「人が喜んでくれるのが嬉しい」。生来の気質と過去の住宅営業経験が生む、若手営業社員育成の原動力

2026.10.29 10:00
企業が持続的に成長し競争力を維持するためには、人財育成は不可欠な要素。多くの企業が充実した研修制度や独自の育成プログラムを開発し、社員の成長をサポートしている。


住友林業も人財育成に力を注ぐ。新卒者向けの3週間におよぶ軽井沢研修を皮切りに、若手社員からマネジメント職層にいたるまで定期的にフォロー研修を行なっている。


その中でも特に、「住友林業の家」に関わる社員の人財育成を担っているのが、人財マネジメント部だ。2026年4月の組織改編により、住宅事業本部の事業戦略に基づいた人事施策や機能を集約して生まれた。いわば、人財の育成・評価・配置などを一貫して企画・運営していく組織だ。


そんな人財マネジメント部のスタッフの一人に、新卒入社で自身も住宅営業職の経験を持つ山田聡太郎がいる。彼が担当するのは主に入社1年目から3年目の住宅営業職の育成だ。生まれ変わった組織で、山田はどんな想いで人財育成と向き合っているのだろうか?
インタビューに笑顔でこたえる山田
目の前のお客様が喜んでくれて、関係性が長く続く── それが住宅営業の仕事
広島県出身の山田は住宅営業職として入社し、最初の配属先は広島支店だった。

住宅営業職を選んだ理由を山田はこう語る。
「気づいたときには“目の前の人が喜んでくれることが嬉しい性格 ”で、人の悩みに寄り添うような仕事が自分に向いていると思いました。関係性が長く続けられる仕事は何かと考えたとき、思い浮かんだのが住宅の営業職でした。家を建てた後も長いお付き合いをすることになりますから」

学生時代は部活やゼミで何かと幹事を任されていたという山田。頼られると“何とか力になりたい”という気持ちが出てくる。社会人になってからも、周囲を巻き込む力が必要となる組合の仕事などを自然と任されるようになった。
「困った人を放っておけないところがある。関わる人たちに喜んでほしくて、自分にできることは何かな、と考えてしまう。住宅の営業職は向いていると思いました」
苦悩の時代と忘れられない失敗
入社して最初の1、2年は上司のフォローもあり、営業成績で苦しむことはなかった。3年目に入り、一人で営業を任されるようになると同時に壁にぶつかる。


「お客様とのアポイントメント(面会や打ち合わせの約束)が取れない時期が半年くらい続いて。苦しくて自分には営業センスがないと真剣に悩みました。上司と話していて涙がこぼれたこともありました」


そんな苦悩の時代には多くの失敗もしたという。なかでも忘れられない失敗がある。


実家の敷地内に息子さんが新築される事例で、お母様からの援助資金を増額し、その分融資額を減額したいとの連絡をいただいていたが、銀行休業日と重なっていたこともあり失念してしまい、手続きへの反映ができていなかったという。ローン契約当日に発覚し、その場は繰り上げ返済することで納得していただけたものの、後にお母様からご連絡があり、「繰り上げ返済をしても登記上の抵当権の額は残り続けてしまう。あなたを信頼していたのに」と涙ながらに伝えられた。後日、正式な銀行手続きを経て借入額を減らし、減額した抵当権の金額で登記することができた。
当時を振り返り、山田は「どこかで単なる手続きとして捉えてしまったところがありました。でも、お客様にとっては人生の一大事。家づくりへの覚悟やご不安、責任の重さに向き合う経験となりました」と話す。


家が完成し、引き渡した後も年末の挨拶を欠かさなかった山田。後述する異動の挨拶に訪れた際には「担当が山田さんだから住友林業で建てようと思った。本当に楽しそうに営業していたから、新しい仕事も向いていると思う」と温かい言葉をかけてもらったという。


「ご迷惑をおかけしましたが、真摯に向き合い続けてよかったと感じた瞬間でした」
広島支店で担当した物件の一例
“お客様のことだけ”を思って行動する
「自分は営業センスがあるわけではない。」
そう感じながら、それでも目の前の課題と向き合い続ける苦悩の日々を送る山田を救ってくれたのは、先輩や上司のアドバイスだった。


