人口減少、人材不足、財政制約と、課題が山積する地方自治体において、カクナルは「職員」と向き合い続けることを選んでいます。本業は民間企業の組織人事コンサルティングでありながら、青森県八戸市をはじめ自治体のを支援する理由と、そこでなにが起きているのかを、自治体支援チームの寺田 直斗(テラダ ナオト)と片田 雄大(カタダ ユウダイ)の2人に聞きました。代表取締役の中島 篤(ナカシマ アツシ)とともに、カクナルが自治体に向き合う理由と、現場だからこそ見えてきたことをお届けします。
対談メンバー
寺田 直斗(テラダ ナオト)
株式会社CAQNAL(カクナル) CGO 行政事業責任者 兼 営業責任者
市役所・県庁での行政職員経験を経て、大手総合コンサルティングファーム、事業会社を経験。2026年7月よりカクナルに正社員として参画。
(以下、寺田)
片田 雄大(カタダ ユウダイ)
株式会社CAQNAL(カクナル) 自治体支援プロジェクトリーダー
新卒一期生として入社し、現在4年目。自治体のエンゲージメント調査の設計・実施から現地での伴走まで、実務の最前線を担う。
(以下、片田)
中島 篤(ナカシマ アツシ)
株式会社CAQNAL(カクナル) 代表取締役
(以下、中島)
震災をきっかけに「地方創生」へ。行き着いた先が「自治体職員」だった
カクナル広報:
民間企業向けの組織人事コンサルティングを本業とするカクナルが、なぜ自治体支援に踏み込んだのか。その原点を中島さんから伺えますか。
中島:
会社としての戦略よりも、私個人の行動が先にありました。きっかけは2011年の東日本大震災です。地元の福島で目にした光景は今も忘れられません。あのとき働き方や、人との関わり方を変えたいと強く思い、地方創生を方針に動き始めました。フリーランス時代には「東北に雇用を」というテーマを掲げていたほどです。
その過程で、県職員や警察官として最前線で働く同級生たちの姿を見て、あることに気づきました。自治体職員の働き方には「ハードワークが当たり前で、それでも叱責される」という前提が染みついているのではないか、ということです。人事を専門とする自分にできることは、自治体職員のみなさんに向き合うことではないか。そう考え始めたのが2020年前後です。
私たちは「toG」と呼んでいますが、出発点は地方創生です。この領域で、他の人があまり着手しておらず、自分や自社の価値をより発揮できることは何かと考えたとき、それが人事であり、さらに言えば自治体職員でした。
カクナル広報:
寺田さんは、どのような経緯でこのプロジェクトに関わるようになったのでしょうか。
寺田:
私はもともと行政職員でした。市役所では福祉分野からキャリアを始め、介護保険や虐待対応のケースワーカーとして、さまざまな世帯の現実に向き合ってきました。その後、財政課に異動して予算査定を担当するようになると、部局長や市長と直接議論する機会が増え、視座が一段上がった感覚がありました。同時に「この経験は民間でも活かせるのではないか?」と考えるようになったのです。
その後、長野県庁でも勤務し、市と県の両方を経験してから、大手総合コンサルティングファームの公共部門に転じました。ひとつの自治体にいる限り、貢献できるのはその自治体の住民だけです。外に出れば、行政を横断的に良くしていくことができ、それが地域経済にもつながります。そう考えたのが転身の理由でした。
カクナルとの出会いは、その後に在籍した事業会社で、中島さんが自治体向けのアドバイザーとして関わっていたことがきっかけです。前職の事業会社は「人がすべて」というビジネスの会社だったこともあり、組織や働き方、人事に関する案件は中島さんに相談すればいい、という空気が社内にありました。
中島:
当時の企画では自治体とのきっかけを持たせていただきました。そしてそこで「あの企画全体をディレクションしている人がいる」と紹介されたのが寺田さんです。当時の私は、地方への思いはあっても、それを組織的な支援に落とし込み、自治体に提供できる明確な価値にする手法を持ち合わせていませんでした。寺田さんに相談したことが、カクナルの自治体支援が芽吹き、本格化していったターニングポイントだったと思います。
「安定」だけでは選ばれない。同世代が見た、若手職員が離れていく理由
カクナル広報:
