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あの時の恩を“今”返す 日本赤十字社石川県支部の決意 ~能登から熊本へ、森岡係長の「恩返し」~
PR TIMES STORY
2026.10.07 15:01
「熊本で大きな地震が起きたと知ったとき、能登半島地震の時のことが一瞬よみがえりました」
そう語るのは、日本赤十字社石川県支部 事業推進課で災害救護事業を担当する森岡誠人係長。
約25年間、金沢赤十字病院で看護師として働き、その後、事務職として支部に入職した異色の経歴を持つ。
令和8年7月28日、最大震度7を観測した「令和8年熊本地震」が発生。森岡は勤務中に第一報に接した。頭をよぎったのは、2年半前に自身が経験したあの地震。しかし、その思いは恐怖や不安だけではなかったという。
「助けてもらった恩を返す時が来た」そんな思いが、力強い熊本への支援へと向かわせた。
被災者であり、支援者でもあった能登の経験
時を遡って令和6年1月1日の「能登半島地震」発生時、森岡は実家のある石川県志賀町で被災した。
震度7を経験し、はじめの2日間は家族とともに避難生活を送った。
支部に入ったのは発災から3日後。本部では、医療支援やこころのケアの両面を担当した。
当時を振り返り、「正直、自分の知っている町が変わっていく姿を見るのはつらかった」と話す。
テレビに映し出される光景は、見慣れた風景が変わってしまった姿だった。
被災した地域への思いがある一方、支援者として冷静に対応しなければならない立場でもあった。
「被災地のことが心配なのに、自分にはできることが限られている。やらなければならないことは山ほどあるのに追いつかない。あの時はただ必死でした」。
そんな中で心の支えになったのが、全国から駆け付けた赤十字の仲間たちだった。
発災直後から全国の救護班やコーディネートチームが途切れることなく石川県へ入り、厳しい環境の中で活動を続けてくれた。
「本当にありがたかったです。自分たちだけでは到底立ち行かなかった。全国の仲間が支えてくれたことで、何とか前に進むことができました」
能登で強く感じたのは、全国に広がる赤十字のネットワークの力だ
苦い経験を熊本ではさせない
熊本地震の発生を知ったとき、森岡の胸には複雑な感情が湧き上がった。
「あの苦しさを熊本県支部のメンバーも経験するのかもしれない」被災した支部だからこそ分かる思いがあった。
住み慣れた町が変わる苦しさ。 被災者でありながら支援活動を続ける葛藤。
次々と寄せられる要請への対応。 そして、“本当にこれでよかったのか”という迷い。
能登で経験したそれらすべてが、熊本にも重なって見えたという。
だからこそ、石川県支部はすぐに動いた。「役に立てることがあるなら行きたい」。
その思いを支部内で共有し、第3ブロックの調整の場では、早期に派遣させてもらえるよう要望した。
結果として、ブロック内第一班目のコーディネートチームとして8月3日から8日までの6日間、活動することになった。
能登の経験が紡いだ支援
熊本に派遣された森岡が活動の場で第一に取り組んだのは、「顔の見える関係づくり」だった。
はじめに活動したのは八代市。その後、氷川町の保健医療調整本部へ、リエゾンとして単独で町に入った。
氷川町では、役場職員や保健師、支援団体、避難所関係者など、とにかく多くの人と会い話しをした。
一見すると地味な活動に見える。しかしそこには、能登で得た大きな教訓があった。
「支援はいつか終わります。だから地元の皆さんが主役です。最初から、その地域が自立できるような視点での関係づくりを意識していました」。
目の前の支援だけではない、その先の復旧・復興まで見据える。
発災一週間にも満たない段階でそう考えることができたのは、被災地支部としての実務を経験したからこそだった。
「能登での経験を前面に出すつもりはありませんでした。でも、“地元に引き継ぐことを意識しなければならない”ということだけは、ずっと心掛けていました」。
先を見据えた関係構築は、3日後、正式に氷川町に入ったコーディネートチームの下地を作った。
顔が見える同志の存在
熊本で印象的だったことを尋ねると、森岡は思わず笑顔を見せた。
「知っている人にたくさん会えたことですね」
能登半島地震の支援で共に活動した全国の赤十字職員たちが、今度は熊本に集まっていた。
顔を見ればすぐに分かる。同じ経験を共有し、同じ志を持つ仲間たちだ。
「みんな能登で一緒に頑張った人たちでした。被災地支部を支えるという考え方も共有できていました。あの経験が確実に熊本で生かされていると感じました」。
災害は繰り返したくない。 しかし、経験は受け継ぐことができる。
能登で得た知識や反省、成功体験が、今度は熊本を支える力になっていた。
具体的な「恩返し」のカタチ
森岡は9月下旬、再び熊本へ向かった。今回の役割は、こころのケア調整員。
この活動で見据えているのは、傾聴やリラクゼーションなどを通じて行う気持ちを受け止める従来型のこころのケアではない。
「被災した方が元の生活に戻るためには、心だけでなく生活そのものを支えることが必要です。物流が戻ったから終わりではありません。ライフラインが復旧しても、生活が元に戻るわけではない。だからレジリエンス(回復力・復元力)を高める持続的な支援が大切です」
こころのケアを「心理社会的支援」と捉え、生活の基盤を安定させることで人々を支えることだという。
理想を言えば、避難所や仮設住宅では、フレイル予防、認知症への対応、子どもの避難生活支援、感染症予防など、生活支援のパッケージを最初から提案できる体制が必要。能登での経験から強く感じているという。
それは、できなかったことへの挑戦。
そして何より、全国の仲間から受けた支援への恩返しでもある。
森岡は本社でも体制整備に尽力している。
つながるネットワークの力
森岡は最後にこう語った。
「能登での経験を踏み台にしてほしいんです。良かったことも失敗したことも全部含めて、次の災害対応に生かしてもらえればうれしい」
災害対応に「正解」はない。だからこそ、経験を語り継ぎ、学び続けることに意味がある。
能登で支えられた石川県支部が、今度は熊本を支える。
その姿は、全国を結ぶ赤十字ネットワークそのものと言えるだろう。
「あの時、助けてもらったから」
その思いが、次の支援へと繋がる原動力を生み出している。
森岡の「恩返し」は、まだ始まったばかりだ。
>> (参考)「令和8年熊本地震」にかかる日本…
>> 行動者ストーリー詳細へ
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