札幌の夜、私の頭の中にあふれ出した「ある映像」
今振り返ってみても不思議なのですが、MiYO ORGANIC(ミヨオーガニック)のすべてが始まったのは、札幌にあるホテルの、何の変哲もない一室での出来事でした。
MiYO ORGANICは、「美しい地球を、次の世代へ。」をパーパスに掲げ、環境への誠実さを徹底したエシカルセルフケアブランドです。プラスチック製が主流だったホテルアメニティや日用品を、竹や紙などの低負荷素材へ転換し、地球と人に優しい豊かな循環を目指しています。
当時の私は食器ソムリエとして、ホテルのビュッフェのディスプレイを監修する仕事をしていました。その夜も仕事を終え、何気なく部屋に備え付けられていたアメニティの歯ブラシで歯を磨いていたのです。すると、本当に何の前触れもなく、ある思いが頭をよぎりました。
「あ、これ私、夜と朝に使ったら、そのまま捨ててしまうんだ」
その事実に気がついた瞬間、頭の中に「地球からプラスチック歯ブラシのゴミがあふれだしている映像」が、鮮明に浮かび上がりました。もちろん普段そんなことは思わないのですが、そのときばかりは「誰かがこれを何とかしなければいけないのではないか」と、震えるような感覚になりました。
もちろん、それまでも仕事を通じて「プラスチックをなるべく使いたくない」という漠然としたモヤモヤは抱えていました。しかし、あの夜に見た映像はあまりにも鮮明で、「自分がどうにかしなければ」という勝手な使命感に突き動かされたのです。
それが、すべての始まりでした。
こうして立ち上げたのが、エシカルセルフケアブランド「MiYO ORGANIC」です。
私たちは「美しい地球を、次の世代へ。」をパーパスに掲げ、環境への誠実さを徹底したプロダクトづくりを行っています。これまでプラスチック製が主流だったホテルアメニティや日用品を、竹や紙などの低負荷素材へ転換し、地球と人に優しい豊かな循環を目指して挑戦を続けています。
偶然ではなく必然だった、点と点が繋がる感覚
「環境に配慮した、本当に良いものを作ろう」と決意してからは、すぐに行動に移しました。向かった先はオランダ。当時の日本には、自分が理想とするアメニティが見当たらなかったからです。
環境先進国と言われているオランダやベルギー、フランスとヨーロッパを巡る中で出会ったのが「竹の歯ブラシ」でした。そこから今度は、製造拠点である中国や台湾の工場を片っ端から見て回る日々。そうした探求の末に、最終的に着地したのが現在の「竹歯ブラシ」という形でした。
よく「なぜ歯ブラシを選んだのですか?」と聞かれます。けれど、最初から狙って選んだわけではありませんでした。後から振り返ってみて初めて、これまでのすべてのキャリアがこの一本に集約されていたのだと気づいたのです。
私のキャリアの原点は、歯科用製品の営業でした。これが私と「歯(オーラルケア)」との最初の出会いです。その後、母が竹の割り箸で創業した会社へ入り、食器や飲食店向けの備品・消耗品の営業に奔走。さらにその後、食器メーカーにて一からオリジナル製品を生み出す「ものづくり」の現場を経験し、独立後は食器ソムリエとしてホテルへの空間提案に明け暮れる日々を送っていました。
「歯科」「消耗品」「竹」「ものづくり」「ホテル」——。
今にして振り返ると、バラバラだったはずの点と点が、あの札幌の夜を境に一本の線に繋がっていったような感覚があります。
そして、私の名前「美代(みよ)」には、母が込めてくれた「美しいものを次の世代に残せる人間になってほしい」という願いが込められています。当初はブランドに自分の名前を冠するなんて気恥ずかしく思っていました。しかし、どんなに苦しくても嘘をつかず、自分の名前を背負って覚悟を持ってやり遂げよう。そう決心したとき、「MiYO ORGANIC」という名前がストンと腑に落ちました。
「スタートアップとして応援したい」その言葉が背中を押した
ブランドを形にしていく中で、大きな転機となったのはマリオット・インターナショナル様との出会いでした。まだ会社を立ち上げる前、竹歯ブラシを持って走り回っていた私に、彼らは「スタートアップとして、あなたの挑戦を応援したい」と手を差し伸べてくださったのです。
