市外・県外から入社する内定者が、まちを歩き、移住者と話す。仕事だけでなく地域とのつながりを伝える一日(銘建工業)
岡山県真庭市を拠点に、万博リングをはじめとする木造建築やそれに使われる木質建材の製造に携わる銘建工業株式会社。私たちは、森林資源を活かしながらCLTや集成材と高付加価値な木質建材の製造・木造建築の普及に取り組んできました。1923年の創業以来、100年以上にわたり木と向き合い、木材の新たな可能性を追求しています。
当社では、大卒新卒入社者の8割以上が、入社を機に真庭市へ移住しています。しかし、市外・県外から入社する若者にとって、会社や仕事を知る機会はあっても、真庭での暮らしや地域とのつながりを具体的に知る機会は多くありませんでした。
そこで今回、真庭市交流定住センターと連携し、内定者向けの地域体験プログラムを初めて実施。勝山町並み保存地区のまち歩きや、真庭市への移住経験を持つ地域おこし協力隊との座談会を通じて、「真庭で働くこと」だけでなく「真庭で暮らすこと」を考える一日となりました。
入社は真庭での暮らしの始まりでもある
前述の通り、銘建工業では大卒新卒入社者の8割以上が、就職を機に真庭市へ移住しています。その中には、真庭市はもちろん、岡山県にもゆかりがない学生が少なくありません。
私たちはこれまで、採用活動を通じて仕事内容や会社の雰囲気、木材に関わる仕事の魅力を伝えてきました。一方で、住む場所や休日の過ごし方、地域の人とのつながりなど、入社後の生活を具体的に伝える機会は十分ではありませんでした。
地方企業を選ぶことは、働く会社を選ぶだけでなく、これから暮らす地域を選ぶことでもあります。今回の取り組みは、そのことを改めて考えるところから始まりました。
若手社員の声からわかった入社前に伝えきれていなかったこと
取り組みのきっかけは若手社員へのヒアリングでした。
「入社までに真庭で数日過ごしてみる機会があると、仕事だけでなく暮らしの準備もしやすかったと思う。」
会社のことは説明会や選考の中で知ることができます。しかし、実際に働く場所の空気や、休日の過ごし方、買い物環境など、「暮らし」のイメージまではなかなか伝わりません。入社後にどこで過ごし、誰とつながり、どのような生活を送れるのか。真庭での暮らしまで伝えることが、移住を伴う採用には必要だと考えました。
移住希望者向けのツアーを、内定者向けに
「真庭での暮らしを伝えたい」と思っても、実は採用担当である私自身も市外出身者です。仕事や会社のことは自信を持って説明できます。しかし、地域での暮らしや人とのつながり、休日の過ごし方まで含めて伝えようとすると、「本当に自分だけで伝えきれるだろうか」という思いがありました。
そんな時に参加したのが、SDGsに関わる企業や団体が集まるSDGs企業交流会(おかやまSDGsミーティング)でした(写真)。
交流会の中でお話しする機会があったのが、真庭市交流定住センターで移住・定住支援に携わる担当の方でした。若手社員へのヒアリングで聞いた「入社までに真庭で数日過ごしてみる機会があると、仕事だけでなく暮らしの準備もしやすかったと思う」という声をお伝えしながら、「県外出身の学生が、真庭での暮らしをイメージできるような資料や取り組みはありませんか?」と相談してみました。「こんなことができるかも」とご紹介いただいたのが、移住を検討する個人向けに実施されている「真庭暮らし体験ツアー」でした。
採用活動と移住支援。一見すると別々の取り組みのようですが、「真庭で新しい生活を始める人を支える」という点では共通しています。社内へ持ち帰って相談したところ、「ぜひやってみよう」という話になり、真庭市交流定住センターとともに内定者向けプログラムの企画がスタートしました。
企画を進める中で感じた、真庭の人と人との距離
真庭市交流定住センターとプログラムの打ち合わせを進める中で、私たち自身も真庭らしさを感じる出来事がありました。
何気ない雑談から交流定住センター担当者と採用担当である私に大学時代の共通の知人がいることが判明。「世の中狭いですね」と盛り上がっていたのですが、それだけでは終わりません。
後日、今回参加する内定者について話していた際、「内定者の○○さんなら知っていますよ」という言葉が返ってきました。
詳しく聞いてみると、内定者が取り組んでいる環境活動に、交流定住センター担当者も関わっていたとのこと。思いがけないところで人と人がつながっていることに、再び驚かされました。