「先輩や上司の方々には本当によくしてもらって、信頼できる方々ばかりでした。悩みを相談したところ、自分ができることに意識を向けたらどうか、と言われたんです。他人や周囲を変えようとするのではなく、山田らしく自分にできることに最大限集中しろと──」

他の先輩からもいろいろなアドバイスをもらい、気づいたのは、アポイントを取らなければいけない、ご契約いただかなければいけない、そんな思いにがんじがらめになっている自分だった。自分はなぜこの仕事を選んだのか、あらためて考える機会にもなったという。
「アポイントをとれるか、契約していただけるかはお客様次第。そこではなくて、“お客様にとって本当に役立つ情報やご提案は何か”だけを考えて行動するようにしました。お客様にメリットがあると思うので、よかったらお時間いただけますかというスタンスに変えたんです」


すると──自然とアポイントが増え、契約をしていただけるようになっていったという。翌年には自身初の2桁の契約を実現。その後、広島支店でトップの営業成績を達成するまでに。この経験は、後に人財育成に携わるようになったときにも生きることになる。
研修の様子
突然の異動で頭が真っ白に。若手社員たちと向き合う中で見つけた、新たなやりがい 
営業担当として9年が過ぎた頃、山田に転機が訪れる。人財開発部(現・人財マネジメント部)への異動だ。


「突然のことで驚きました。当時は営業という仕事を心から楽しんでいましたし、全国には私より上位の成績の方もたくさんおられたので、ほんとに自分でいいのかとも思いました」


山田が担当するのは、主に入社1年目〜3年目までの若手の住宅営業職向けの定期的な研修で、内容は営業プロセスや対人スキル、金融の知識、さらには構法やインテリア、エクステリアの知識など多岐にわたる。


「研修を一から創り上げたり、研修用の動画を撮影したり、営業時代には経験したことのない業務ばかりで、当初は戸惑いの連続でした。コロナ禍においては、研修のあり方そのものを再設計する必要がありましたし、もちろん、慣れない講師役を務めることも容易ではないと感じました」
時には手帳の使い方改善の話になり、愛用の手帳の写真を送ることも。
受講者の成長した姿を見るのが楽しみだと話す


そんな山田だったが、ほどなくして新しい仕事にやりがいを見出すことになる。きっかけは、研修を通した若手社員との交流の中にあった。知識も経験もこれから積んでいく若手営業社員たち。自身もそうだったように、悩みを抱えている者も多くいた。

「若手営業職の研修では、講師として教壇に立つだけでなく、さまざまな悩みを聞く機会も多いです ── 受講者から寄せられる悩みはどれもよく理解することができました。つまずくポイントがわかるというか、自分自身も営業時代に悩み、試行錯誤してきたことばかりだったんです」

さまざまな悩みを深堀りし、自分ならこうやって一歩を踏み出せたよ、改善につながったよ、と提案できるのがうれしかった。過去にたくさん悩みお客さまや社内の方々に学ばせていただいた経験が、こんなところで活かせるなんて不思議な気持ちだった、と山田は述懐する。

「私のアドバイスで、受講者が少しでも楽しく自分らしく仕事ができるようになれば。そんな思いが研修を担当する中でふつふつと湧いてきて。住宅営業って本当に楽しくてやりがいのある仕事なんだということを伝えたい、そう思うようになりました」
研修は毎回真剣勝負そのもの
受講者たちに愛される、兄貴のような存在
新たなやりがいを見出した山田は、営業時代に負けないくらい業務にのめり込んでいく。
「研修を終えるとくたくたになります。でも、それは心地よい疲れです」と山田は笑う。
そんな山田を受講者はどう見ているのだろう?─受講者にとって研修とは?─研修を終えたばかりの住宅営業職3年目の受講者に聞いてみた。


――3年目研修とは?
コンサルティング営業になるための、仕上げのような時期。住宅営業の仕事は現場でやりながら覚えていく部分も多く、2、3年目になると今更聞けないということも出てくる。それを研修で確認できるのがありがたいです。


