子どもたちが公園ボランティアで手にする「人生初の表彰状」。日比谷花壇が麻布で育む地域のつながりと、ウェルビーイングな仕組みとは

2026.10.21 11:00
花とみどりを通じて人と地域社会に貢献することを目指す日比谷花壇は、全国各地で展開する地域創生事業の一環として、港区立麻布地区にある23カ所の公園・児童遊園の指定管理業務を担っています。


麻布地区公園の管理運営に携わり、主にイベント広報を担当する日比谷花壇の上薗裕見子(かみぞの ゆみこ)は、着任以来8年にわたり、地域に根ざした公園づくりに向き合ってきました。
※左:麻布地区公園所長 谷口敬 (株)日比谷アメニス、右:上薗


この期間に上薗が情熱を注ぎ、試行錯誤を重ねてきた取り組みのひとつに、地域の子どもたちが参加してきた「こどもボランティア」があります。
この「こどもボランティア」は、保護者同伴で3歳から参加できます。参加日時も任意、活動時間も活動する公園も、すべてが任意。この高い自由度こそが、大きな特徴です。


現在は、夏休み期間中に実施する「花壇のお手入れボランティア」と、冬休み期間中に活動する「公園清掃ボランティア」の2つがあり、どちらも活動目標の10回を達成すると公園から表彰状が授与されます。
この仕組みの根底にあるのは、従来の一斉に集まって実施する形式ではなく、子育て世代のライフスタイルや成長段階に寄り添う工夫です。


たとえば3歳頃なら、保護者のすきま時間を活かして、公園でボランティアをしてから遊ぶという、子どもの習慣づくりを後押しします。子どもには誇らしい目標となり、保護者にとっても日常の中で無理なく付き添えるメリットがあります。成長して習い事や受験で忙しくなる学齢期でも、決められた日時に縛られず、合い間の時間を活かして自分のペースで継続できます。


地域ならではの暮らしや年齢ごとのリズムを尊重し、好きな時間に自分らしく取り組める気軽さを大切にすること。身近な日常に寄り添い、花とみどりを通して人々の心豊かな暮らしを育むこと。それこそが、日比谷花壇の目指すウェルビーイングの姿です。
無理なく、楽しく、長く続けるために。家族のペースに合わせた仕組みづくり
この「こどもボランティア」は、麻布地区の公園や児童遊園で子どもたちに花や緑と触れ合ってもらうことを目的に、地域の声に耳を傾けながら育んできた取り組みです。


「いつも公園で楽しそうに過ごしている子どもたちや、子育て世代と一緒に取り組む仕組みはつくれないだろうか」。3歳から5歳頃のお子さんを育てるご家庭にとって、身近な公園は大切な日常の居場所です。その日常の風景や親子の時間を、そのままボランティアの形として活かす発想から、この取り組みは生まれました。


背景にあったのは、上薗自身が私生活で経験したボランティアでの気づきでした。「ボランティアは楽しく、無理なく、長く続けられることが何より大切」という実感が根底にあります。「この日時に全員集合」という従来の集団スタイルは、働く保護者にとってスケジュールの調整が難しく、時間的制約や人間関係への負担から挫折につながるケースが少なくありません。


そこで、麻布の公園を利用する多くのファミリー層に向け、家族単位で隙間時間に活動できるボランティアモデルを提案。それが、現在の「日時・場所もすべて任意」という自由度の高い仕組みです。
実際の運用も、無理なく楽しめる工夫に満ちています。申し込み時に専用のスタートキットを受け取ったら、麻布地区の花壇のある公園の中から好きな場所を選び、親子のペースで水やりや花がら摘みを実施。活動時間も自由で、1日に2カ所の公園を巡ってシールを2つ貼ることも可能です。


活動後は保護者が写真付きメールで報告し、事務局でカウント。10回の目標を達成した子どもたちには、公園事務所から達成を称える表彰状が贈られます。


スタッフが付き添って誘導するのではなく、親子の生活リズムに合わせて自由に続けられる仕組みにしたことで、花壇ボランティアは年間最大20組ほどを受け入れるまでに成長しました。
自由で楽しく、自分の成長を実感でき、誰かの役に立っている嬉しさを育めること。それこそが、麻布地区の公園で「こどもボランティア」が長く愛され、地域に定着している理由です。
現場の声を拾い上げ、時代に合わせて形を変えていく
「こどもボランティア」の柔軟なスタイルは、最初から完璧に決まっていたわけではありません。上薗のアイデアの多くは、机上の会議ではなく公園の現場から生まれています。


毎週のようにイベントの現場に立ちながら、居合わせた保護者と交わす何気ない会話の中で「こんなものがあったらいいのに」という声を丁寧に拾い上げ、次の工夫へと変えていく。そうした積み重ねのなかで、現在の仕組みが形づくられていきました。
実際に活動がスタートすると、地域の保護者からすぐに大きな反響が寄せられました。
はじめは子どもの意欲を高める工夫としてスタンプカードを採用していましたが、子どもたちの間でシール集めが流行していることを知ると、すぐにシールを貼る方式へと変更。台紙に好きなシールを貼る楽しさが小さなやる気を引き出し、子どもたちの誇らしげな笑顔につながっています。


活動後に送られてくる写真は上薗と事務所スタッフが確認し、子ども一人ひとりの成長と活動を見守っています。
また、募集期間を迎えると、丁寧な対応や安全面を考慮して設定した定員(約10組)に対し、毎回その倍近い申し込みが集まるほどの人気を見せています。そのため、現場の状況に応じて最大20組程度まで受け入れ枠を柔軟に広げて対応してきました。


