援する仕組みがすでにたくさんあります。しかし、そうした支援の多くは、「団体自身がすでに課題を整理できていて、何をすべきかが決まっている」ことを前提としているんですね。
NPOと接する中で私たちが気づいたのは、本当に支援が必要なのは「何かを変えたいけれど、うまく言葉にできない」という手前の段階にあるということです。そうした段階にいるときこそ、隣で一緒に考えてくれる存在が必要だと感じています。
ミンイー財団では、まさにそこから関わることを大切にしています。
すでに見えている課題に対して答えを提供するのではなく、そもそも「何が課題なのか」というところから一緒に考えていくんです。私たちはパートナーと時間をかけて信頼関係を築き、特定のテーマや解決策を押しつけることなく、必要なところから一緒に考えていく。そうした立ち位置だからこそできる支援があると思っています。
この支援アプローチは、以下の3つの柱によって実践されています。
①調査(Research)
助成を始める前に、早期発達支援、思春期のメンタルヘルス、知的能力障がい者の社会参加といった課題を研究し、政策や既存のNPOによる支援が行き届いていないギャップを特定します。
②検証(Validation)
例えば、「Dream Park」ではカヌーを活用したプログラムを開発した後、次のフェーズで参加者をさらに増やし、200人を対象にウェルビーイングに関する調査を行いました。調査の結果、カヌーには他の活動と比べても、障がいのある方々の幸福感や前向きな気持ちに、より長く続く変化をもたらす可能性があることが分かってきました。こうして実際の効果を確かめながら、次の取り組みにつなげていくことを大切にしています。
③リソースと記録(Resources and records)
プロジェクトを進める中で専門的な知識や技術が必要になれば、企業や専門家など、NPO以外の分野からも力を借ります。そして、パートナーと一緒に一つひとつの目標に取り組みながら、成功・失敗の双方のプロセスを正確に記録していきます。これは、次に続く団体が、ゼロから試行錯誤する必要をなくすためです。
一人の変化を、次の誰かへ。体験や学びが循環するエコシステムへ
── 助成先とともに変化し続ける「エコシステム」をつくるうえで、最も難しいと感じていることは何ですか?
一番難しいと感じているのは、「変化のスピード」です。社会制度や当事者を取り巻く状況は、NPOが学びを深めるスピードよりもずっと早く変わっていきます。それなのに、「このやり方は上手くいかなかった」と判断できるまでに3年もかかってしまうことも少なくありません。エコシステム全体が共に成長していくには、「何が有効で、何が有効でないか」を早期に把握する成熟した仕組みがまだ存在していないのが現状です。
それに加えて、「支援の規模をどう広げるか」というスケールの観点も課題です。深い伴走には手間も時間もかかるため、私たちが直接支援できる団体の数には限界があります。だからこそ、自分たちが得た気づきやノウハウを「自分たちを介さずに、いかに利活用してもらえるか」という問いを深く追求しています。
── 助成先のNPOと関わるなかで、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
とても印象に残っている、ある男性のエピソードがあります。2021年のタロコ号(太魯閣号)脱線事故で身体に障がいを負い、それ以来ほとんど家から出られない日々を過ごされていました。そんななか、知人に誘われて参加したのが、Dream Parkと共に開催した障がい者向けの海洋体験イベントでした。
そこでの外海でのカヌー体験がきっかけとなり、彼は再び家から外へと踏み出すことができ、定期的にスポーツセンターへ通うなど運動を再開できたのです。一人の人がもう一度外へ踏み出し、自分らしい生活を取り戻していく。そうした「変化が生まれる可能性」を、私たちは支えていきたいと思っています。
もう一つ、心に残っている事例があります。学校で「カウンセリングが必要」とされていた生徒たちが参加したツリークライミングのプログラムです。最初は教えてもらう側だった彼らが、経験を重ねるうちに周囲に教える側へと変わっていきました。年下の生徒から同世代の仲間、そして最終的には自分たちの先生にまで教えられるようになったんですね。
最も胸を打たれたのは、先生方の子どもたちに対する見方が変わったことでした。「支援が必要な生徒」という固定観念で見られがちだった子どもたちが、周囲をリードする姿を見せたことで、先生方の認識そのものが変わっていったんです。その後、生徒たちは文化祭で自分たちの体験ブースを運営し、得た収益を基金会に寄付しました。
助けられる立場から、誰かに手を差し伸べられる立場へ変わっていく。私たちが生み出したいのは、まさにこうした変化なんです。
必要とされるものを届け続ける価値。マイリリーフが無償提供にこだわる理由
── 財団運営のマイリリーフを無料提供し続ける背景の考えをお聞かせください。
資金提供者の視点から見れば、自団体のプログラム運営と助成金の交付は支援を届けるための「2つの選択肢」にすぎません。助成事業ではNPOというパートナーを介して支援対象者へアプローチし、マイリリーフでは当事者へ直接支援を届けるという違いですね。
マイリリーフは、当財団の「Healing Source Center」が開発・運営するオンラインケアサービスで、季節の変わり目における「むずむず・ぐずぐず」といった不快感に寄り添うものです。2021年に無償でサービスを開始し、2024年にはオンライン版を立ち上げ、2027年までに50万人への提供を目指しています。
私たちが着目しているのは、「利用者の状態が実際に変化したか」という点です。目・鼻・喉などの不快感に対するケアは、日常的なセルフマネジメント(自己管理)が不可欠ですが、そのモチベーションを保つのは容易ではありません。もし利用者が「お金を払う価値があるか」を最初に判断しなければならないとしたら、本当に困っている人たちがスタートラインにすら立てなくなってしまいます。私たちが無償にこだわるのは、一番最初のハードルを完全になくしたいからなんです。
もし有料化を検討すれば、その瞬間からチームの意識は「どうすれば利用する人の不快感を和らげ、心地よく過ごしてもらえるか」ではなく「どうすればお金を払ってもらえるか」へとシフトしてしまうでしょう。
つまり、ミンイー財団の存在意義は「収益性を追求するビジネスモデルでは達成できない価値を実現する」ことにあります。市場の原理だけではカバーしきれない、それでも人々が真に必要としている領域こそ、私たちが果たすべき役割だと考えています。
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