――山田さんはどんな存在ですか?
上司というより、仲のいい先輩とか兄貴の様な存在。プライベートな話まで聞いてくれるのもうれしいです。新入社員研修からずっと寄り添ってもらえて、何でも相談できます。
インタビューに答えてくれた3年目受講者は皆、口を揃えて山田への信頼を語る
変わらない原点、それは “人を喜ばせること”
山田が大切にしている言葉がある。古代ギリシアの哲学者ソクラテスの言葉、“無知の知”だ。自分がすべてを知っているわけではない。先輩や他部署から教えてもらったことを伝えることもあるし、受講者から学ぶことも多いという。そんな謙虚な姿勢が、受講者の共感を得ているのかもしれない。

「営業時代は、お客様の不安や悩みを解決して、住友林業の家づくりの楽しさをお伝えし、大きなご決断のサポートをすることにやりがいを感じていました。今は、研修を通して受講者の不安を取り除いたり、悩みを一緒に解決したり、少しでも参考になる情報を提供したりして、本人が少しでも仕事をしやすくなったり、本人らしく生きられるようになったりするなら、それが私のやりがいと思えるようになりました」と山田は話す。


人財育成という仕事においても、“人が喜んでくれるのが嬉しい”という生来の気質が生かされているようだ。
研修では一人ひとりのペースに合わせて細部まで指導をおこなう
大きな目標があるわけではない。人とのつながりを大切に生きていきたい。
これからの目標や成し遂げたいことを聞いてみると━━━━。


「大それた目標を掲げるよりも、求められるところで力を発揮できたらいいと思っています。一人でも多くの悩みに寄り添いたい、それだけです」


シンプルに答えた後に、山田はこう続けた。
「結婚したことも、子どもを持ったことも、ましてや家を建てた経験もない若者が、人生経験豊富なお客様の家づくりに対する悩みや不安に寄り添うことは大変なこと。ただ、当社の若手営業は皆真面目で、お客様のために全力を尽くす姿勢は大きな強みでもあります。それを理解して、解決に向けて支えていくことが、今の私の役割です。研修を受けた受講者たちが、自分を見失うことなく、明日からお客様のために頑張るぞと思ってくれたら、うれしいです」


そんな山田に、最近うれしい出来事があったという。


「営業時代、広島県外にご自宅を建ててくださったお客様がおられまして。いつか泊まりに伺いますとお話ししていたのですが、昨年ようやく訪れる機会に恵まれました。あたたかく迎えてくださって、翌日は一緒に釣りを楽しみました。あの時間はもう、最高に幸せなひとときでした」


受講者はもちろん、営業時代のお客様と今も連絡をとり続けている山田にとって、ご家族が増えた報告や、お子様の進学の報告をもらうことが大きな楽しみだという。これからも人とのつながりを大切に、仕事を楽しみながら生きていきたいと話す。
受講者やお客様から届く山田へのメッセージには
どれも感謝の気持ちが込められている
「仲間とともに価値を届けたい」。先人の想いを受け継ぎ、未来の人財を育て続ける。
山田は自身の役割について、講師という立場で自分以外の多くの方々が積み重ねてきた知識や工夫、想いを、少しでもわかりやすく受講者へ届け、不安な背中を後押しすることだと語る。伝承者として後輩の育成に取り組んでいるのだ。


そんな山田から、若い営業担当へメッセージがあるという。
「一人で頑張らなくていい。私もずっと周りの力を借りてきました。設計やインテリア、生産、エクステリアの各担当や、先輩に同期。営業以外の部署にも多くの仲間がいて、みんなで支えています。だから、周囲のバックアップを信じて、必ず住友林業であればいい家づくりが提供できるともっと自信を持っていい。自信というのは自分を信じるだけではなく、会社や仲間を信じることでもあると思います」


「最高の価値」をお客様に届けたい。そのために社員全員で力を合わせる。━━━━ そういう文化が住友林業には脈々と受け継がれている。
設計や生産、インテリアなど多様な経験を持つ人財マネジメント部のメンバーとは
互いの得意分野を活かして指導にあたっている


最後に、山田はこう語った。
「今の私があるのは先輩方のおかげ。先輩が後輩をしっかり見守る文化も住友林業らしさです。あたたかく育ててもらった分、今度は私が後輩たちの面倒を見て恩返ししたいですね」

人財育成を通して、組織文化の伝承も担っていく。
育ててもらった恩をお客様へ、仲間へ、後輩へ。


山田の「人が喜んでくれるのが嬉しい」という生来の気質は、これからも多くの背中をそっと押し続けていく。

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