片田さんは新卒で入社し、現在はこのプロジェクトの実務を担っています。もともと地方創生は関心のある領域だったのでしょうか。
片田:
私自身が岐阜県出身で、大学時代はよさこいサークルに所属し地域の皆さんと携わってきたこともあったので地方創生には興味がありました。ただ、それはまちおこしや商店街の活性化といったイメージに留まっており、自治体職員に焦点を当てた具体的な地方創生に最初から強く関心を持っていたわけではありません。きっかけは、カクナル社員として現場に携わるようになってからです。行政職員の皆さんが生き生きと働けば、その町は確実に良くなっていきます。その変化を肌で感じるようになり、この領域に本気で向き合いたいと思うようになりました。
中島:
今では片田さんが地域に深く入り込み、地元で働く人々の声を直接吸い上げてくれています。新卒4年目でここまで現場で対話できているのは、彼の真摯な姿勢が信頼を積み重ねてきたからだと思います。
カクナル広報:
自治体の若手職員のやりがいや「働き続けたい」という気持ちが揺らぐ背景にはどのようなものがあると、同世代として分析していますか。
片田:
ひとつは「こういうものだから」と、前例を踏襲している環境です。例えば、PDFデータの送付で済むものをわざわざ紙に出力して渡すことが当たり前になっているというような「なぜか分からないが続いている慣習」に、不満を感じている若手は少なくありません。
もうひとつは待遇です。民間と比べて給与水準が高いとは言えない自治体は、「安定」という理由だけでは選ばれなくなってきています。加えて転職の抵抗感もない今、離職の原因になっていると感じます。
寺田:
私が行政を辞めた頃は、辞める人自体が珍しく、周囲に驚かれるような時代でした。しかし今は、若手だけでなく中堅の離職も年々増えています。行政では、能力の高さではなく、年数や役職を基準に給与が決まってしまいます。そこに構造的な不満があると、当時から思っていました。
「辛いのが当たり前」を疑う。元行政職員が見た自治体の現在地
カクナル広報:
実際に自治体の現場に携わると、職員の働き方に対する課題意識にどのような印象を持ちましたか。
寺田:
課題意識を持っている方は多くいらっしゃいます。ただ、その内容を上長に共有しにくいというケースが散見されます。課題が共有されるか、そもそも意識を持てるかは、庁内の「風通しの良さ」に大きく関わるのではと感じます。
私はもともとシステムや制度の領域を長く担当してきたので、行政を良くするうえで制度やシステムが重要だという考えは今も変わりません。ただ、最終的にはそこで働く人と組織に目を向けなければ、本当の意味では良くなりません。だからこそサーベイには大きな価値があります。「何かがおかしい気はするが、何が問題なのか分からない。」という状態に対して、まずデータで事実を示し、打ち手を出します。それを全国の自治体に広げていきたいと考えています。
中島:
寺田さんは元職員なので実感されてきたと思いますが、「仕事は辛いのが当たり前」という感覚で働き続ける方が本当に多いのです。キャリアについても半ば諦めていて、それが年数を重ねるうちに常識になってしまいます。だから、自治体の中で変革を志す方は、良い意味で異質な存在です。そうした現場の声を、片田さんが実務の中で丁寧に拾ってくれています。
カクナル広報:
片田さんは北海道浦幌町で、職員の方と食事を共にする機会もあると伺いました。現場で感じていることはありますか。
片田:
私が直接お話する方々は、外部人材を受け入れる文化が根づいた部署にいらっしゃることが多く、皆さん非常に前向きに働かれています。外部の視点を得ることで「自分たちの町は良い町だ」と改めて気づき、それが仕事へのモチベーションにつながっている方も多いようです。一方で、住民のみなさんや外部の方と接する機会が少ない部署では、自分たちの仕事の価値や地域とのつながりを実感しにくいこともあるのではないかとみています。
また、「ジョブローテーション」にポイントがあると感じます。自治体ではさまざまな部署を経験することで、これまで培った経験やスキルを別の仕事に活かせるメリットがあります。一方で、異動は何年単位、と自動的な部分があるので、本人の温度感とタイミングが合わないと、それまで取り組んできた仕事や専門性の積み上げが途切れたように感じてしまうこともあるようです。さらに町役場では職員数が限られているため、一人ひとりが担う業務の幅も広く、異動時の引き継ぎを含めて負担が大きいという声もよく聞きます。
