VectorBuilderのIVT RNA・LNPワンストップ支援
研究室で生まれた有望なRNAを、どうすれば実際の医薬品へ育てられるのでしょうか。mRNAワクチンの実用化によって、RNA医薬品の可能性は広く知られるようになりました。いま、その応用はワクチンだけでなく、タンパク質補充療法、CRISPRゲノム編集、CAR-T療法へと広がっています。しかし、優れた配列を見つけることは、実用化への第一歩にすぎません。
配列を設計し、RNAを製造し、LNP(脂質ナノ粒子)に包んで目的の細胞へ届ける。さらに、品質と機能を確かめ、製造量を増やし、GMP要件に対応する――。開発が進むほど、必要な技術と判断は増えていきます。
は、これらを別々の工程として切り離さず、設計・最適化から
までを一つにつなぎます。研究成果を止めずに次の段階へ進めること。それが、私たちのRNA・LNP開発プラットフォームの役割です。
RNAを「設計する・最適化する・送達する」――開発を支える技術基盤発現と安定性を高めるRNA設計
同じRNAでも、配列や構造が少し変わるだけで、発現量や安定性、働き方は大きく変わります。だからこそ、開発の出発点である「設計」が重要です。VectorBuilderは、自己増幅型RNA(saRNA)、環状RNA(circRNA)、siRNAなどから目的に合うモダリティを選び、配列、UTR、IVTベクターを個別に設計します。120 ntを超えるPoly(A)テールを含むベクターの設計・クローニングにも対応し、後工程まで見据えた土台をつくります。
なかでもPoly(A)テールは、mRNAの安定性や発現に関わる重要な要素です。一方で、長いPoly(A)配列はベクター内で不安定になりやすく、狙った長さを保つことが容易ではありません。VectorBuilderは、この課題に対して長いPoly(A)配列を安定して維持できるIVT mRNAベクターを開発しました。目的とする発現特性に合わせて長さを調整できるため、「作れる配列」ではなく「必要な性能につながる配列」を目指した設計が可能です(図1)。
60~150 ntのPoly(A)テールを持つベクターを制限酵素で切断し、DNA断片を解析しました(左:従来型IVT mRNAベクター、右:VectorBuilder IVT mRNAベクター)。VectorBuilderベクターではPoly(A)配列が安定して維持され、不安定な副産物を示すスメアも認められませんでした。
設計したRNAの性能を引き出すには、修飾と精製も欠かせません。m1Ψ、m5C、5moU、m6Aなどの修飾ヌクレオチドを目的に応じて選択し、発現向上や不純物低減を図ります(図2)。さらに、独自の精製プロセスで不要な成分を効率よく除去。セルフリー・動物由来成分フリーの製造にも対応し、研究段階から次の開発ステージを見据えた品質を組み込みます。
図2. 修飾ヌクレオチドによる遺伝子発現の向上とdsRNA不純物の低減(A)m1Ψおよびm5Cで修飾したmRNAではルシフェラーゼ発現を、(B)m1Ψで修飾したmRNAではdsRNA不純物を評価し、いずれも非修飾ヌクレオチド(Unmodified)と比べて発現向上と不純物低減の効果を確認しました。
開発初期から品質を組み込むGVP(Good Vector Practice)
VectorBuilderが重視するのは、後から品質を付け足すのではなく、設計の段階から品質をつくり込むことです。その考え方を自社基準「Good Vector Practice(GVP)」として、RNA設計にも取り入れています。製造適性や品質基準を早期に考慮することで、開発後期に大きな設計変更が必要になるリスクを抑え、研究から前臨床、さらに製造へと進みやすい道筋を整えます。
RNAの機能を引き出すLNPエンジニアリング
どれほど優れたRNAでも、目的の細胞に届かなければ十分に働くことはできません。そこで重要になるのが、RNAを包み、守り、運ぶLNPです。VectorBuilderは、mRNAだけでなく、Cas9 mRNA/sgRNAミックスやプラスミドDNAなど、多様な核酸のカプセル化に対応しています。最大100%のカプセル化効率と、PDI 0.1未満の均一性を目指して製造条件を最適化します(図3)。さらにSM-102、ALC-0315、MC3などの標準製剤に加え、研究目的やRNAの特性に合わせたカスタム設計も可能です。
図3. LNP-mRNAの粒子形態と均一性の評価 (A) LNP-mRNAのCryo-TEM画像。スケールバーは100 nmを示します。(B、C) 動的光散乱法(DLS)により、粒子径の均一性を示すPDI(B)と表面電荷の指標であるゼータ電位(C)を測定しました。これらの解析から、LNP製剤の粒子特性と均一性が評価できます。
しかし、LNPの粒子径や均一性を測るだけでは、最適な製剤とはいえません。保存中の安定性、細胞への取り込み、実際の発現量まで確認し、その結果を次の設計に反映します。さらに、特定の細胞や組織を狙う場合には、LNP表面に抗体や抗体フラグメントなどを結合する表面エンジニアリングにも対応します。単に包むだけでなく、「どこへ、どのように届けるか」まで設計します(図4)。
図4. 抗CD31抗体結合LNP-mRNAによる肺への標的送達と遺伝子発現の向上 マウスへの静脈内投与により、抗CD31抗体結合LNP-mRNAで、肺におけるルシフェラーゼ発現の向上を確認しました。
研究用RNAを医薬品候補へ――設計から機能評価まで一貫支援
研究用のRNAを作れたとしても、それだけでは医薬品候補にはなりません。十分に発現するか、安定しているか、望ましくない免疫反応を起こさないか、目的の組織へ届くか、そして期待する効果が得られるか。開発では、こうした問いに一つずつ答えながら、RNAと送達方法を磨き上げていく必要があります。
VectorBuilderの「医薬品用RNA開発CROサービス」は、ベクター設計、RNA製造、LNPカプセル化、品質評価、機能検証を一つの開発サイクルとして支援します。評価で見えた課題を次の設計へ戻し、再び検証する。この反復を同じチームと技術基盤で進めることで、工程間の情報ロスを抑え、より有望な医薬品候補へ近づけます。将来の製造や品質管理まで見据えて設計するため、研究成果を次のステージへつなぎやすいことも特長です。
目的別に組み立てるRNA医薬品開発
必要な設計は、治療の目的によって変わります。ワクチンでは強い免疫応答、ゲノム編集では編集ツールを届ける効率、CAR-T療法では細胞内での一過性発現が重要です。VectorBuilderは、各用途で何を実現したいかを出発点に、RNA設計、LNP製剤化、機能評価を組み合わせます。
【代表的な支援領域】
1.mRNAワクチン: RNA設計からLNP、in vivo評価まで
抗原をコードするRNAの設計からLNPカプセル化、機能評価までを一つにつなぎます。発現性と安定性だけでなく、体内でどれだけ効率よく届けられるかも最適化し、動物モデルでの薬効評価へ展開。強い免疫応答につながる候補の選定を支援します。
2. CRISPRゲノム編集: RNAとLNPを組み合わせたデリバリー最適化
Cas9 mRNAとgRNAを同じLNPに封入するなど、編集に必要な要素を目的の細胞へ届ける方法を設計します。in vitroからin vivoまで段階的に評価し、RNA配列とデリバリーの双方からゲノム編集効率の向上を目指します。
3. CAR-T療法: 一過性CAR発現を活用したT細胞エンジニアリング
IVT RNAを使えば、ゲノムに外来遺伝子等を挿入せずにCARを一時的に発現させることができます。VectorBuilderは、ex vivoでのCAR-T細胞作製に加え、LNPを用いたin vivo T細胞エンジニアリングも視野に、CARコンストラクトの設計から製剤化、機能評価までを支援します。ヒトプライマリーT細胞でのCAR発現や細胞傷害活性まで確認し、次の検討につながるデータを提供します。
医薬品候補をGMP製造へ――CROとCDMOをシームレスにつなぐ
候補が絞り込めました。その次に待っているのが、製造スケールとGMP対応という大きな壁です。研究室で成立した条件が、そのままヒトへの臨床研究や商用製造を目指した大規模製造で通用するとは限りません。品質管理、文書管理、トレーサビリティなど、求められる基準も格段に高くなります。ここで設計や工程を大きく見直す必要が発生すると、それまでにかかった時間もコストも失われます。
VectorBuilderでは、創薬基礎研究用のリサーチグレード、非臨床研究や安全性評価用のGMP-likeグレード、臨床用GMPグレードという複数の製造グレードのRNA関連受託サービスを提供することで創薬研究を支援しています。最初から将来の臨床製造を意識して条件を設計し、開発段階に合わせて段階的に品質を高めることで、創薬研究から前臨床、そしてGMP製造への移行をスムーズにします。
開発段階に応じた製造スケールと工程設計
GMPグレードのmRNA・LNPは、50 mgから2 gまでのスケールに対応し、ICHガイドラインに準拠したGMPスイートで無菌充填まで実施します。プラスミド、mRNA、LNPの各工程を別々に考えるのではなく、上流工程(USP)から精製・回収を担う下流工程(DSP)、分析法開発までを一体で設計します。スケールが変わっても再現性や同一性を補完した製造プロセスを構築します。
次の開発段階を支える多角的な品質評価
次の開発段階へ進むには、「作れた」だけでなく、「どのような品質で作れたか」を示すデータが必要です。IVT RNAでは濃度、純度、完全性、キャッピング効率、Poly(A)長、dsRNA・DNA・タンパク質などの残留物、エンドトキシンを評価します。LNPについても、カプセル化効率、粒子径、PDI、ゼータ電位、無菌性などを確認し、製造した製品の特性を多角的に捉えます。
さらに、文書管理、トレーサビリティ、保存用サンプルの保管にも対応します。製品そのものだけでなく、その品質を説明できる記録まで整えることで、次の開発判断を支える基盤をつくります。
つまり、ベクタービルダーの支援は研究・探索 → 前臨床開発 → プロセス開発 → 臨床研究→商用化という道のりを見据え、各段階で得た知見を次へ引き継ぎます。開発を進めるたびにゼロからやり直すのではなく、積み上げたデータを生かして前へ進めることが、ワンストップ支援の大きな価値です。
VectorBuilderは、約100,000平方フィートのウイルスベクター・プラスミドDNA向けGMP製造施設に加え、RNA製造に特化したGMP施設を整備しています。研究・探索から臨床開発を見据えた製造まで、プロジェクトごとに異なるスケール、品質要件、スケジュールに柔軟に対応します。
研究成果を止めない:ベクタービルダーをパートナーに
RNA医薬品の開発には、設計、製造、送達、評価、GMP製造という異なる専門領域の横断の連続です。もし、特化した委託を工程ごとに選択すると、技術移管やデータの引き継ぎ、マテリアルの移動、マテリアルの評価など、同じ検討を繰り返すこともあります。小さな分断の積み重ねが、開発の時間とコストを押し上げてしまうのです。
VectorBuilderは、その分断をなくすため、研究・探索を支えるCRO機能と、プロセス開発・GMP製造を担うCDMO機能を一つの大きな自社のアンブレラの下に統合しています。「試作」「製造」「精製」「送達」「品質評価」。この流れを同じパートナーと進めることで、情報と経験を途切れさせず、次の判断を速くします。
一つの発見を、研究室の中だけで終わらせない。設計から始まったRNAを医薬品候補へ育て、臨床開発を見据えた次のステージへつなぎ、医薬品とする。VectorBuilderは、技術とデータを連続させるワンストップ支援によって、RNA医薬品の実用化に向けた歩みを加速します。