(C)Laziz Hamani
生まれ変わった時計界のアイコン
メゾンの代名詞であるルイ・ヴィトン独自の複雑機構の「スピン・タイム」。2009年に「ラ・ファブリク・デュ・タン」がルイ・ヴィトンのための初のムーブメントとしてアヴァンギャルドな時刻表示を開発して以来、その立体的でダイナミックな要素はルイ・ヴィトンのハイウォッチメイキング コレクションの一部となっています。独創的なジャンピングアワー表示は、「ラ・ファブリク・デュ・タン」の創業者であるミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニが空港や駅のフラップ表示から着想を得て考案されました。
この複雑機構がルイ・ヴィトンのウォッチメイキングのアイコニックな柱としての地位を確立した今、メゾンはまったく新しいウォッチコレクション「タンブール タイコ スピン・タイム」を発表します。すべてリミテッドエディションであり、複雑機構を次世代へと推し進めるために一から開発されたもの。「タンブール タイコ スピン・タイム」は「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」が本コレクションのために特別に開発した自社製ムーブメントのみで駆動する、複雑機構では初となるコレクションです。
(C)Piotr Stoklosa
原点回帰
「スピン・タイム」のコンセプトは、複雑ムーブメントのスペシャリストとして「ラ・ファブリク・デュ・タン」を創設したベテランのウォッチメーカーであるミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニの卓越した才能が2007年に生み出したもの。数十年にもわたりスイスの最も権威あるウォッチメーカーで経験を積んできた2人は、クラシカルなハイウォッチメイキングに精通していました。しかし、ミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニは、ウォッチメイキングに対する自分たちのビジョンを一層豊かなものにするために、革新と発明も目指していました。
2人は空港や駅で時刻表を掲示するフラップ表示から着想を得て、伝統的なジャンピングアワー機構のこれまでにない立体的な再解釈として「スピン・タイム」を考案。
奇しくもルイ・ヴィトンはちょうどその頃、ハイウォッチメイキングの常識を塗り替え、拡大する新しい複雑機構、すなわち革新的であると共に旅に密接に関連したものを探し求めていました。
ミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニは「スピン・タイム」を提案し、これがメゾンとの関係のはじまりとなりました。2011年に「ラ・ファブリク・デュ・タン」がルイ・ヴィトンへ統合されることで、そのつながりは頂点へ。これを機に、ジュネーヴでのルイ・ヴィトンのウォッチメイキングが動き出し、そのビジョンは2014年、メイランでのマニュファクチュール創設によって実現。今では、ダイアルやケース、複雑ムーブメントの製造、ならびにメティエダール(芸術的な手仕事)を包括的に手掛けています。
「『スピン・タイム』がなければ、このような形でハイウォッチメイキングへの参入という挑戦には乗り出さなかった」と語るのは、ルイ・ヴィトンのウォッチ部門ディレクター ジャン・アルノー。「そして結果的に私たちのウォッチメイキング創設のはじまりとなる『ラ・ファブリク・デュ・タン』を統合することもなかった」。
2009年に発表された 「タンブール スピン・タイム」はタイムピースのみならず、独創的な複雑機構のメーカーとしてのルイ・ヴィトンの地位を確立。以来、「スピン・タイム」は、ルイ・ヴィトンの幅広い素材と複雑機構のレパートリーを象徴する多様なタイムピースシリーズへと進化を遂げてきました。
(C)Laziz Hamani
新時代
「スピン・タイム」が誕生した決定的な瞬間から16年、ルイ・ヴィトンは「タンブール タイコ スピン・タイム」を発表します。
特許取得済みの立体的なジャンピングキューブ表示を引き続き中心に据えた「タンブール タイコ スピン・タイム」は、6つのリミテッドエディションモデルからなる、まったく新しいコレクションです。それぞれが複雑機構の究極の洗練形として一から考案されました。本コレクションは、同じ「タンブール タイコ」ケースを共有する39.5 mmと42.5 mmの2つのサイズで展開。39.5 mmモデルは控えめなソリッドケースバックを装備する一方、42.5 mmモデルは自社製ムーブメントが見えるスケルトンケースバックを装備しています