寺田:
自治体の職員の方と一緒に食事をする、というのは本来なかなかないことですが、そうした場だからこそ出てくる話があります。
中島:
自治体の方との関係は、多くの場合「来てくれてありがとうございます。」という言葉から始まります。私もこれまで何度となく「実際にこの土地に足を運んでくれたのは中島さんだけです。」と言っていただき、そこから距離を縮めることができた実感があります。直接会ってからの打ち合わせは、その後オンラインミーティングになっても、全く空気が違うと感じます。
片田:
私も同じ感覚です。現地に行くのは、単に話を聞くためだけではないんですよね。庁舎に入ったときの空気感や、職員同士がどうコミュニケーションを取っているのか、皆さんがどんな表情で働いているのか。実際にお話ししている方だけではなく、その職場全体がどんな雰囲気なのかを見ることも、現場を理解する上ですごく大事だと思っています。だからこそ、できる限り自分の足で現地に行って、自分の目で見て感じるようにしています。
直感を事実に変える。職員が本音を書き、担当者の負担を増やさない進め方
カクナル広報:
人も時間も限られている中で、自治体側の担当者に負担がかかってしまうのではないでしょうか。実際の進め方を教えてください。
片田:
エンゲージメント調査では、設問の設計から集計・分析、その後の施策の検討まで、基本的にはカクナルが担っています。自治体の担当者の方にお願いするのは、庁内への周知や回答のリマインドなどが中心です。その後、一緒に設問や職員のみなさんへの説明内容を固め、庁内の承認を経て調査を実施し、集まった回答を分析して、次の施策につなげていきます。
私が特に大事にしているのが、調査を始める前の説明です。自治体では「エンゲージメント」という言葉自体に馴染みがない方も少なくありません。「何のためにこの調査をするのか」「回答した内容がどう使われるのか」「その先に職場をどう変えていきたいのか」という調査の先のゴールまで丁寧に伝えるよう心がけています。
単に回答率を上げるためだけではなく、職員の皆さん自身に、自分たちの職場をより良くしていくための調査だと感じてもらうことが大切だと思っています。
私たちにとって、エンゲージメントサーベイはあくまで入口です。調査をして、結果を出して終わりではありません。そこから何を変えるのか、実際に職場がどう変わっていくのかまでつなげていく。調査そのものではなく、その先の変化をつくることが目的だと考えています。
寺田:
ただ、調査を実施してレポートを出すだけなら、調査会社でも可能です。改善策の実行まで手触り感を持って最後まで伴走することがカクナルの特徴です。「民間ではこうしています」ではなく、行政の実情を理解したうえで「だからこうしましょう」と言える支援をしたいと考えています。
カクナル広報:
サーベイは、職員の方に本音を書いてもらえてはじめて意味を持ちます。実施にあたって大事にしていることは何ですか。
寺田:
匿名性を確実に担保すること、これに尽きます。私自身が職員だったのでよく分かるのですが、職員は人事からの調査をどうしても警戒してしまいます。「なぜこんなことをするのか」と、まず思うのです。ですが、匿名性が絶対に守られると分かれば、「それなら答えてもいい」と気持ちが変わるケースが多いです。。
現在支援している自治体でも、「匿名性は本当に大丈夫か」という質問をいただきました。そこは心配いりません、と元職員としても言い切れることは、カクナルの強みだと思っています。この記事を自治体職員の方が読んでくださるなら、是非その点を覚えていただきたいですね。
カクナル広報:
サーベイを実施することで、自治体側にはどのような変化がありますか。
寺田:
最大の価値は、事実が可視化されることです。自治体の人事担当者は、直感的には「ここに問題がある」と分かっていることが多いものです。データを取ると「やはりそうだった」と裏づけられます。人事が「こう考えるのでこうしたい」という提案にエビデンスが付与されるので、最終的な意思決定者である首長にサーベイの数値を根拠に提案でき、議論を前に進めることができます。カクナルはその後押しを担っている、と考えています。
