移動の時間に、上質という答えを メルセデス・ベンツ「S580 4MATICロング」

2026.10.23 07:00
SUVが主流となった今も、セダンでしか味わえない上質さがある。なかでもメルセデス・ベンツの「Sクラス」は、時代が変わっても高級車の基準であり続けてきた。2020年に登場した7代目は、車両全体の50%以上におよぶ大幅な改良を受け、さらなる進化を遂げた。今回ステアリングを握ったのは、国内ラインアップの頂点に位置する「S580 4MATICロング」。4.0リッター、V8ツインターボエンジンを搭載する、全長5.3mを超えるフラッグシップサルーンだ。
走り出してまず印象に残るのは、車内を包む静けさだ。外界のざわめきがすっと遠のき、路面から伝わる振動も巧みに抑えられている。「Aクラス」からSクラスまで、メルセデスには一貫した安全思想と走行品質が貫かれているが、頂点に立つ理由は、こうした何気ない瞬間にこそ感じられる。身体をやわらかく受け止めるシートの座り心地も申し分なく、移動そのものを心地よい時間へと変えてくれる。
約2.3トンの車重を支えるAIRMATICサスペンションも、快適な乗り心地に大きく貢献している。低速域では路面の凹凸を穏やかに吸収し、速度を上げても車体の揺れはよく抑えられている。さらに、路面状況に応じてダンパーの減衰力を先回りして調整する機能も進化した。検出した凹凸情報をクラウドに最大14日間保存し、対応車両間で共有する仕組みも備わる。目に見えない部分にまで技術を積み重ね、乗り心地を磨き上げている。
537psという大きなパワーを備えながら、その振る舞いはあくまで滑らか。アクセルを深く踏み込まずとも十分な力強さがあり、高速道路での巡航や追い越しにも余裕を感じさせる。速さをことさらに主張するのではなく、必要なときに必要な力を引き出せること。それもS580ならではの魅力だ。
大幅な改良による変化は、エクステリアにも表れている。フロントには以前より大型化したグリルを採用。ヘッドランプやリアコンビランプにもスリーポインテッドスターを取り入れ、メルセデスの象徴をより印象的に表現している。堂々としたプロポーションはそのままに、細部の意匠を刷新することで、フラッグシップにふさわしい存在感をいっそう際立たせた。
インテリアも大きく進化した。ダッシュボードには、中央ディスプレイと助手席用画面を一体化したMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)スーパースクリーンを採用。独立したデジタルメーターとともに、先進的で洗練された空間を演出している。ロングボディならではのゆとりある後席空間も魅力であり、ステアリングを握る人だけでなく、同乗者にも上質な移動時間を提供する。
車両の各システムを統合する独自の基本ソフト「MB.OS」も新たに搭載された。MBUXは第4世代へと進化し、音声操作の利便性やデジタル機能を向上。OTA(オーバー・ジ・エア)によるソフトウェア更新にも対応し、購入後も機能の改善や追加が可能になった。華やかな装備に目を奪われがちだが、日常の使いやすさを高める技術にも、メルセデスらしい細やかな配慮が感じられる。
Sクラスには、新型が登場するたびに乗り継ぐ熱心なファンがいる。少し遠方のゴルフ場まで往復すると、その理由が腑に落ちた。静かな車内では音楽や会話をゆったりと楽しめ、音声操作によってエアコンなどの機能も自然に扱える。最新世代の運転支援システムも長距離移動の負担を軽減してくれる。朝のゴルフ場に向かう時間から、ラウンドを終えた帰り道まで、余計な緊張を感じさせない。目的地までの道のりを快適に過ごせることが、このモデルを選び続ける理由のひとつなのだろう。
ゴルフ場のエントランスに映える堂々としたたたずまい。そして、往復の道のりを心地よい時間に変えてくれる走行品質。Sクラスが長く支持されてきた理由は、目に見える豪華さだけではない。大幅な改良によって先進技術を取り入れながらも、移動する人の快適さを何より大切にする姿勢は変わらない。乗るたびに実感できる上質さの積み重ねにこそ、旗艦サルーンとしての真価がある。
メルセデス・ベンツ S580 4MATICロング  車両本体価格 2365万円(税込)ボディサイズ | 全長 5304 X 全幅 1921 X 全高 1503 mmホイールベース | 3216 mm車両重量 | 2270 kgエンジン | V8ツインターボ(ISG付)排気量 | 3982 cc最高出力 | 537 ps(395 kW)最大トルク| 750 N・mモーター最高出力 | 23 ps(17 kW)モーター最大トルク| 205 N・mお問い合わせ先www.mercedes-benz.co.jp
Text : Takuo Yoshida

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