初代となる「タンブール タイコ スピン・タイム」の各モデルの統一感を際立たせるため、6つのバリエーションはすべて、18Kホワイトゴールド製のケースをまとい、控えめでありながらも力強く、一目で「タンブール タイコ スピン・タイム」と分かる、ドルフィングレーカラーのダイアルを付属。ライトグレーのフェースを表示するアワーを示すキューブを除き、キューブはすべて、同じドルフィングレーカラーで仕上げられています。ダイアルのほとんどの要素は同じ色合いとなっているものの、それぞれのディテールはサンバーストやホークスアイなど、さまざまな技法を用いて仕上げられており、その結果、光によって変化するニュアンスに富んだマルチトーンの外観に。巧みに使用される色と質感は、ジュエリーを散りばめた「スピン・タイム」モデルにおいて一層際立ち、グレーブルーのカラーパレットがホークスアイのダイアルにまで広がります。光沢感のある色と繊細な模様で高く評価されるグレーブルーのクオーツが、ルイ・ヴィトンのウォッチメイキングに採用されるのは初です。
(C)Piotr Stoklosa
「タンブール」の再構築
2023年に発売された「タンブール」の優美で無駄のないラインを受け継ぐ「タンブール タイコ」ケースは、オリジナルのストラップアタッチメントとはまったく異なる、彫刻の施された一体型ラグを備える新しいデザインとして、その存在感を放ちます。
2023年の「タンブール」によって確立されたデザイン言語を継承する「タンブール タイコ」は、オリジナルデザインの馴染みのあるミドルケースを採用しながらも、フォルムを進化させて一体型ラグを組入れ、現代的かつエレガント、そして一層流麗なフォルムを実現。実際、「タンブール タイコ」はインデックスや針、タイポグラフィ、さらには歴史にインスパイアされた「Fab.En Suisse」ラベルにいたるまで、2023年の「タンブール」のより洗練されたスタイリッシュな要素も取入れています。
画期的な太鼓型ケースのアウトラインはそのままに、エレガンスと人間工学の両面を追求し、改良と手直しが加えられています。よりスリムなプロファイルを備えるよう構想された「タンブール タイコ」は、ドーム型のケースバックへと続く断面に変曲点を組入れることで特別なケースデザインを実現。
日本の祭礼で使用される大型のドラムである「和太鼓」にちなんで名付けられたこの新しいケースは、エレガントでモダン、そして仕上げが非常に複雑です。実際、「タンブール タイコ」は、これまで「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」が製作した最も複雑なウォッチケースの1つであり、その製作にはこの上なく熟練した職人や技術者を必要とします。
(C)Piotr Stoklosa
「ラ・ファブリク・デュ・タン」が自社で培ってきたケース製造の技を披露することを目指した「タンブール タイコ」のケースは、鏡面仕上げとサテン仕上げの表面、そして浮き彫りと窪みのある要素が織りなす相互作用の傑作です。現行の「タンブール」のデザインコードを守りつつ、ベゼルにはサンドブラスト加工を施した溝内にポリッシュ仕上げのレリーフ文字で「LOUIS VUITTON」と綴られ、ケースの側面にはサテン艶消し加工が施されています。
「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」のケースメーカーたちは、非常に複雑なラグを実現するという難題に立ち向かいました。それぞれのラグは2つの要素から構成されていますが、両方とも人間の髪の毛の太さに等しい0.1 mmの許容差で機械加工され、完璧に組み合わせてからケースの中央にネジで固定されます。
窪みのある彫刻的なラグの形状は、完璧に仕上げるのが特に困難なものでした。外側の表面には鏡面仕上げ、凹んだ窪みにはきめ細かい艶消し加工を施す必要があったのです。
この難題を乗り越えるには、伝統的かつ現代的な卓越したノウハウが必要でした。鏡面仕上げの表面は、ダイヤモンドペーストを塗布したブナ材の研磨ホイールを用いて手作業で磨き上げられ、一方、窪みはレーザーで艶消しが施されます。この同じ技法はベゼルの凹んだ溝に艶消し加工する際にも採用され、ポリッシュ仕上げのレリーフ文字が傷付けられることはありません。
画期的なムーブメントファミリー
重要なことに、「タンブール タイコ スピン・タイム」コレクションのすべてのモデルは、本コレクションのために一から開発された自社製ムーブメントを装備しています。構想から製造まで全面的に「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」で行われたこの新しい「スピン・タイム」ムーブメントは、スイスのハイウォッチメイキングの伝統的な中心地であるジュネーヴでの垂直統合型ウォッチマニュファクチュールとしてのルイ・ヴィトンの地位を確かなものにしています。