おかげさまで、今では250万本以上の竹歯ブラシをお届けし、累計25トン以上のプラスチック削減を実現することができました。しかし、これは決して自慢したい数字ではありません。日々の小さな積み重ねが大きなインパクトに繋がるという一つの指標に過ぎず、同時に、それだけの数の「想い」を託されているという責任の重さだと受け止めています。
「環境配慮」を理由に、ホスピタリティから逃げない
私がMiYO ORGANICを立ち上げる際、自分に固く誓ったことがあります。それは、「環境に良いから」という理由で、品質や使い心地を絶対に妥協しないことです。
ゲストにとって、ホテルのアメニティは旅の疲れを癒やし、特別な時間を彩るための大切なアイテムです。それなのに、「環境に配慮しているから」という理由で毛先が硬くて磨きにくかったり、デザインが不十分だったりするのは、提供する側の言い訳に過ぎず、本来のホスピタリティから外れてしまうと感じました。
だからこそ、私たちは細部に徹底してこだわります。竹の繊維の密度、カビを防ぐための天然ミツロウのコーティング、そして歯科衛生士の方々と議論を重ねて追求した極上の磨き心地。
アメニティを単なる「消耗品」から、ホテルからゲストへの心のこもった「ギフト」へと変えていくこと。使い終わったあとも「素敵だから家に持ち帰って使おう」と思っていただけるような、機能美と愛着を宿すこと。この想いは、創業時から一ミリもブレていません。そうした「環境性とホスピタリティの両立」へのこだわりが評価され、2022年度にはグッドデザイン賞を受賞することができました。
2022年度 グッドデザイン賞 授賞
かつて札幌のホテルで覚えた小さな違和感から始まった私たちの挑戦は、今、確かな形となってホテルの現場へ広がっています。現在私たちは、マリオット・インターナショナルの日本市場におけるソロディストリビューターとして、環境に配慮したアメニティを提供しています。素材だけでなく、宿泊される方の使い心地や品質にも真摯に向き合いながら、ホテルにおけるアメニティの新しい選択肢を広げ続けています。
また、社会や環境に対する高い透明性と持続可能性の基準を満たした企業に贈られる「B Corp認証」を取得したのも、そうした想いを実践し続け、企業として自分たちを律していくための決意表明の一つです。
「出会えて良かった」という想いが、波紋のように広がる世界へ
MiYO ORGANICが追求しているのは、誰かが我慢したり、どこかに無理を強いたりするものではありません。
作る人、使う人、売る人、そして地球。この循環に関わるすべての人にとって、デザイン・環境への配慮・歯科衛生面・価格などあらゆる面を追求し、「MiYO ORGANICを選んで良かった」と思っていただける状態を目指しています。
だからこそ、素材選びだけでなく「誰と、どのように作るか」というプロセスそのものにも真摯に向き合っています。
その取り組みの一環として、私たちは社会福祉法人名古屋ライトハウス様とのパートナーシップを締結しました。製品の一部の検品や個包装などの重要な工程を就労継続支援事業の利用者の皆さまに担っていただき、地域の方々と共に確かな品質を支えています。
2025年10月「社会福祉法人名古屋ライトハウス」とパートナーシップを締結
丁寧に仕上げてくださる就労施設の皆さん、共に高い品質を追求する工場の職人さんたち、そしてその歯ブラシで旅の朝を迎えるゲスト。私たちの商品は、導入実績が増えれば増えるほど、世界に良い影響が循環していく仕組みを目指して設計されています。
関わるすべての人が「出会えてよかった」と思える瞬間を一つでも多く増やしていくこと。それこそが、今の私にとって何よりの原動力です。
「美しいものを、次の世代へと残せる人間になる」
私の名に宿されたこのシンプルな想いを全うするために。 MiYO ORGANICの旅は、まだ始まったばかりです。この小さな1本が、いつか大きな地球の笑顔に繋がると信じて、私は今日も、こだわりを持って現場に立ち続けます。