共同研究の成果
懐かしい音楽を聴くことは、これまで記憶を呼び覚まし、幸福感(well-being)の向上に寄与する可能性が報告されており、高齢者ケアの援助としての応用が考えられてきました。一方で、懐かしい音楽は個人によって異なり、実際に医療や介護の現場で用いるには高いハードルがあります。
本研究により、個々の「懐かしさ」を感じやすい音楽を自動的に選定する技術が開発されました。この技術はうたメモリーに用いられており、音楽に対する懐かしさの評価、音楽の特徴、そして音楽を聞いている際の脳波データをもとに、各個人に合わせた懐かしい曲を選び出します。
実験では、若者と高齢者を対象に、それぞれの懐かしいに似ている曲から選曲されるプレイリストと、似ていない曲から選曲されるプレイリストを聞き、音楽聴取時の「懐かしさ」「幸福度」「記憶の鮮明さ」を評価しました。その結果、似ている曲から選曲されるプレイリストを聞いたグループでは、似ていない曲から選曲されるプレイリストを聞いたグループと比較して、懐かしさ、幸福度、記憶の鮮明度が有意に高いことが確認されました。この研究により、世代を問わず、懐かしい曲を聞くことが人々に懐かしさと幸福感をもたらし、記憶を鮮明に呼び覚ます効果があることが明らかになりました。本結果は、国際学会「The Neurosciences and Music」にて発表しています。
- 榊原佑奈, 島田早織, 楠富智太, 惠谷隆英, 今村泰彦, 藤井進也, 茨木拓也(2023). 脳波と楽曲特徴により懐かしさ喚起を最大化する 個人最適化自動選曲アルゴリズムが 自伝的記憶の再生に及ぼす効果. 認知症予防学会. 2023年9月(査読有)
- Sakakibara, Y., Ibaraki, T., Kusutomi, T., Etani, T., Shimada, S., Naruse, Y., Imamura, Y., Fujii, S. Examining the effects of a closed-loop nostalgia brain-music interface for well-being and memory retrieval in both young and elderly people, The Neurosciences and Music VIII, Helsinki, Finland, 2024/6/13-16.
- Sakakibara, Y., Kusutomi, T., Kondoh, S., Etani, T., Shimada, S., Imamura, Y., ... & Ibaraki, T. (2024). A Nostalgia Brain-Music Interface for Enhancing Nostalgia, Well-Being, and Memory Vividness in Young and Elderly Individuals. bioRxiv, 2024-10.