(左)SCOグループ 五十嵐さん、(右)KDDIウェブコミュニケーションズ 高橋
治療の手を止め、手袋を外し、受付に向かう――。
SCOグループは、目の前の治療と電話対応に追われる歯科医院の現場を、テクノロジーで変えようとしています。同社は「テクノロジーで『105年活きる』を創造する」をビジョンに掲げ、歯科医院向けのオールインワン経営プラットフォーム「paylight X」を展開。キャッシュレス決済サービス「paylight cashless」は全国約18,000の歯科医院(※)に導入されています。
※「paylight cashless」の導入医院数。2026年2月時点、株式会社東京商工リサーチ調べ
しかし彼らにとって、業務効率化は通過点に過ぎません。目指すのは、歯科医院を「痛くなったら行く場所」から「定期的に通う予防の場所」へと変える未来です。
なぜ数ある医療で「歯科」に着目したのか。サービスを開発する過程で直面したハードルを、コミュニケーションプラットフォーム「Vonage」を活用してどのように乗り越えてきたのか。
今回は、 SCOグループ取締役の五十嵐秀之さんと、KDDIウェブコミュニケーションズ(以下、KDDIウェブ)コミュニケーションDX部の高橋克己による対談から、理想の追求と技術の舞台裏に迫ります。
〈本日の対談者〉
株式会社SCOグループ 取締役・五十嵐 秀之さん
株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ コミュニケーションDX部 エバンジェリスト・高橋 克己
―― まず、「テクノロジーで『105年活きる』を創造する」というビジョンについて、その由来を教えてください。
SCOグループ・五十嵐さん:ここ10年ほど、世間では「人生100年時代」と言われるようになりましたよね。当社でも最初は「100年」を基準に考えていましたが、「世間と同じ100年ではなく一歩先へ進みたい」という想いから、あえてプラス5年した「105年」を掲げています。
また、「いきる」を「活きる」と表記しているのは、単に身体が存続する命の長さ(生涯寿命)ではなく、心身ともに自立して元気に活動できる「健康寿命」を延ばしたいからです。その想いがすべての根底にあります。
―― 歯科医院向けの事業へと踏み切った、最初の原点は何だったのでしょうか。
SCOグループ・五十嵐さん:きっかけは、会長の玉井がもともと健康寿命や生き方に強い興味を持っていたことです。その中で歯科業界の方々と接する機会があり、「むし歯や痛みがあってから駆け込む場所」という従来の対症療法的な歯科医療の在り方に疑問を抱いたのが原点でした。
人々の健康寿命を延ばす上で、口腔ケアは間違いなく重要な要素です。だからこそ、私たちは「DX」という言葉をあまり使わないようにしています。私たちの本質的な目的はDXそのものではなく、「いかに健康寿命を延ばすか」にあるからです。
そのためには「3ヶ月に1回、予防メンテナンスに通うのが当たり前」という社会の価値観そのものを変えていきたい。その未来を創り出すための手段として、現場である歯科医院さまを支える事業に踏み切りました。
さらにその延長でサッカークラブの保有やアスリート支援も行っています。一見事業と無関係に見えますが、目先の収益や売上だけにとらわれず、スポーツを通して予防歯科の価値観を社会全体に広げていきたいと考えています。
―― 「3ヶ月に一度、歯医者に通う」という習慣は、あまり浸透していないのでしょうか。
SCOグループ・五十嵐さん:そうですね。日本の人々の意識として、歯科医院へ予防通院する概念が浸透していない現状があります。
都内や若年層では定期的に歯科医院に通う習慣を持つ人が増えてきていますが、地方や年配の方ほど「むし歯や歯の痛みが出てからようやく行く」という対症療法がまだまだ当たり前です。
また同時に、歯科医師の高齢化などで担い手不足という構造的な課題も存在しています。
―― 現場における課題はどんな状況でしょうか。
SCOグループ・五十嵐さん:現場で大きな負担となっているのは、電話対応です。かかってくる電話の半分近くが予約に関するものなのですが、診療中はどうしても手が離せません。人員が限られている医院さまも多く、診療や受付業務をしながら電話対応も担うことになるため、「出られない」「出れば目の前の患者さまをお待たせしてしまう」という状況が日常的に起きています。
電話一本が予約機会そのものである歯科医院にとって、この取りこぼしは機会損失に直結します。
また、患者さま側にも定期的に通うハードルがあります。「次は経過観察に来てくださいね」と言われても、痛みが引くと足が遠のいてしまう。さらに、予防メンテナンスの予約は3ヶ月先など期間が空くため、どうしてもうっかり忘れてしまうわけです。そこにアプローチできる仕組みも必要でした。
「3ヶ月に一度、歯医者に行く」という予防の概念を浸透させるために
―― そうした課題感から、「paylight X」が生まれたのですね。
SCOグループ・五十嵐さん:はい。もともとはオンライン決済、予約管理などがそれぞれ別々のサービスとして存在していました。スタートアップにありがちな話ですが、スピード優先で一つ一つのサービスを立ち上げてきた結果、気づけば各サービスがバラバラに走っている状態になっていました。そこで、それらを1つに集約し、歯科医院の運営に必要な機能をワンストップで提供するプラットフォームとして生まれたのが「paylight X」です。
通信基盤をVonageが支え、歯科医院の課題解決と患者対応の質向上へ
―― 現場の課題解決に直結している「paylight X」の機能について、具体的に教えてください。
SCOグループ・五十嵐さん:現場の課題解決に直結しているのが、電話の自動応対で予約受付を行なう「AIでんわ」と、SMSやLINEで問い合わせ対応や予約リマインドを行う「AIメッセージ」という機能です。