さらにこのムーブメントファミリーは、2023年の「タンブール」に搭載されているLFT023ムーブメントで導入された独特の外観上のスタイルを踏襲。これらのムーブメントはすべて、繰り返されるモチーフの形で様式化されたLVで精緻に装飾されたソリッドゴールド製のローターをはじめ、LFT023で初めて確立された新しい美的コードを共有しています。このローターは、マイクロサンドブラスト加工の施されたブリッジやポリッシュ仕上げのエッジ、面取りと共に、どこまでも現代的な外観をもたらす一方、このウォッチの全体的なデザイン言語との明確なつながりを保っています。ペルラージュ仕上げが施された地板は伝統的なムーブメント装飾に敬意を表し、従来型のマゼンタカラーのムーブメント用人工ルビーではなく、無色透明の宝石を使用することで、このムーブメントのアヴァンギャルドでモダンな外観を際立たせます。
4つのムーブメントはそれぞれ独特のものですが、自動巻きや45時間のパワーリザーブ、安定した4 Hzの振動数で時を刻むテンプを備えた洗練されたムーブメント構造など、いくつかの技術的要素を共有しています。また、構造のディテールへのこだわりを強調するため、それぞれのムーブメントには、繰り返し刻印された「V」のモチーフが縁取る18Kピンクゴールド製のローターを装備。
(C)Philippe Lacombe
新しいムーブメント群は、持ち前の技術的洗練性にとどまらず、「スピン・タイム」機構の視覚的な詩情をさらに深めるために考案されました。そのため、キューブ自体も手直しされました。これまでの世代の「スピン・タイム」は、まっすぐな縁を持つキューブを使用していましたが、「タンブール タイコ スピン・タイム」は、緩やかにカーブした4つの面からなるキューブを採用し、それぞれのキューブがクッション状の形状となっています。
拡大しない限りほとんど分からない、「スピン・タイム」キューブのこのわずかな仕様変更は、表面から放たれる光の戯れを際立たせ、各キューブの上部に取付けられた鏡面仕上げを施した釘がアクセントを添えます。キューブのこの手直しは、「タンブール タイコ スピン・タイム」の開発に欠かせなかったディテールへの最大限のこだわりを反映するものです。
新しい「スピン・タイム」は、スタイルが一新されただけでなく、オリジナルの「スピン・タイム」のコンセプトに改良を加え、新たに取得した特許を基に再設計されたメカニズムを搭載。アップグレードされた複雑機構についても、作動原理はこれまでと同じ。すなわち、2つのキューブが同時に回転して、前の時表示が消え、現在の時表示が姿を現します。
これを実現するため、「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の技術者たちは、各キューブのベースに配置される、特許取得のマルタ十字歯車を考案。内側の縁に歯を持つというユニークなマルタ十字歯車は、便利な時刻設定も可能にするシステムの一部でもあります。ジャンピングアワー表示は、ムーブメントにダメージをもたらすことなく前後方向に調整可能。これまでは前に進める設定しかできなかったジャンピングアワー複雑機構にとって特筆すべき成果です。
(C)Piotr Stoklosa
「タンブール タイコ スピン・タイム」
この複雑機構を最もピュアに表現したのが、LFT ST13.01ムーブメントを搭載した「タンブール タイコ スピン・タイム」の39.5 mmモデル。このモデルでは、LFT ST13.01にジャンピングアワーのキューブを収めたダイアルを組合せ、すっきりとした視認性の高い表示を実現しています。
コンパクトで着け心地のよい39.5 mmモデルは、コレクションの中で最も万能なモデルとして構想されています。100 m防水の18Kホワイトゴールド製ケースを装備したこのウォッチは、完全防水の一体型ラバーストラップを装着し、スポーティでシックなスタイルを演出。ジュエリーをあしらったバージョンは、ラグとダイアルにホークスアイのダイアルセンターにマッチする合計4.3カラットのバゲットカットダイヤモンドがセットされています。
(C)Piotr Stoklosa
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー」
42.5 mmという、より大きめなフォーマットの「タンブール タイコ スピン・タイム エアー」はムーブメントが中央に吊られ、それぞれのキューブがケース内で浮いているように見える「フローティング」表示に。
このメカニズムはタイムピースの中心に据えられており、キューブがムーブメントとケースの中間を衛星のように浮遊することを可能にします。内部ではLFT ST12.01も鼓動し、浮かび上がるような表示を支える長めのシャフトにキューブが取付けられています
ジュエリーをあしらったモデルは、1,000石以上のダイヤモンドがラグとキューブ、ダイアルセンター、ホークスアイのチャプターリングに手作業によるスノーセッティングで配されています。
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー アンティポード」
