全員16時半定時、社内学童も。「子育てと仕事の両立を、家庭だけの問題にしない」50人の会社が続けてきたこと

2026.10.20 11:00
2025年10月、改正育児・介護休業法により、子育て中の社員が柔軟に働くための措置が企業に求められるようになってから1年。


制度が整いつつある一方で、子どものお迎え、長期休暇、急な体調不良…
子育てをしながら働く毎日には、仕事だけを見ていては解決できないことがたくさんあります。


仕事を続けるために、働く本人や家庭がなんとか調整する場面も少なくありません。
ですが、私たちが大切にしているのは、「子育てと仕事の両立を、家庭だけの問題にしない」という考え方です。


私たち「OURHOME」は、兵庫県西宮市にあるスタッフ約50名の会社です。


仕事や子育て、自分の時間も大切にしたい方に向けて、暮らしの情報発信とオリジナル商品の企画・販売を行うライフスタイルブランドで、オンラインショップと西宮市内の実店舗を運営しています。
創業以来黒字経営を続け、売上は右肩上がり。現在は年商10億円規模になりました。
「OURHOME」主宰、ブランドディレクターのEmi


働くスタッフの多くが子育て中で、全員が16時半には退社。
そして春休みや夏休みには、スタッフの小学生の子どもたちが会社で過ごす「わくわく学童」を開催しています。


これらの取り組みは最初から大きな「子育て支援制度」をつくろうと始めたものではありません。
働くスタッフみんなが暮らしと仕事を無理なく両立できるように、「会社でできることはない?」と考え、ひとつずつ始めてきたものです。


子育てと仕事の両立を、家庭だけの問題にしないために、小さな会社にもできることがあるはず。


今回は、OURHOMEが続けてきた「わくわく学童」や16時半定時などの取り組みと、その背景にある私たちの考え方についてお話しします。
──「保育園を卒園したら、仕事と子育ての両立は楽になる」とは限らない
子どもが小学生になると、保育園時代とはまた違った「仕事と子育ての両立」の難しさが出てきます。


そのひとつが、放課後や春休み・夏休みなど、学校に行っていない時間の子どもの居場所づくりです。
学童は小学6年生まで利用できる制度ですが、地域や施設によっては小学1〜3年生の利用が優先され、4年生になると利用できなくなることも。
それまで長期休暇中も学童で過ごしていた子どもが、4年生になった途端、預け先に困ってしまう。いわゆる「小4の壁」です。


また、地域によっては待機児童が多く、そもそも小学1年生から学童に入れないケースもあります。
子どもは学校が休みでも、親の仕事はいつも通り。
子育て中のスタッフが多いOURHOMEでも、長期休暇中の子どもの過ごし方は、身近な悩みのひとつでした。
──「だったら、会社でできることはない?」
そこでOURHOMEでは2023年から、春休みや夏休みなどの長期休暇に数日、スタッフの小学生の子どもたちが会社で一日を過ごす「わくわく学童」を開催しています。


子どもたちを見守るのは、幼稚園教諭として働いていた経験を持つOURHOMEのスタッフ。宿題タイムを設けつつ、制作や体を動かす遊びなどを企画し子どもたちと一緒に1日を過ごします。
始まりは、子育て中のスタッフの「長期休暇、子どもをどうしよう?」という、ごく身近な困りごとでしたが、続けてみると「預け先ができて助かる」だけではない変化もありました。
「わくわく学童」の様子
──「ママって、こんなところで働いてるんだ」
子どもたちは普段から、「今日は会社に行ってくるね」「ママはお仕事だから」と聞いています。
ですが、子どもにとって「会社」や「仕事」は、意外とよくわからないもの。
わくわく学童では、その「会社」に自分もやってきます。


お母さんが働いている姿を見たり、いつも話に聞いているスタッフに会ったりすることで、「ママって、こんなところで働いてるんだ」と、それまでぼんやりしていた親の「仕事」が、少し具体的なものに。
実際に会社へ来たことをきっかけに、お母さんが仕事へ行くことを応援してくれるようになった子も!
子どもにとっても、親の仕事を知る、貴重な機会になっているのです。
ママたちのオフィスを見学する、子どもたち。
──家族と会うと、同僚の「暮らし」が見えてくる
OURHOMEで、会社と家族が交わる機会は「わくわく学童」だけではありません。
たとえば、春に開催した「春フェス」と題したお花見。
スタッフだけでなく、子どもたちも一緒に参加して開催した「春フェス」では
外を散歩して桜を見たり、オフィスで親子参加でクイズ大会を開催するなど、大盛り上がり。