実はそれぞれ、開発当初は大きな壁にぶつかっていました。まず「AIでんわ」ですが、当初はシナリオベースのAI音声応答サービスとして設計・構築を行っていました。そのため、決まったルートの案内はできても、患者さまごとの言い回しや不規則な問い合わせには対応しきれないという限界がありました。しかもシステムを更新するたびに電話の転送設定を変えていただく必要があり、医院さまにも大変なご負担をかけてしまっていました。
もう一つの「AIメッセージ」についても、当初SMS配信に使っていた海外プラットフォームでは、キャリア側にブロックされてメッセージが届かないというトラブルが発生していました。
―― 双方で大きな壁にぶつかっていたのですね。それらはどう解決され、どのような効果が生まれたのでしょうか。
SCOグループ・五十嵐さん:「AIでんわ」は、通信APIであるVonageを活用したことで、通信の仕組みとAIエンジンを切り離して開発できるようになりました。その結果、一度電話の転送設定を行ってしまえば、その後は歯科医院さまの手を煩わせることなく、裏側のAIだけを常に最新モデルへアップデートできるようになっています。これにより、患者さまごとの柔軟な言い回しにも対応できる、より人間に近い柔軟な電話応対が実現できるようになりました。
また「AIメッセージ」についても、Vonageを介した国内SMS配信に切り替えたことで、キャリア側にブロックされて届かないというトラブルがほぼゼロになり、到達率が大きく向上しました。
KDDIウェブ・高橋:どれだけ優れたAIがあっても、通信の土台が途切れてしまえば体験は台無しになってしまう。まさにそこが、通信を伴うサービスを作る企業様が一番苦労されるポイントですよね。
一方で、電話応対の裏側にある音声AIの開発は、本番運用に耐えるクオリティに仕上げるまで相当なご苦労があったのではないでしょうか?
SCOグループ・五十嵐さん:まさにそこが一番大変でした。実際の現場では想定外の会話も多いため、泥臭くトライアンドエラーとチューニングを重ねてきました。
特に細心の注意を払っているのが、AIが誤って診断をして医療行為に及ばないよう、厳格なガードレールで制御することです。また、AIが裏側の予約台帳を探す際にどうしてもタイムラグが生じてしまうので、無音でフリーズした印象を与えないよう、「少々お待ちくださいね」と自然に繋ぐ工夫なども凝らしてきました。
―― 単なる業務効率化ではなく、「人と話しているような自然な応対」 に徹底してこだわられていますよね。
SCOグループ・五十嵐さん:「AIだからこの程度でいい」という妥協したものは絶対に作りたくありませんでした。まず目指しているのが、人と話しているのと変わらないくらい自然な応対です。売り手の論理で「忙しいからAIを入れる」のではなく、あくまで患者さま目線のホスピタリティにこだわっています。
―― 通信基盤の部分を、Vonageに任せる意義はどんなところにあったのでしょうか。
SCOグループ・五十嵐さん:通信インフラの構築・運用は、自社単独では踏み込めない非常に重い領域です。そこをVonageにお任せできたからこそ、我々は本来注力すべき「患者さまや医院さまに向き合う体験づくり」に全力を注ぐことができています。
―― 実際にpaylight Xを導入された歯科医院さまからは、どのような声が届いていますか。
SCOグループ・五十嵐さん:「AIでんわ」を導入された医院さまからは、「診療中に電話を気にしなくてよくなった」「取りこぼしていた時間外の予約が拾えるようになった」といった嬉しいお声をいただいています。患者さまにとっても、何度もかけ直す必要がなくなるというメリットがあります。
また、AIメッセージについても、「定期メンテナンスの案内(リコールメッセージ)から想像以上の再来院につながっている」とご好評をいただいています。医院さまの安定した経営に直結するのはもちろん、結果としてメンテナンスに通う方が増えることにも繋がっているので、まさに我々が目指す通院習慣という「行動変容」に、少しずつ貢献できている手応えを感じています。
―― 今後の展望や、両社の取り組みに対する期待についてお聞かせください。
SCOグループ・五十嵐さん:理想は、地方で先生と受付スタッフ1人ずつで切り盛りされているような、いわば「街の歯医者さん」のような医院にこそ、当たり前に使っていただくことです。全国のすべての歯科医院にpaylight Xを行き渡らせることですべての人々に予防メンテナンスの概念を広げたいです。それでこそ我々のビジョンである「健康寿命105年」の実現につながると考えています。
また両社の取り組みに関しては、単に通信の仕組みである「Vonage」の提供に限らず、AIの精度向上のためにグループ内の音声AI専門企業をご紹介いただいたり、KDDIグループの実店舗を生かしたマーケティング領域でもご協力いただいており、大変心強く感じています。
KDDIウェブ・高橋:paylight Xのような社会を良くするサービスが今後さらに広がり、それを通信の裏側から支える存在として関われることに、とてもワクワクしています。
こうして技術やアセットも含めて互いの強みを活かし合い、共にサービス価値を高めていける関係性こそが、私たちが目指す共創のあり方です。これからも安定した通信基盤を提供することでSCOグループ様の挑戦を支援していきたいと考えています。
SCOグループの挑戦を支える、わたしたちの役割
私たちが日頃何気なく使っているサービスの裏側には、こうした想いと技術の組み合わせがあります。今回ご紹介したSCOグループ様のように、テクノロジーで社会課題を解決しようと挑戦する企業を、私たちは通信API「Vonage」で支えていきたいと考えています。そうした共創のパートナーシップをより多くの企業様と広げていくため、このたび「Vonageパートナー制度」をスタートいたしました。
パートナー制度や「Vonage」の詳細につきましては、以下のリンクをご覧ください。
▼パートナー制度開始のお知らせ