革新的なワールドタイム表示の新機軸をなす「タンブール タイコ スピン・タイム エアー アンティポード」は、ユニークなジャンピングアワー機構と世界初のトラベルタイム複雑機構を組合せたもの。「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」で全面的に開発された「アンティポード」複雑機構は、世界の24のタイムゾーンの時刻を昼夜表示と同時に示し、読みやすく直感的な方法で提示します。
ウォッチメイキング史上例を見ない複雑機構である「アンティポード」は、世界中の時刻を読み取るユニークな方法を提供。従来型の針が分を指す一方、アワーは、ルイ・ヴィトンのレザーグッズのステッチから着想を得たイエローの矢じり型ポインターで示されます。ポインターは、「アンティポード」ワールドタイム複雑機構をグラフィックに象徴する世界地図が描かれた回転ディスクに取付けられています。
ローカルタイムは分針とアワーを示すイエローのポインターで示され、ワールドタイムは世界地図ディスクを取囲む「スピン・タイム」機構の12のキューブによって表示されます。
各キューブに隣接するアワー数字は、それぞれのキューブに記された2つの都市の時間を示します。各キューブへ2都市を記載するというこの独創的な工夫が、「アンティポード」を伝統的なワールドタイム機構とは一線を画すものにしています。特許を取得したこの複雑機構は、技術的な創意工夫により、複雑さとは裏腹にシンプルで実用的なインターフェースを通じて、複数のタイムゾーンを一目で簡単に把握可能に。それぞれの都市の背景色は昼夜の区別を示します。
各キューブには2つの都市の名前が記載されているため、12個のキューブを合わせて、全世界の24のタイムゾーンを表示。各キューブに記載されている都市のペアは、ちょうど12タイムゾーン分離れています。例えばロサンゼルスとドバイの時差は12時間。その結果、両都市は同じキューブに記載され、ロサンゼルスの深夜0時がドバイの正午になります。ウォッチメイキングで類を見ないこの真反対のタイムゾーンの表示が、「アンティポード」というモデル名の由来です。
(C)Philippe Lacombe
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー トゥールビヨン」
「タンブール タイコ スピン・タイム エアー トゥールビヨン」は、2大複雑機構の比類ない組合せです。ルイ・ヴィトンのユニークなウォッチメイキングのDNAを完璧に表現したこのモデルは、「スピン・タイム」のフローティング表示を、極めて伝統的なクロノメーター機構のフライング トゥールビヨンと融合させています。
両方の複雑機構の組合せを実現することは、「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」のムーブメント開発アトリエにとって大いなるチャレンジでした。ケースの限られた中心の容積内という厳しい制約下で、「タンブール タイコ スピン・タイム エアー」と「エアー トゥールビヨン」の両方の機構を収める必要があったのです。キューブが周辺容積の大半を占めてしまうため、自動巻きのベースムーブメントとフライング トゥールビヨンの両方を中央に配置するためには、巧みなエンジニアリングが必要でした。
ダイアルの中央では、フライング トゥールビヨンが毎分1回転の魅惑的なダンスを披露。スティール製で、すべての表面が全面的に手作業で仕上げられたトゥールビヨンケージは、モノグラム・フラワーの形をしています。トゥールビヨンの組み立てにおける芸術的な装飾を際立たせるため、トゥールビヨンのスティール製の下部プレートは高度に磨き上げられ、トゥールビヨン部品の裏側を見せる鏡のようになっています。
フライング トゥールビヨンをLFT ST05.01ムーブメントに組入れるには、ベースムーブメントの大幅な設計変更が求められました。トゥールビヨンをダイアル上に配置するために主輪列の配置を変更するだけでなく、分針もトゥールビヨンの下と周りに配置する必要がありました。
(C)Laziz Hamani
新たな章
「スピン・タイム」のストーリーにまったく新しい章となる「タンブール タイコ」は、ルイ・ヴィトンと「ラ・ファブリク・デュ・タン」にとっての重要な節目を表しています。本ウォッチコレクションは、ルイ・ヴィトンの時計製造部門の一翼を担っている「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の拡張と統合を物語っています。「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」のこのような成長により、「タンブール タイコ スピン・タイム」を支える自社製ムーブメントファミリーの実現を可能にしたのです。新作コレクションで具現化された時計製造のノウハウは、ルイ・ヴィトンのウォッチメイキングの素晴らしい未来を予感させます。
詳細は添付PDF資料をご覧ください。
