「ルーヴルの魔女」を手放しかけた日から始まった、“自分の名前で立つ”物語──「肩書き」とは多面的・複層的な魅力と意味を伝える文脈設計の肝

2026.08.13 09:00
タロットか、西洋美術史か─「どちらか」を「両方」に変えるまで~ デジタル図書館PABLOS 開発ストーリー
 肩書きとは、一つのラベルではありません。その人の仕事を平面的に切り取るものではなく、多面性を立体的に伝えるための「文脈設計」です。
 私たちパブロス株式会社が運営するデジタル図書館「PABLOS(パブロス)」では、利用者が自分の中にある複数の顔を、無理にどれか一つへ絞るのではなく、どうつなげるかを見つけていく──その過程を後押ししてきました。
 本稿では、この考え方がなぜ生まれたのか、そしてそれが一人の利用者が“自分の名前で立つ”までの物語を、館長・神田昌典の視点からお伝えします。
■ なぜ私たちは「肩書き=文脈設計」を後押しするのか
 肩書きが大事なのは、肩書きそのものが偉いからではありません。その肩書きが、その人の未来の意味を決めてしまうからです。同じ経験や強みでも、それをどの文脈で社会に差し出すか、どの高さの頂点に置くかで、価値はまったく変わります。
 私たちが大切にしているのは、「新しい呼び名をつくること」ではありません。本当はずっとその人の中にあったものを、何を統合し、どんな意味として届けるか。そこが定まったとき、人の仕事は急に立体化していきます。その設計思想を、鮮やかに体現してくださった利用者が、内田ユミさんです。
■ 「ルーヴルの魔女」は、武器であり、鎧でもあった
 最初から、内田さんが「ルーヴルの魔女」だったわけではありません。起業初期、西洋美術史を仕事にしていく中で、「美術史だけでは伝わりにくい。もっと分かりやすい何かをつけた方がいい」という助言を受けたことが、その名前の始まりでした。人の記憶に残る強い看板となり、内田さん自身も気に入って、長く大切に使ってきた肩書きです。


 けれど、その肩書きは武器であると同時に、どこかで彼女を守る鎧でもありました。西洋美術史を仕事にしていると言うと、「どちらの大学で教えているのですか」と聞かれる。そんなとき、「自分のような何者でもない人間が、学術的なものを扱っていいのだろうか」という小さな引け目があったと、あとになって気づいたといいます。「ルーヴルの魔女」という名前は、目立つためだけでなく、自分の不安を包み込んでくれる存在でもあったのです。
■ 設計思想①──たった一言が、静かに“熟成”をもたらす
 転機は、PABLOSで訪れました。神田昌典が、ふとした流れの中でこう言ったのです。


「もう、ルーヴルの魔女って言わなくてもいいんじゃない?」


 ほんの一言。強く迫ったわけでも、否定したわけでもありません。その場では、すぐには意味が分からなかったそうです。なにしろ、その名前はずっと自分を守ってくれたもの。好きでもあったし、簡単には手放せない。けれど、その言葉は彼女の内側に静かに残り、時間をかけて熟成されていきました。


 やがて彼女は気づきます。「ルーヴルの魔女」は、持っていてもいい。でも、なくてはならないものではない、と。最初に「内田ユミだけでは弱い」と言われた感覚が、いつのまにか自分の中で固定化されていた。けれど本当は、名前が弱かったのではなく、まだ自分が自分の価値を言葉にしきれていなかっただけだったのかもしれません。ここで初めて、肩書きではなく、自分の名前で立つ感覚が芽生え始めました。
■ 設計思想②──頂点を高く設計する。「どちらか」を「両方」へ
 この変化を、神田はマーケティングの視点から解き明かしていきます。「ルーヴルの魔女」という言葉にはインパクトがある。けれどその言葉だけで見せると、どうしてもスピリチュアル市場の一員として受け取られやすくなる。すると、彼女が本来持つ西洋美術への深い知見、フランス語の素養、ITやAIへの理解といった複数の強みが、十分に伝わらなくなってしまう。


 だからこそ、もっと頂点を高く設計する。タロットという一要素に閉じず、西洋美術という知的な土台の上に、タロットや探究やテクノロジーが立ち上がる構造へと、見せ方を変える必要があったのです。
 実際、その見え方の違いは、仕事の可能性を大きく変えていきました。国立西洋美術館を会場にした絵画を通じた探究イベントの継続開催、世界的ラグジュアリーブランドの顧客に向けたタロットリーディング。こうした実績が重なることで、タロットは単なる「占い」ではなく、深い教養と信頼の文脈を伴った体験へと変わっていきます。


 内田さん自身も、当初は「タロットか、西洋美術史か」どちらかを選ぶのだと思っていました。けれどPABLOSの中で何度も言葉を浴び、朝活で仲間の声に触れ、神田の話を繰り返し聞くうちに、「どちらか」ではなく「両方」でいいのだと分かっていきます。タロットの中に西洋美術史が入り、西洋美術史の中に内面探究が入る。その行き来そのものが、自分らしさだったのです。
■ 肩書きとは、多面性を社会に伝える「入口」
 ここで見えてくるのは、肩書きは平面的なラベルではなく、立体的に伝える「文脈設計」だということです。タロットだけでもない。西洋美術史だけでもない。ラグジュアリーブランドとの接点だけでもない。AIを使いこなす知性だけでもない。それらが折り重なって、初めて彼女という存在の意味が立ち上がります。


 「言葉ではなく、コンテキストと意味で人はコミュニケーションしている」


──対談で語られたこの言葉が、まさにそれを示していました。自分の中にある複数の顔を、どれか一つに無理やり絞らなくていい。大切なのは、どれを消すかではなく、どうつなげるかです。名前で立てる人は、肩書きを捨てた人ではなく、肩書きに飲まれず、自分の意味を取り戻した人なのだと思います。


 これは「ルーヴルの魔女」をやめた話ではありません。内田ユミさんが、内田ユミさんとして立ち上がっていく物語です。そして、そうした“熟成”をそっと後押しできる場でありたい──それが、私たちがPABLOSに込めた願いです。
■ 結び:AI時代、私たちは「何者」として生きるのか
 生きる意味は、過去の棚卸しだけでは見つかりません。PABLOSは、AIという翼を得て、未知のプロジェクトへ飛び込む人々を支援するデジタル図書館です。
AI時代、私たちは「何者」として生きるのか。その答えは、PABLOSの中にある、あなた自身の“探究”の先に待っています。ご興味のある方は、まずは読書会情報をお届けする公式LINEにご登録ください。

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