普段からスタッフ同士で、
「うちの子、いま2歳で〜」
「今朝こんなことがあって〜」
と、家族の話をすることはよくあるものの、実際に子どもたちに会って、一緒に遊んでみると、それまで話で聞いていた同僚の暮らしが、ぐっと具体的に見えてきます。


「こんなに小さい子を育てながら、毎日会社に来ているんだな」
「朝はきっと、ここに来るまでにもいろいろあるんだろうな」


一緒に働いているだけでは見えない「会社の外での暮らし」を知ることで、相手への理解も少し変わっていきます。


子どもたちは、わくわく学童を通して親の仕事を知り、私たちは、学童やお花見、日々のコミュニケーションから一緒に働く仲間の暮らしを知る。
OURHOMEでは、仕事と暮らしを完全に切り離すのではなく、こうしてお互いの暮らしが少し見える関係を大切にしています。
会社代表の田辺が子どもたちに
「ママってどんな仕事をしてる?」とスライドを見せると興味津々。
──「子育て中の人だけ時短」ではなく、全員が16時半までに退社。
こうした「スタッフの暮らしも大切にする」という考え方は、OURHOMEの働き方にもつながっています。


そのひとつが、冒頭でも触れた全スタッフ共通の「16時半定時」です。


子育て中のスタッフだけが早く帰るのではなく、最初からみんなが同じ勤務時間。
限られた時間の中でしっかり働き、16時半になったら、それぞれの暮らしへ戻ります。
2025年の正社員の平均残業時間は、月0.5時間。
早く帰ることだけが目的ではありません。
16時半まではしっかり働き、16時半からは、それぞれの暮らしを大切にする。
そんなメリハリを大切にしています。


実は、OURHOMEの16時半定時は、スタッフが増えてからつくられた制度ではありません。
OURHOMEを立ち上げた主宰Emiは、当時3歳だった双子を育てながら、ひとりで仕事をスタートしました。夫はドイツへ単身赴任が決まったタイミング。
仕事と子育てが入り混じる毎日の中での独立でした。
その後、仕事が増え、初めてスタッフを迎えることになったとき。
「子どものお迎えもあるし、何時までなら働ける?」と話して決まったのが、16時半という時間でした。
そこからスタッフが約50名になった今まで、正社員含め、全員が16時半には退社することは変わっていません。


仕事だけを切り離して考えるのではなく、その人の暮らしも一緒に考える。
創業当時から続くそんな考え方があります。
商品企画中のひとこま。商品アイディアも、自分たちの
「身の回りの困りごと」解決から生まれることがほとんど。
──「プライベートは会社に持ち込まない」の反対をやってみる
仕事とプライベートは、きっちり分ける、という考え方の企業もある中で、OURHOMEではむしろ、子どものことや家族のこと、今困っていることも普段から自然と話します。
ちょっとしたことも、会社のLINEでつぶやいたりして、暮らしのことを知っているから、「今日はこういう事情があるんだな」と周りも理解でき、本人も、困ったときに少し頼りやすくなります。
働きやすさは、制度の数だけでは決まらない。
一緒に働く人の暮らしをどれだけ想像できるかも、そのひとつではないかと私たちは考えています。
──小さな会社でも、できることからひとつずつ
OURHOMEの「わくわく学童」は、学童の待機児童や、「小1・小4の壁」といった、大きな社会課題を解決できる制度ではありません。


16時半定時も、すべての会社でそのまま実現できるものではないと思います。
それでも、子育てと仕事の両立を、働く個人や家庭だけの問題にしない。
「会社側で変えられることはないだろうか?」と考えてみることはできます。


社会全体を一気に変えることはできなくても、自分たちの会社の中から変えられることはある。
そんな小さな実践が、それぞれの会社でひとつずつ増えていけば、仕事と子育てを取り巻く景色も、少しずつ変わっていくのではないかと思っています。


「こんなやり方もあるんだ」
「自分たちの会社なら、何ができるだろう?」
OURHOMEの事例が、そんなことを考えるひとつのきっかけになれば嬉しいです。
■会社概要
社名:
設立:2015年3月
代表取締役 田辺 良平
取締役 Emi/田辺 絵美
本社所在地: 〒662-0045 兵庫県西宮市安井町5-25
従業員数:51名
事業内容:ライフスタイルブランド「OURHOME」の運営(ECサイト・実店舗の展開、オリジナル商品の企画開発、コンテンツ発信)、イベントセミナー講演会の企画運営。
は、これまでに暮らしにまつわる著書22冊、累計68万部。
近著は『10年先のわたしをつくる、家と時間』(集英社)。
雑誌LEE(集英社)コラム連載は9年目。
雑誌ESSE(扶桑社)エッセイ連載は2026年からスタート。
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