誰かと話をしていると、「その人なら知っていますよ」「実はつながりがあります」と会話が広がっていく。今回の企画も、そうしたつながりの中から生まれた取り組みのひとつです。
移住や就職を考えるとき、住まいや買い物環境などの情報に目が向きがちです。一方で、新しい土地で暮らしていくうえでは、人とのつながりも大切な安心材料になります。
真庭の魅力を内定者へ伝えるために始まった今回の企画でしたが、準備を進める中で、私たち自身もまた真庭の人と人との距離の近さを改めて実感することになりました。
まちを歩き、移住した人の言葉を聞く一日
当日は、勝山町並み保存地区のまち歩きからスタートしました。
印象的だったのは、「真庭は人も観光資源なんですよ」という言葉です。
当日は、真庭の魅力的な人々を紹介した人図鑑『真庭の人びと』を片手にまちを散策。この図鑑に掲載されている方が営む店舗で昼食やカフェ休憩をとりながら、まちの日常に触れていきました。
ランチを食べたろまん亭店主も移住者。まちの魅力についても教えていただきました。
歴史ある町家を活用した店舗には、店主自身が手を加えた内装やこだわりの家具が並びます。そんな空間を見た内定者からは、「もっと昔ながらのまちを想像していたけれど、都会みたいにおしゃれなカフェもあるんですね」という声も。
午後には、真庭市へ移住した経験を持つ地域おこし協力隊のお二人との座談会を行いました。「冬は寒いですよ。雪が積もっていなくても路面が凍結するので、スタッドレスタイヤは必須です」といった生活面での話から、「住む場所がなかなか見つからなくて困っていたら、地域の方が紹介してくれたんです」という真庭ならではのエピソードまで、経験者だからこそのリアルな話を聞くことができました。
その中で印象的だったのは、「家と会社以外のつながりや居場所があると、困ったときに相談できたり、元気をもらえたりする」という言葉でした。また、お二人がそれぞれ好きな風景やお気に入りの場所について話す場面もありました。「塩釜冷泉で水がコポコポ湧いているんです」「この橋は私の散歩コースなんですよ」そんな何気ない話からも、真庭での暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきました。
移住のきっかけや実際に暮らしてみての実感などを伝えてもらいました!
家賃や買い物環境といった情報も大切ですが、実際に暮らす人の言葉を聞くことでしか分からないこともあります。参加した内定者にとっても、真庭が単なる就職先のある地域ではなく、これから暮らしていくまちとして少し身近になった一日だったのではないかと思います。
採用したら終わりではない
今回の地域体験を通じて、内定者からは「実際に移住者の方とお話できたことで、余暇の過ごし方、地域の人との関わり方、おすすめの場所などを知ることができた」という声が寄せられました。
私たちにとっても、会社や仕事内容を説明するだけでは、真庭で働き、暮らす姿のすべてを伝えられないことを改めて実感する機会となりました。
採用したら終わりではなく、社員が地域とつながり、自分らしい暮らしを始めるところまで支える。真庭で働くことと、真庭で暮らすことの両方を楽しみにしてもらえるよう、これからも地域の皆さんと一緒に取り組んでいきます。
■銘建工業株式会社
創業103年(1923年創業)。岡山県真庭市を拠点に、木を使った建築材料の製造から木造建築の設計・施工、バイオマス発電までを手掛ける総合木材企業です。
国内有数のCLTメーカーとして、住宅だけでなく学校やオフィス、商業施設などの中大規模木造建築にも携わっています。
「森林資源を価値ある製品へ変える」ことを強みに、木を使い切る循環型ものづくりを実践。大阪・関西万博の大屋根リングにも材料を供給するなど、日本の木造建築の発展に貢献しています。
webサイト:
■真庭市交流定住センター
岡山県真庭市において、移住・定住支援や地域内外の交流促進に取り組む拠点です。
真庭市への移住を検討する人の相談対応や現地案内のほか、地域で活躍する人々や団体とのネットワークを活かし、人と地域をつなぐ活動を行っています。また、市内の地域同士や地域住民と行政を結び、地域課題の解決や新たな交流の創出も支援しています。
交流人口・関係人口の創出を通じて、「真庭と関わる人」を増やし、移住・定住につながる地域づくりを推進しています。
webサイト: