「一人ひとりとのコミュニケーションを大切に。」人を育て、ホテルの未来をつくる――リーガグラン京都・リーガプレイス京都 四条烏丸 総支配人 矢野 憲

2026.10.01 11:20
2025年に創業90周年を迎えたリーガロイヤルホテルズ。その歩みを支えてきたのは、受け継がれてきた「あたたかいおもてなし」の精神と、時代とともに変化するゲストの期待に応えるべく、新たな価値を生み出そうとする挑戦の積み重ねだ。
2026年4月、新たに「リーガグラン京都」「リーガプレイス京都 四条烏丸」の総支配人に就任したのは、レストラン、マーケティング、宿泊など、幅広いキャリアを歩んだ矢野 憲氏。「プレイヤー」から「リーダー」へ。人を育てることを大切に、スタッフともに日々お客様のために挑む同氏の歩みに着目し、個々の成長を後押しするリーガロイヤルホテルズの企業風土に迫る。
写真:リーガグラン京都・リーガプレイス京都 四条烏丸 総支配人 矢野 憲(やの あきら)


異動のたびに実感したロイヤルホテルのあたたかさ


──2026年4月に、リーガグラン京都とリーガプレイス京都 四条烏丸、二つのホテルの総支配人に就任されました。就任にあたって、どのような思いをお持ちでしたか。


辞令をいただいたときは大変驚きましたが、「若い世代に積極的にホテル運営を担ってほしい」という会社が思いがあったのだと受け止めています。また、私のような30代のスタッフを抜擢することで、若手スタッフに対し、新たなキャリアの可能性を示したいという意図もあったのではないかと思います。


リーガグラン京都とリーガプレイス京都 四条烏丸では、私は3代目の総支配人になります。知識や経験もまだまだ及びませんが、自分らしくフレッシュな気持ちで臨み、新しい空気をホテルにもたらすことができたらと決意を新たにしました。


──矢野さんのこれまでのご経歴についてもお聞かせください。入社以来、さまざまな部署をご経験されていますね。


2012年にロイヤルホテルに入社し、リーガロイヤルホテル大阪「レストラン シャンボール」で7年近く料飲サービスに携わりました。その後、マーケティング部で約4年半従事し、リーガグラン京都のマネジャーを務め、現在に至ります。


レストランはお客様との接点が多く、関係を築きながらお客様のニーズを肌で学ぶ場所でした。一方、マーケティング部では計数管理や市場分析を、リーガグラン京都では現場責任者の役割も担い、ホテルスタッフの人員配置などの現場運営に携わりました。
それぞれ異なる業務を経験したことで、ホテルを一つの角度からだけでなく、多角的に捉える視点が身につきました。これは今、総支配人という立場でホテル全体を見渡すうえで、非常に大きな財産になっています。


──様々な職場を経験された矢野さんですが、どの職場にも共通する「ロイヤルホテルらしさ」はありましたか。


はい。やはり、「人のあたたかさ」はどの職場でも感じました。新しい職場に行くたびに未知の仕事への不安はありましたが、その都度、上司や同僚に支えられながら挑戦することができました。周囲の人に恵まれていたからこそ、ここまで歩んでこられたのだと思います。


それは総支配人となった今も変わりません。スタッフ一人ひとりが真摯に仕事に向き合い、一生懸命にホテルを支えてくれています。あたたかい仲間に恵まれ、支えられていることが、ロイヤルホテルらしさなのだと実感しています。




スタッフの成長がホテルの成長を実現する


──「総支配人」という役割ならではの難しさについては、どのように感じていらっしゃいますか。


総支配人になると、求められる視野の広さや責任の重さは一変しました。売上や収益の管理はもちろん、人材育成、設備投資、安全衛生管理など、あらゆる領域に目を配る必要があります。今は2つのホテルを任されていますので、それら並行して行う必要があります。それぞれの状況を把握しながら運営していく難しさも痛感しています。


──その難しさを、どのように乗り越えようとされていますか。


以前は「自分が動けば何とか解決できる」と考えることが多かったのですが、総支配人になると、カバーすべき領域があまりにも広く、自分一人の力では到底足りないと気づきました。そこで今は、「自分が直接解決する」のではなく、「スタッフ一人ひとりが持っている力を最大限に発揮できる環境を整える」ことに意識を向けています。一人で抱え込まず、周りを巻き込みながら仕事を任せていく。スタッフが主体的に考え、力を発揮できる環境をつくることこそ、総支配人の重要な役割だと考えるようになりました。


──実際にスタッフに任せることで、どのような変化がありましたか。


スタッフが自発的にさまざまなことに取り組んでくれることが増えました。例えば、「リーガメンバーズ」の会員獲得では、方法や進め方などを私から指示するのではなく、「どうすればお客様に喜んで会員になっていただけるか」「どんなご案内やお声がけをすればいいか」をスタッフ同士で話し合い、アイデアを出してもらっています。


ホテルの開業6周年を記念したオリジナルのピンバッジの制作も、その一つです。アイデアの立案から制作まで、すべてスタッフが主体となって進めてくれました。大阪・関西万博の影響もあるのか、バッジ集めが話題となっているようで、そうしたトレンドを捉えた発想は、若手スタッフならではの感性だと思います。


このように、スタッフ自身が考えて行動することで、着実に成果があらわれています。任せることで主体性が生まれ、それが成果につながっていくことに、私自身も手応えを感じています。


──そうしたスタッフの能力を引き出すために、工夫されていることはありますか。


意識しているのは「対話」と「雑談」です。「対話」は業務の中で行うオフィシャルなコミュニケーション、「雑談」は休憩時間などに交わすフランクな会話と捉えています。業務上の対話は不可欠ですが、私は雑談も非常に重要だと考えています。一見すると仕事とは関係のない会話の中に、その人の新たな一面や考え方を知るきっかけがあります。そこから、新しい仕事のアイデアやヒントが生まれることもあります。


──総支配人に求められる資質は何だと思われますか。


大きく二つの能力が必要だと考えています。一つは、「コミュニケーション能力」です。私自身もそうでしたが、上司や先輩から声をかけてもらったり、自分の仕事を認めてもらったりすることは素直にうれしいものです。だからこそ、日頃からスタッフとコミュニケーションを取り、一人ひとりのことを知ったうえで、適切な声かけやフィードバックをすることが大切だと思います。ホテルの成長は、スタッフ一人ひとりの成長なくしては実現できません。そうした成長を後押しすることも、重要な役割だと考えています。


もう一つは柔軟性、「変化を受け入れる力」です。AIの発展など、ホテルを取り巻く環境は大きく変化しています。特に京都は、国内外から多くのホテルが集まる激戦区です。これまでの手法や固定観念にとらわれず、新しい情報や考え方を取り入れながら柔軟に挑戦していく姿勢が、これからますます重要になると思います。
写真左:リーガグラン京都 開業6周年記念バッジ 写真右:スタッフと談笑する矢野氏




人にしかできない心のこもったおもてなしを


──リーガグラン京都とリーガプレイス京都 四条烏丸、いずれも宿泊機能に特化したホテルですが、「リーガロイヤルホテルズ」の一員として、そのおもてなしへの期待値も高いのではないでしょうか。


その視点は非常に大切にしています。リーガロイヤルホテルズというブランドへの信頼や期待を持ってお越しいただくお客様の期待にしっかり応えたいという思いでサービスにあたっています。一方で、スタッフ数などのリソースに限りがあるのも事実です。そのため、AIなどのテクノロジーも取り入れながら、いかにお客様との接点を作るかを大切にしています。


お客様が最終的に求めていらっしゃるのは、「このホテルで過ごせて良かった」「あたたかいスタッフに出会えてうれしかった」といった「体験価値」だと考えています。選ばれるホテルであり続けるために、人にしかできない心のこもったおもてなしを、これからも守っていきたいと思います。


──人によるおもてなしを大切にするためには、スタッフの成長も欠かせないと思います。矢野さんご自身も、これまでさまざまな学びの機会を経験されていますが、現在の仕事にどのように生かされていますか。


2016年の「G7伊勢志摩サミット」へ、料飲サービスのスタッフとして現地に派遣され、各国の首脳へ料理をサービスするという機会がありました。そこでは、私と同じように派遣された外部のホテルパーソンとも出会うことができました。自分の会社の中だけで仕事をしていると、自分たちのやり方が当たり前になりがちです。しかし外に出てみると、サービスへのさまざまなアプローチや、同じ業界で働く方々の多様な考え方に触れることができ、大きな刺激を受けました。そこで得た新たな視点や出会いは大きな糧となっています。


このような学びの機会を与えてくれたロイヤルホテルの環境にも感謝しています。最近では人事制度の改定があり、評価の可視化が進んでいます。努力や成果が適切に評価される仕組みが整うことで、若手スタッフにとっても将来のキャリアを描きやすい環境になってきているのではないでしょうか。


──最後に、総支配人として、そして一人のホテルパーソンとして、今後の展望をお聞かせください。


まずは、「ここで働けて本当に良かった」「このホテルで自分は成長できた」と、一人でも多くのスタッフに心から思ってもらえる組織をつくりたいと考えています。それが、お客様の満足につながり、ホテルの発展へとつながっていくはずです。


私自身、これまで多くの上司や仲間に支えてもらいました。これからは自分がその役割を担い、次の世代の成長をしっかり後押しできる人になりたいと思っています。後になって振り返ったときに、「あのホテルで働いていたとき、矢野さんがいたな」「出会えてよかったな」と思い出してもらえるような存在になれたらうれしいです。そのためにも、今日も現場のスタッフ一人ひとりとのコミュニケーションを大切に積み重ねていきます。

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