民間も行政も分かる。そして、現地に行く
カクナル広報:
自治体支援において、カクナルならではの強みは何だと考えていますか。
寺田:
よく比較されるのは調査会社ですが、そもそも役割が違います。調査会社は分析までが仕事で、私たちは施策の実行まで伴走します。むしろ意識しているのは、大手の総合コンサルティング会社との違いです。大手には公共部門がありますが、その部門は民間企業のクライアントを基本的には持ちません。行政には特化していても、民間の知見は必ずしも持ち合わせていないのです。カクナルは民間と行政の両方を手がけているので、民間で培った知見を行政に適用できます。(勿論、逆もしかりです。)加えて、行政を内側から知る私がいて、片田さんも現場に通いながら行政への理解を深めています。カクナルとしても行政領域を重視し、チーム全体で行政ドメインに強くなっていることが、私たちの強みです。
片田:
私が感じている強みは、現場との距離の近さです。自治体の職員の方と一緒に地元のお店に行ったり、仕事以外の話をしたり。そういう時間の中で初めて聞ける話や、見えてくることが想像以上に多いんです。打ち合わせの相手だけではなく、そこで働く皆さんや地域そのものを知りながら、同じ目線で一緒に考えていく。そうした関わり方は、私たちならではだと思います。
寺田:
コンサルティング業界では、東京本社の担当者が北海道や東北、九州の現地に直接足を運ぶのは珍しいことと言えます。通常は最寄りの拠点の担当者がアサインされます。私たちは拠点にかかわらず現地に行きます。それによって全国の知見が蓄積されます。カクナルの規模ならではの動き方です。
中島:
もうひとつ付け加えると、他の自治体を知ることで自分たちの現在地が見える、という価値があります。意外なことに自治体同士は横のつながりが希薄だったりもします。数年前、とある自治体の方から「他の自治体を紹介してほしい」と依頼されて驚いたこともあります。
寺田:
自治体には競合という概念がありません。民間企業に「人事戦略を教えてください」と聞いても答えは返ってきませんが、自治体同士なら「この資料をお送りします」というやり取りが自然に成立します。ただ、どの自治体がどんな取り組みをしているかは、お互いに把握できていません。私たちは自治体横断で調査・研究をしているので、そこをつなぐことができます。自治体間をつなぐハブに、カクナルがなりつつあると感じています。
片田:
実際に自治体の方から、「他の自治体ではどうしているんですか」と聞かれることはとても多いです。私たちは複数の自治体の現場に入っているので、他の自治体でどのような取り組みをしているのか、許可を取った上で(?)背景も含めてお伝えすることができます。もちろん、そのまま同じやり方を当てはめるのではなく、各地域の状況に合わせて、参考になる部分を一緒に考えていきます。そうやって自治体同士の人や知見をつなぎながら、それぞれの現場に合った取り組みにつなげていきたいです。
迷うくらいなら、まず現在地を知る
カクナル広報:
最後に、「取り組みたいが迷っている」という自治体の担当者の方へ、一言ずつお願いします。
中島:
迷うくらいなら、まず動いてみてください。最初のハードルは高く感じるかもしれませんが、今まさに同じように悩む各地の自治体からご相談をいただき、解決へと歩を進めています。他の自治体がどのように導入を進めたか、具体的にお話しできますし、何より、みなさんの働き方や職場環境、そしてご自身に、もっと関心を向けてほしいと思います。変化はそこから始まります。その一歩を、カクナルがご一緒できれば嬉しいです。
寺田:
まず、自分たちの現在地を知ることから始めてほしいと思います。内側からは客観的に見えにくいものです。支援事例が増えてきたので、他の自治体との比較もできるようになりました。自治体の皆さんにとっては、参考になる材料が多いと思います。ぜひご連絡ください。
片田:
私が現地に伺います!
自治体によって、抱えている悩みも職場の雰囲気も全く違います。だからこそ、まずは現場で皆さんの声を直接聞かせてください。「エンゲージメント」という言葉を難しく考えず、もっと働きやすくしたい、もっと良い組織にしたいという思いがあれば、そこから一緒に考えましょう。皆さんが生き生きと働ける職場をつくるために、私自身も現場に入り続けていきたいと思っています。