誰にでも開かれた公園だからこそ、訪れる人々には日常の中で心が豊かになる時間を過ごしてほしい。それが上薗の願いです。近年の猛暑により日中の来園が難しい夏場は、早朝や夜間に人が集まる傾向を踏まえ、保護者同伴のもと安全に配慮した夜間の花壇への水やりも推奨しています。
「こどもボランティア」は、公園を舞台に、地域で子どもを育む仕組みを目指す取り組みです。時代の変化や子育て世代の生活リズムに合わせた発想の転換と柔軟な工夫を重ねながら、麻布の公園に笑顔を増やし続けています。
「人生で初めて」の誇らしい瞬間に立ち会える仕事
上薗のなかで、子どもたちに表彰状を授与する発想に至った原点となる出来事があります。かつて、自主的に公園清掃に取り組んでいたインターナショナルスクールの高校生から、「海外進学のためにボランティア証明書を発行してほしい」と相談を受けました。


長年の地道な奉仕活動を称えて証明書を贈ると、心から喜んでくれた彼から、海外ではボランティア実績が大切な社会的評価になることを教わったのです。「地道な継続は子どもの未来につながる」という実感は、現在の表彰制度の原点となっています。


「こどもボランティア」では、活動10回達成で表彰状を発行しています。10回という目標は一見少なく思えますが、日々の生活の中で保護者の協力が必要となるため、実際には決して小さくはないハードルです。それだけに、目標を達成した瞬間の親子にはあふれんばかりの笑顔が広がります。
公園事務所の前で表彰状を受け取る幼い子どもたち。その瞬間、誰も教えていないのにピンと背筋を伸ばし、大人顔負けの凛とした姿勢になります。多くの子どもたちにとって、これが「人生で初めて手にする賞状」となります。
表彰の機会も特定の集まりではなく、子どもたちが達成報告を経て事務所を訪れた際、その場にいるスタッフがいつでも温かく迎えます。ある時は所長が、ある時は受付のスタッフが、心を込めて賞状を読み上げて手渡します。


「『人生で初めて』という貴重な瞬間に立ち会えることが、事務所スタッフ全員の大きな喜びなんです」と上薗は語ります。


活動報告には「子どもが自発的に動くようになった」「近所の人に褒められて誇らしそうにしている」といった声や、周りのお友達に広がって2年、3年と継続する姿も寄せられています。自分の小さな行動が積み重なり、社会に貢献する喜びとして子どもに返っていく体験。子どもの頃に刻まれた誇らしい記憶は、これからも子どもたちの未来を支える力となっていきます。
子どもは公園を離れても、親になってまた戻ってくる
麻布地区の公園で生まれた「こどもボランティア」の取り組みは、日比谷花壇グループ内で優れたPPP事業活動を表彰する社内アワード「ものだねアワード」でも高く評価され、今年優秀賞を受賞しました。


近年、日比谷花壇では「花やみどりを通じたウェルビーイングの実現」を掲げています。一人ひとりの日常に寄り添いながら地道に積み重ねてきたこの活動は、まさにその想いを現場で具現化した姿です。
「子どもは公園の輝きであり、地域の未来です。公園は常に誰もが公平に立ち寄れる場所だからこそ、みなさんが気持ちよく過ごせる安心な子育ての拠点でありたいと思っています」と上薗は語ります。


上薗が「こどもボランティア」の未来に思い描いているのは、かつてサケが成長して生まれた川に戻る姿になぞらえて広まったカムバック・サーモン運動に着想を得た、「2026年 カムバック・こどもボランティア運動」と名付けた長期的な循環と、さらなる未来への広がりです。


子どもたちは成長とともに一度は公園を離れますが、やがて親となったとき、我が子を連れて楽しかった幼少期の体験を思い出して再び公園へ戻ってくる。その場所がたとえ麻布の公園ではなくても、そうした温かい循環が世代を超えて続いていくこと。そして、国際色豊かな麻布地区だからこそ、ここで育まれた体験が子どもたちの成長とともに世界のどこかで花開くことも、決して夢ではありません。


特別なことをしているわけではありません。それでも日常の身近な行いが、子どもの誇りになり、親子の思い出になり、地域を結ぶ温かい絆になる。着任から8年、上薗が麻布の公園に紡いできた小さな循環は、これからも地域に豊かな緑と笑顔を咲かせ、新たな場所へと広がっていきます。
※2026年版チラシ
「こどもボランティア」※今後の予定紹介
「こども花壇ボランティア」
次回募集:2027年6月頃
対象者:3歳以上の親子
対象公園:10ケ所


「こどもゴミ拾いボランティア」
次回募集:2027年1月頃
対象者:3歳以上の親子
対象公園:23ケ所


「中高生ゴミ拾いボランティア」
次回募集:2027年4月頃
対象者:12歳以上 
※お友達もしくはご家族の2人以上での参加で検討中。
対象公園:23ケ所
■有栖川宮記念公園について:
有栖川宮記念公園(ありすがわのみやきねんこうえん)は、江戸時代は南部藩の下屋敷でしたが、明治29(1896)年に有栖川宮家の御用地となり、その後、昭和9(1934)年に公園として一般解放されました。園内には昭和48(1973)年に併設施設として都立中央図書館が開館しました。豊かな自然を感じられる都会のオアシスとして、みなさまに愛される公園です。




※港区麻布地区の公園・児童遊園は、平成29年4月より「アメニス・ケイミックス・日比谷花壇グループ」が指定管理者として管理・運営を行っています。


■日比谷花壇 地域創生事業 公式サイト:

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